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【鳥の眼で観る欧州CL】シティのアプローチ変更は妥当。バイエルンの高精度プレスと「足りなかったもの」とは?

こんにちは!
FL-UXマーケティングチームです。

さて、今年度のCLも、6月の決勝に向けて、残すところ数試合となってきました。
今回は、4月20日に行われたシティvsバイエルンの準々決勝・2ndレグのマッチレビューをとんとんさんに早速書いていただきました!
(1stレグのマッチレビューはこちらからぜひチェックしてみてください。)

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マンチェスター・シティvsバイエルン・ミュンヘン。1stレグを3-0とシティの圧倒的リードで迎えた2戦目は、1-1の引き分けで終わった。

この試合はバイエルン・ミュンヘンがチャンスを作るシーンが多く、逆転も十分にあり得る展開となった。特に、1stレグからアプローチを変えたシティに対するバイエルンのプレッシングは機能性にあふれていた。
そんな中で勝負を決したハーランドの先制ゴールは、両チームが積み重ねてきたものが如実に表れたものとなった。
今回はそれらにフォーカスして振り返っていく。

■マンチェスター・シティの変化とバイエルンの対策

マンチェスター・シティの組み立てには1stレグから変化があった。1stレグの記事にて紹介した、3バックからディアスが左右いずれかに寄りCHの片方が敵のCFの脇に降りる新型3-2-5をやめ、CHを落とさない普通の3-2-5で組み立てを行った。
1stレグの記事でも述べた通りアプローチの変更は至極妥当であり、ペップの修正力が窺えるものであった。
しかし、トゥヘル・バイエルンはこの組み立てすらも凌駕する守備を見せた。
彼らの守備システムは変わらず4-2-3-1。前線の4枚がシティの組み立てを担う5枚に対して巧みに立ち回った。

CFチュポは中央のパスコースを空けないよう位置を取り、味方の守備のセットが済むとシティDF陣の横パスをトリガーに前進。隣り合うDFを切るようにプレスをかける。ここで鍵となるのがトップ下のムシアラだ。彼はボールサイドのCHにつく。それも、逆CHへのパスを躊躇させるよう牽制をかけられる位置をとりながらだ。つまり1人で2人を相手にしている状態に近い。シティ相手に守備で魅せる、恐ろしい20歳だ。
当然、それは物理的に難しいシチュエーションも生じる。その場合、バイエルンの逆SHがシティの逆CHにアタックをかけられる位置まで絞る。こうすることでシティのHVにパスコースを与えず、ビルドアップを機能不全に陥れることに成功した。
デブルイネがサイドに流れて起点を作るケースがしばしば見られたが、バイエルンの守備ラインが高かったためデブルイネの位置は低くなり、デブルイネ→ハーランドの一撃必殺ホットラインを開通させることができなかった。
サイドに流れたデブルイネ起点の攻撃はショートパスを駆使すれば状況を打破できる可能性もあったが、特別器用ではないCHストーンズとポストプレーでのレイオフパスに難のあるCFハーランドの起用がマイナスに働き、機能させられなかった。

シティの攻撃は右HVアカンジを起点とすることで前進が見られた。アカンジはやや広がった位置から内側にボールをコントロールする。これによりバイエルンの左SHサネとムシアラの間にパスを通す角度を生み出し、前線にボールを供給していく巧みなプレーを見せた。

■バイエルンのビルドアップ

対してバイエルンのビルドアップは確実に機能していた。シティの守備は4-2-2-2でSHがバイエルンSBを切るようにCBへとアプローチをかける。これに対してウパメカノが果敢にドリブルで持ち運び、ハーフスペースの味方へとパスを送り続けた。キミッヒを警戒するギュンドアンの背後を突く形だ。この楔でグリーリッシュを押し込むと、パヴァールのオーバーラップも機能するようになった。ただでさえスピードのミスマッチが起きている左SBアケvs右SHコマンにおいて、上述のハーフスペースへの楔でさらにアケが後手に回ることになった。
グリーリッシュが前進して早めにウパメカノを潰す準備をすれば、グリーリッシュとアケの間のスペースにゾマーから正確なロングボールがパヴァールへと送り込まれる。
攻守においてバイエルンが良い形でゲームを進め、ビッグチャンスも複数生まれた。前半の数あるチャンスでひとつでもゴールが生まれていれば、また違う結果になった可能性も十分に考えられる展開であった。

■なぜライプツィヒ戦のように外切りプレスがはまらなかったのか?

ライプツィヒ戦記事

ライプツィヒ戦では面白いようにはまったWGによる外切りプレスであったが、バイエルン戦では逆に穴となった。ではなぜ、ここまで違いが出たのであろうか。
WGがCBに対して、SBを切るようにプレスをかける。同じ外切りプレスと言っても、シチュエーションが大きく異なっていた。
まずライン設定だ。ライプツィヒ戦は敵陣ペナルティエリア内でもプレスに出ていったが、バイエルン戦はセンターサークル先端付近まで引いてブロックを築いた。これにより何が起きるかというと、DFライン裏へのロングボールの選択肢が発生する。この選択肢が生まれると、守備側は迂闊に前進できない。
この変化によりアケの守備が難しくなった。ただでさえコマンのスピードには手を焼く上に、裏のスペースの憂いが大きくなったからだ。裏を警戒することでハーフスペースに降りるコマンを潰すことができなくなった。
ライプツィヒ戦は、CBからの楔のエリア(ハーフスペース)をCHと SB(ロドリとストーンズ)でケアしていた。しかしこの試合は、アケが迂闊に前進できず後手に回り、CHギュンドアンはロドリと違って後方に注意を向けなかったため簡単に楔を打ち込まれていった。
ゾマー、ウパメカノ、コマンといった個の能力も見逃すことはできない。

■後半戦の攻防

後半戦のシティは引いてブロックを築いた。シティはハイプレスに比べてブロック守備の精度が低い。CBを4枚起用しているとはいえ、中盤より前の守備が機能しないためゴール前に運ばれるケースは多い。
そのため、前半に引き続いてバイエルンのチャンスもいくつか生まれていった。そんな中で喫した失点は、シティとの差が如実に出た場面であった。リスク管理の部分だ。

シティはリスク管理の部分が以前と比べて大きく成長し、カウンターによる失点が激減した。対してバイエルンは失点時、後方に残るのは2CBのみに近い状態であった。これはただでさえ少ない人数であるのに、ハーランド&デブルイネを相手にするのにこれでは心もとない。
ウパメカノのスリップが決定打ではあったが、個人能力以上にリスク管理の面で組織として完全に上回られたシーンとなってしまった。

■おわりに

2ndレグのバイエルンは決定的なチャンスも多く、逆転してもおかしくない内容であった。一撃で仕留めたハーランドとは対照的で、決定力不足が響く形となった。
この試合4-2-3-1守備を大いに機能させたトゥヘルであったが、結局この4-2-3-1はナーゲルスマンの頃から仕込まれていたものだ。やはりこの時期での監督交代劇には疑問が残る。
リスク管理の部分は両チームが積み上げてきた小さいようで非常に大きな差となって表れた。
シティもバイエルンも見せ場を作った、アツい一戦となった。

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とんとんさん、ありがとうございました!

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