ナーゲルスマンの新たな船出。新生バイエルン・ミュンヘン戦術分析〜前編〜

ナーゲルスマンの新たな船出。新生バイエルン・ミュンヘン戦術分析〜前編〜

こんにちは!

9月も明日で終わりですね。今年も残すところあと3ヶ月。皆さまいかがお過ごしでしょうか。

今日は、ご著書『TACTICS VIEW~鳥の眼で観る一流サッカーチームの戦術事例~』もご好評のとんとんさんに、新生バイエルン・ミュンヘンの戦術分析についてご寄稿いただきました。前編・後編に分けて公開いたしますので、ぜひ続けてご覧ください!

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 RBライプツィヒからユリアン・ナーゲルスマンを新指揮官に迎えたバイエルン・ミュンヘン。CLを制し「最強」とも謳われたフリック政権は終わりを迎えたが、新たな指揮官の実力にも疑う余地はない。ナーゲルスマンが就任して迎えた数試合において見えてきた課題とスタイルを、対戦相手となったボルシアMGやドルトムントのサッカーにも触れつつ紐解いていく。

■基本布陣

基本布陣


 バイエルン・ミュンヘンは4-2-3-1のシステムを採用。右SBにはビルドアップ時に偽SBとして気の利いたポジションをとれる21歳のスタニシッチが起用されている。アラバとボアテングの抜けたCBコンビはズーレと新加入のウパメカノが入る。左SBは攻撃面において異次元の領域へと進化しつつあるアルフォンソ・デイビスが不動の地位を築いている。
 CHはビルドアップの核となるキミッヒと、攻撃に厚みを加えるランニングが得意のゴレツカがコンビを組む。
 SHには突破力のあるサネと、守備能力も兼ね備えたグナブリー、トップ下にスペースの活用を得意とし潤滑油にもゴールゲッターにもなれるミュラーが入り2列目を形成する。トップにはゴールを量産する不動のストライカー、レヴァンドフスキが君臨する。
 試合によっては3バックも採用しており、併用していく可能性もある。

■守備戦術
バイエルンのセット守備は、バックパスに応じてラインを押し上げ、前線からパスコースに制限をかけるプレッシングで敵を追い詰め、高い位置で引っかかればショートカウンターへ持ち込み、ロングボールを蹴らせた場合はCBを中心に跳ね返してセット攻撃に移行する。

守備

 敵のバックパスに合わせてラインを上げていくバイエルン。バックパスが左右どちらに送られるかによって守り方が変わっていく。守備範囲の広い左SHグナブリーはCBへとプレッシャーをかけることができる。そのためレヴァンドフスキとミュラーは中央のCHを封鎖しながら左CBへとプレッシャーをかけ、バイエルンの左サイドへと誘導していく。グナブリーのプレッシャーを嫌うCBが無難にSBへと回すと、そこには左SBのデイビスが大きく前進してプレスをかける。空いたサイドのスペースはCBのズーレが大胆にスライドし、ウパメカノが中央のカバーに入る。
 このように左から攻撃を受ける際のバイエルンは大胆に前進してプレッシングをかけていく。逆に右サイドから攻撃を受ける場合、右SHのサネがやや引き気味に構えることでスペースを与えないことを優先した守備を行う。これによりバックパスを強い、左サイドに誘導していくのだ。

■ビルドアップ
 ボルシア戦のビルドアップでポイントとなったのがスタニシッチのポジショニングだ。彼がビルドアップの際に中央に絞ることで2-3-5のような布陣となる。この時の前線5枚の最後のピースはCHのゴレツカかSBのデイビスだ。状況に応じてどちらかが高い位置に進出していく。
 絞ったスタニシッチによる恩恵のひとつは、敵SHを中央に引き寄せることで右SHのサネへのパスコースが空くことにある。このパスで敵の1列目を突破し、ドリブルの得意なサネが仕掛けることが可能となるのだ。しかしこの日のサネは中途半端に絞ってしまい、スタニシッチによる恩恵が薄れてしまった。またサネは、低い位置で受けることでミュラーをサイドに走らせるといった他の選手を動かす連動も得意としておらず、機能不全に陥っていた。
 逆に、連動を得意とするミュラーがスタニシッチとサネの間に降りることで敵の守備にずれを生むプレーを見せるシーンが散見された。しかしウパメカノの球離れが良すぎて逆サイドへ展開され、ミュラーが苛立つシーンも発生。ビルドアップの際にバックステップをせず後ろを向いてしまうズーレの悪癖も未だ解消されず、右利きの彼が左CBに入ったことで中央に効果的な楔を打ち込むシーンも見られなかった。ビルドアップの完成度は発展途上である。

逆サイド

 そんな中でも現れたもうひとつのスタニシッチ起用の恩恵が、逆サイドへの展開だ。スタニシッチは状況に応じてサイドでボールを受けることもある。この外と中の判断が彼の強みでもある。サイドに味方がいれば内側で起点をつくる。ウパメカノがフリーでボールを持ち、前線への楔が入りそうであればそこへのパスコースを空けかつ次の展開に備えるために外に開く。外か中いずれで受けるにしても中央のCHとの関係性を強く意識したプレーが見られる。
 ボルシアの守備は4-2-2-2でセットされるが、彼らの特徴としてボールが一方のサイドに渡ると2トップが縦関係を作ってボールサイドに移り、それぞれCBとCHを見るような位置を取り攻撃方向を片側に限定する。ここでスタニシッチは中央を経由したショートパスで逆サイドへ展開し、サイドを限定して守るボルシアの1列目の守備を剥がした状態を作り出していた。この時タッチラインギリギリではなくやや内寄りに位置することで敵にひっかからずに縦パスを通すための角度を確保していた。敵SHが縦を切りにくれば内側に切り返して中央にパスを繋いでいく。バイエルンのビルドアップにおいて特筆すべき点であり、非常に優れた配球力を示した。

■ファイナルサードのフェーズ

クロス

 バイエルンのファイナルサードでの脅威のひとつはクロスボールにある。バイエルンはサイドからボールを前進させていく。ボルシアの守り方は特に顕著であったが、SBの空けたサイドのスペースやチャンネルのケアのためにCBが積極的にカバーリングに出ていく傾向が強い。
 これはミュラーが流れてサイドから仕掛けるバイエルンの攻撃がそうさせているという面もある。グナブリーやムシアラ、サネといった突破力のある選手も多くいるバイエルンだが、彼らのドリブル「突破」を活かすというよりも、プレスを外してパスコースを創出し、ハーフスペースと大外に配した選手を使ってワンツー等を利用して攻め込むという、パスの前の「外すドリブル」が重宝されている。特にこれを得意としているのがSBのデイビスで、内側にかわしてそのまま中に侵入できる彼の存在は非常に大きなものとなっている。
 サイドとハーフスペースに選手を配したバイエルンのサイド攻撃は非常に強力で、ボルシアゴール前には逆サイドのCBとSBの2枚しかいないという状態が多く発生する。バイエルンは前線に5枚の選手を配するため、SBは多くて3枚を相手にするような状況だ。距離感の良い中央の選手を経由して逆サイドに展開することでクロス精度に左右されない、より確実性高くフィニッシュへ持ち込む術も持ち合わせる。
 クロスボールを送る際は上述のようにゴール前に数的優位を生み出し、かつレヴァンドフスキやミュラーといった点取り屋、そして迫力ある飛び出しを見せるゴレツカが顔を出すことで得点機を作り出していく。

■DF陣の連携に課題
 圧倒的な強さを見せるバイエルンだが、守備時の課題は山積している。 

 まず攻撃から守備への切り替えの部分である。ゴレツカが前線に飛び出していく分中盤でセカンドボールを拾う役目をキミッヒが一手に担うケースが多くなっているが、彼はその切り替えに長けた選手ではないためカウンターを受けやすい環境となっている。

 この環境下、DFラインの選手間によるカバーリングの意識が非常に希薄なものとなっている。周囲を見てラインを統率できる選手がおらず、背後やチャンネルは大きく空いてしまうことが多い。ズーレは切り替えが非常に遅く、カバーリングが利かない。デイビスの背後は泣き所となっており、アラバの穴が大きく感じられる部分だ。ウパメカノはボルシアのテュラムに1vs1で圧倒され続けた。セカンドボールは拾われ、背後への抜け出しも容易く許す状態であったが周囲のカバーが利かない。

 このDFラインの選手間の連携がとれるようになることがバイエルンの最大の課題であり、最も伸び代を持つ部分であると言えるだろう。

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いかがでしたでしょうか。

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