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【サッカーアナリスト杉崎健さん連載 vol.2】プロの現場の選手分析と選手たちへの伝え方

こんばんは!

本日は、毎月第4月曜日更新、プロサッカーアナリスト杉崎健さんによる連載の第2弾をお送りします。(第1弾はこちらから)

今回は、実際にプロの現場で実践されている分析、その中でも選手分析についてまとめていただきました。個々人のプレーの癖など、より細かいところまでを分析することが必要とされる選手分析について、その方法や選手たちへの共有の仕方についてもご紹介いただいています。プロの分析について知りたい方にはもちろん、アナリストを目指されている方ににとっても貴重な情報になると思います。

(ここから杉崎さんの記事です。)=================================
当ページへのアクセスありがとうございます。定期的に投稿させていただいているサッカーアナリストの杉崎です。

アナリストに関わる事項やFL-UXをはじめとする映像分析の事項等について、様々な角度からお届けしております。よろしくお願いします。

前回は私自身のキャリアについて少しだけお伝えしましたが、今回は私が手掛けているパーソナルアナリストの仕事ともリンクするのですが、選手分析についてお話しようと思います。

分析には様々な見方が存在しますが、それを分けるのは対象者です。誰を分析するのか、それともチームを分析するのかで表現が変わりますし、見方も変わります。単純なことであり当たり前のことですが、FL-UXでは映像内にテキストやエフェクトを挿入できるのですが、同じ映像でも違うことが言えるのです。

図1は赤のチームのサイドバックの立ち位置を話しています。つまり、対象者はチームです。赤のチームの攻撃としてサイドバックはどこに立つ傾向にあるのか、それに対して我々(例えば青のチーム)はどう対処すべきかという議論に発展できます。

そうなると、この赤の選手が誰なのかは一旦置いておいて、チーム戦術としてどうなのかに焦点が当てられます。これがいわゆるチーム分析です。チーム作りをする上で、選手が変わるたびに戦術を変えることは難しく、ある程度、監督の意向として各ポジションにおける決まりごとなどを定めます。ガチガチに固めることはあまりないと思いますが、こういった立ち位置などはチームとして落とし込まれることが多いので、分析する際にも「傾向」を紐解くのです。

ただもちろん、それが誰かということを無視してはいけません。サッカーは人が行うスポーツであり、ポジションでコマが動いているわけではないですからね。その人の特徴も踏まえるべきですが、チーム分析においてはまずポジションが優先的に見られるということです。

一方で図2に関しては、その選手の話に及びます。この後、実際には右足で前に持ち出す際にボールが浮いてしまい、相手に対応されてスローインになるのですが、トラップやパスの癖などを紐解くのが選手分析です。

この1プレーごとの癖や特徴を全部言っていくと、チーム分析としては成り立たなくなるくらい細かすぎてしまいます。1試合のプレー数はおおよそ数千にまで至るので、その細かさが伝わると思います。

ただ選手分析となると、その選手の1試合のプレー数は多くて100前後。ポジションによっては数十に収まるので、すべてを分析して表現しても細かすぎることはないです。それでも全部を映像化することはないかもしれません。その中から、特徴的なものをまとめたり、対策を練ったりするのが「現場の選手分析」です。

今、パーソナルアナリストとしてJリーガーのサポートをしているのですが、まさにこの部分です。どうやって選手を分析するかというと、ものすごく細かく見ます。この例のようにトラップのストロングやウイークを見ることもしますし、体の使い方の癖まで見ることもします。

止める、蹴るにおいても見るべき点は数多く存在します。

・足のどこを使うか
・どこに置くか
・姿勢は前傾か後傾か
・体幹はブレないか
・逆を取るか流すか
・蹴った際の軸足はどこを向いているか
・足のどこで触ることが多いか
・手は使うか

羅列できないくらいまだまだ存在します。

1つの映像でも、言えることが多数あるのです。これらをどう見るかなどについては、私が運営するオンラインサロンでも展開しているので、ご興味ある方はご参加ください。

プロの現場において選手分析はどうしているのかについてもお話したいと思います。

まず大枠で言うと、毎節、対戦相手の選手の特徴を捉えた映像集などを作ることが多いです。それらを、FL-UXのようなサービス等を使って選手らと共有することをします。こういったサービスがなかった数年前までは、アナリストらが作成した映像をDVDに焼いて渡したり、パソコンを持っていって直接見せたりといったアナログなこともしていました。

今となっては時代遅れ感がありますし、クラウドサービスやデジタルを使いこなせないとアナリストとしても不十分でしょう。

相手の特徴を捉えた映像集といっても、ただ各シーンをくっつければいいわけではなく、1つ1つのプレーにおいてどんな特徴や癖があるのか、それは自分(対峙する実際の選手)にとって有効なのかも考えながら映像を編集して分かりやすくしないといけません。

例えば上記の図の相手のサイドバックに対して、このトラップの仕方を知ったとしても、そもそもプレススピードが早くない青チームのサイドハーフだった場合、間に合わずに次のプレーをされてしまうでしょう。もしそうなら、トラップの仕方の前にどれだけ詰めておいた方が良いのかの視点で映像を作った方が良いですね。逆にそれが早い選手ならば、止め方を記したこの書き方で伝わり、事前準備もできるでしょう。

こういった選手目線で作ることで、見る側が整理しやすくなります。そしてこれらが出来上がった時、クラウドサービスを使って共有します。

FL-UXでは1つの映像やシーンにチャット機能がついているので、選手ともクラウドサービス上でコミュニケーションが取れます。

図3のように映像を確認しつつ、離れているところにお互いがいてもコメントを残しながらやり取りが可能です。もっと言えば、これらのやり取りを当該選手以外の選手も確認することが出来るので、一気に共通認識を深めることも容易です。

1人の選手に対して対峙する相手の映像を見せるだけであれば不要な話ですが、実際にはこのケースだとしても青のサイドバックの選手にも見せた方が良い相手ですし、控え選手にも伝えた方がいいですからね。複数人に見せることを想定しても、こういった機能は有効です。

こうした1人1人の映像を、毎節、出場するであろう人数分を用意します。Jリーグであれば15〜20人くらいですね。それをすべてクラウド上にアップしておくことで、いつでもどこでもチェックできるようにしておくと。プロの現場だとしても、常に選手と同じ空間にいるわけではないので、アクセスの容易さは重要です。

ここまでは相手の映像に関する選手分析でしたが、もちろん自チームの選手分析も行います。その試合でのパフォーマンスを分析し、1つ1つのプレーにおいて様々な選択肢があった中で、最良の手は何だったのかや、どこまで視野が広がっていて見えていたのかなど。選手と直接議論しながら改善していくことで成長を手助けするのがアナリストの役割でもあります。全員と膝を突き合わせて出来るほど時間も場所もないので、ここでもクラウド上で、あるいはオンライン上で出来る今のIT技術を使わない手はありません。

ただ大事なのは、その選手に寄り添いながらも違った視点を提供できるかです。選手分析において一番重要かもしれません。批判するだけとか、肯定するだけでは意味がありませんから、選手に納得してもらえるような指摘をしていく、基準値を上げていく作業が必要になってきます。

映像で振り返ることがメインとなりつつも、こうした指摘や基準値を上げる作業は、客観的なデータも有効です。FL-UXではタグ付けしたものを集計できる機能があるので、その選手の個別データを取ることも出来ますし、そこから見えることもあるでしょう。

例えば、この試合で何回ボールを失ったのかは、プロ選手であっても正確に覚えていないことがあります。100本以上パスを出していて20回失敗したとしたら、その20を鮮明に全部説明出来る選手はなかなかいないということです。また、この数字が試合ごとに増えているのか減っているのかも把握し切れないでしょう。そうした客観的事実であるデータで現状把握することで、自分の現在地を知ることができるのはデータの良い点です。

映像やデータをベースにしながら細かい視点で1プレーごとに詳細に分析していき、選手の成長や対策のサポートをする。これが選手分析の手法であり目的でもあります。この細かな手法等もオンラインサロンで展開しているので、ぜひ覗いてみてください。

今回は選手分析についてお伝えしました。また次回、よろしくお願いします。

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杉崎さん、ありがとうございました!

来月も第4週の更新を予定しております。お楽しみに!

なお、杉崎さんはご自身でオンラインサロンも運営されていらっしゃいます。ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。


また、杉崎さんに記事の中でご紹介いただいている映像分析ツールFL-UXは、スマホやビデオカメラで撮った映像をアップロードするだけで、手軽にプレー分析を始めることができるツールです。(PC、iPad、スマートフォンでご利用いただけます。)
ご興味を持っていただいた方はぜひ、こちらのサイトから詳細をご確認ください。30日間の無料トライアル(自動課金なし)もお試しいただけますので、年末年始のおうち時間を使ってぜひプレー分析を始めていただけたらと思います。

それではまた!


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