
【東京大学ア式蹴球部 連載 vol.1】東大テクニカルが行う分析
こんばんは!
今日から、FL-UXのユーザーである東京大学ア式蹴球部の皆さんによる定期連載をスタートしました!
東大ア式蹴球部の皆さんは、17名のテクニカルスタッフを中心に日頃の練習や試合においてFL-UXを活用しながら戦術分析を行なっています。
このコンテンツを通して、「プレー分析に興味がある」といった方はもちろん、「自分の部でも分析班を立ち上げたいが、何から始めたら良いかわからない。」といったような課題のお持ちの方にも参考になるような情報を共有させていただければと思います。
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みなさんはじめまして、東京大学ア式蹴球部テクニカルスタッフです。今回から定期的に記事を投稿させていただくことになりました。「東大テクニカル」の仕事や分析方法、FL-UXの活用事例など、他では発信されていないような内容を取り上げていくつもりですので、読んでいただけると嬉しいです。
初回は、そもそもテクニカルスタッフとは何なのかということや、その仕事内容について書きたいと思います。
サッカーにおける戦術の重要性は、近年ますます高まってきています。非常に質の高い選手が揃うビッグクラブ同士の対戦では、戦術的な側面が勝敗を分ける要因に十分なり得ます。そこで差をつけられないように、また差をつけられるようにするため、分析もその重要性を増していきました。また、今やプロのクラブチームだけでなく、大学サッカーにおいてもこの傾向は表れています。
こうした状況の中、今からおよそ10年前、スポーツ推薦のある私立大学などに個の力では劣っても「分析」で優位をとって勝利に貢献する、という目的のもとで東大サッカー部にテクニカルスタッフが誕生しました。発足当初のメンバーは数人しかいませんでしたが、最近は部の積極的な広報活動の成果もあって、急速に規模が拡大しており、現在17名が所属しています。それに伴い活動の幅も広がっていて、FL-UXを用いたリアルタイム分析は2020シーズンから始めた新たな取り組みの1つです(リアルタイム分析については、今後の記事で詳しく紹介する予定です)。
少し話が逸れてしまいましたが、「テクニカルスタッフとは何か」という問いには、「分析の専門家」と答えることができるでしょう。そしてその目的は、当然ですがチームの勝利に貢献することです。
では次に、東大テクニカルが行っている分析について紹介します。それぞれの細かい内容は次回以降の記事に譲るとして、今回は東大テクニカルが行っている分析全体を大まかに説明したいと思います。
東大テクニカルが行っている分析は、大きく3種類に分けることができます。1つ目は対戦相手の分析、いわゆるスカウティングです。サッカーアナリストと聞いて思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。東大テクニカルのメインの仕事になっています。2つ目は自チームの分析です。試合後の振り返り、と考えてもらうとわかりやすいかと思います。チームを強くするためには、試合で見つかった課題を整理し、次の試合に向けて改善していくというサイクルが不可欠です。その意味で非常に重要な仕事になっています。3つ目は試合そのものの分析、つまりリアルタイム分析です。目の前で起きている事象を分析し、さらに改善策の提示まで行います。テクニカルスタッフが唯一試合に介入できるのがこのリアルタイム分析になります。
まずは対戦相手の分析、スカウティングについてです。東大テクニカルでは3, 4人で1つのグループとなってスカウティングを行います。自分たちのグループが担当する相手との試合のおよそ3週間前からその相手の試合を見始めることが多いです。この際、FL-UXに試合映像をアップロードし、「タグ付け」を行って行きます。タグ付けとはプレー映像の分類のことで、例えば相手のビルドアップのシーンには「ビルドアップ」のタグをつけることで、局面ごとの分析がしやすくなります。こうして10日間ほどかけて対戦相手を分析していきます。
そしていよいよ自分たちの担当試合の週が始まったら、まずは監督に対戦相手の特徴を伝え、それに基づくゲームプランなどの提案をします。監督やコーチはテクニカルスタッフの話を聞いた上で次の試合の戦い方や選手起用、そしてその週のトレーニング構築まで行うので、我々の分析内容は非常に重要です。試合の2, 3日前には、選手に対して対戦相手の特徴や自分たちの戦い方をプレゼンします。選手には相手の試合を見る時間がない場合がほとんどなので、このプレゼンでいかに分かりやすく相手の強み・弱みを伝えられるか、そして自分たちが勝つイメージを与えられるかがポイントです。以上が大まかなスカウティングの流れになります。90分の試合を何試合も、何回も見返し、プレゼン用の資料も作るのでそれなりに大変ではありますが、その分試合に勝ったときの喜びも大きいです。
次に自チームの分析の説明をします。スカウティングがPDCAのP(Plan, 計画)に当たるとしたら、自チーム分析はC(Check, 評価)の部分になります。スカウティングをもとに準備してきたゲームプランが実際に機能していたかどうか、それはなぜなのかを試合を見返して分析し、次の週以降のトレーニングなどに役立てます。今紹介したのはチーム全体に対するフィードバックの視点ですが、もちろん選手個人に対するフィードバックも行います。自分で見返すだけでは気づけないようなポイントを、客観的な立場から伝えるようにしています。ただ文字で伝えるのではなく、該当シーンを試合から切り出して選手に共有することがほとんどです。
必要に応じて動画内に矢印を描き込むなどの編集も行いますが、この際にFL-UXのスケッチ機能を使っています。また、東大サッカー部は近年、これらのフィードバックにより客観性を持たせ、精度を向上させるためにデータ分析にもかなり力を入れています。データの活用によって、映像を見るだけではなかなか気づけない課題が明らかになったり、逆に目で見て感じたことをデータによって裏づけたりすることが可能になっています。また、選手に改善点を伝えるときも、「単純に1対1で勝ててないから頑張ろう」と言うよりも、「直近3試合の平均デュエル勝率が40 %と低い。次の試合はこの数字を50 %にしよう」と伝えた方が納得感があります。以上のように自チーム分析を通して継続的に課題を改善していき、チームのパフォーマンスを上げていくことが目的です。
最後にリアルタイム分析の紹介です。東大テクニカルでは2021シーズンから、FL-UXのライブ配信機能を用いたリアルタイム分析を開始しました。対戦相手のスカウティングを担当したテクニカルスタッフが中心となって、目の前で起こっている事象とその原因を分析し、改善策の提示まで行います。FL-UXを導入する前から、ベンチから試合を見る監督やコーチ、スタッフが試合を分析、改善策の策定、実行するというプロセスは行われてきました。これは多くのチームでごく当たり前に行われていることかと思います。FL-UXの導入によりもたらされた1番大きな変化は、映像が残せるようになったことです。人間の目で直接試合を見る場合、当然ですが一時停止も巻き戻しもできません。しかし、ライブ配信機能を使えば、気になったシーンを再度見返すことが可能です。さらに、ハーフタイムに監督や選手に良かったシーンや改善すべきプレーの映像を見せることもできます。以上のような変化により、リアルタイム分析の精度は格段に向上したと思います。
今回の記事では、アナリスト、テクニカルスタッフとは何かということから、東大テクニカルが何をしているのかということまでお話しさせていただきました。次回以降の記事では、今回紹介した内容をより詳しく掘り下げていく予定です。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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ありがとうございました!
プロアナリストの杉崎健さんのアドバイスも受けながら、映像そしてデータに基づくプレー分析と改善策の提示まで一貫して取り組む東大ア式蹴球部テクニカルスタッフの皆さん。これからもご活躍が楽しみですね!
こちらの定期連載は、毎月1回のペースで更新していく予定です。皆さん、次回もぜひお楽しみにしていてください。よろしければマガジンのフォローもお願いいたします!
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