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「鳥の眼」で観る欧州サッカー〜【変幻自在のシステムチェンジ】ポッター・ブライトンの3-5-2戦術分析〜前編〜

こんばんは!
FL-UXマーケティングチームです。

さて、本日は、とんとんさんのご寄稿でお送りしております『「鳥の眼」で観る欧州サッカー』シリーズをお送りさせていただきます!

今回は、グレアム・ポッター監督がチェルシーに移籍したことでも話題を呼んでいるプレミアリーグのブライトンの戦術に着目していただきました。

それでは早速、とんとんさん、お願いいたします。

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2022-23シーズン、第6節を終えてCL出場権内の4位につけたブライトンに衝撃が走った。監督であるグレアム・ポッターがその職を辞し、トゥヘルを解任したチェルシーに入団するという事件が起こったのだ。

ここまで内容・結果共に充実したサッカーを展開し、BIG6を抑えて好発進を切った矢先、ましてやシーズン中であっただけにファンの失望の大きさは計り知れない。

逆に言えば、それだけグレアム・ポッターのブライトンは魅力と実力を併せ持っていたといえる。チェルシーがシーズン中に指揮官を欲するということがその証左である。

では、ポッター・ブライトンは一体どんなサッカーを展開していたのか。その戦術を紐解いていく。

■基本布陣

ブライトンは攻撃時4-3-3、3-1-5-1、2-4-4、守備時4-3-3、4-4-2、3-5-2、3-1-4-2、3-3-3-1、3-2-3-2とシステムを柔軟に変更して試合を進めていく。

ここでは守備時に多い3-5-2を元にメンバーを紹介する。
GKはスペイン人プレイヤーのロベルト・サンチェス。3バックは右CBにショートパスの配球先の判断が良くロブパスも得意でSBとCBの両方をこなすフェルトマン、中央にフィードとカバーリング、空中戦を得意とするダンク、左CBには前進してのボール奪取が魅力のウェブスターが起用される。
アンカーにはカバーと配球でチームのバランスを保つことのできる司令塔マック・アリスター、右IHに正確無比なキックと抜群の運動量が武器のグロス、左にプレミア屈指のボールハンター・カイセドが入り中盤を構成する。
右WBに切れのあるカットインが魅力のレフティ・マーシュ、左WBに右脚での柔らかなボールコントロールを持つトロサール、トップ下に同じくボールの扱いが巧みで守備での貢献度も高いララーナ、CFにパワーとスピードでボールを収め攻撃の流れを作るウェルベックが起用される。

■各試合の守備システム
まずは守備戦術についてみていく。昨季ブライントンはリーグ内でポゼッション率4位を記録したが今季は9位と低く、攻撃においてはロングボールの比率が高まり細かく繋ぐ意識は昨季ほど高くない。つまり、守備に割く時間が長くなっているということである。
システム変更が頻繁であるため、試合ごとの陣形とポイントを見ていく。

◆ユナイテッド戦(4-3-3vs3-3-3-1)

上図はマンチェスターユナイテッド戦だ。この試合は3-3-3-1で守備が行われた。CFのウェルベックがビルドアップの得意な左CBマルティネスにマンマーク気味につき、トップ下のララーナがアンカーのフレッジをケアしながら右CBのマグワイアにアプローチをかけていった。

ララーナがマグワイアとフレッジの2人を見て、アンカーのアリスターが中盤の底でサポート役となる以外、1人1人のマークが噛み合う形だ。WBのマーシュとトロサールは大きく前進し敵SBのケアを行い、3バックが敵3トップをケアしていく。

ララーナがマグワイアにプレスをかける場合、右WBのマーシュが内側に絞り、右IHのグロスがアンカー・フレッジのケアに、アリスターが右IHのケアに出ていく。右IHグロスは運動量が豊富で、システム変化とプレッシングのキーとなっている。例えば敵の左IHが高めの位置をとる場合右HVのフェルトマンにそのマークを受け渡し、自身はサイドに出てWGのケアを行う等、状況に応じて柔軟にポジションを入れ替えていく。

ブライトンはマンツーマンを基調とし、前線の選手にボールが入る前に奪取することを目標としている。そのため、CBダンクが前進して空けたスペースを誰も埋めないというシーンも発生する。そのスペースに関しては、侵入してきた敵右IHのマークにつく左IHカイセドが下がって埋めるというような形だ。リスクのある守り方である。

2トップには高い守備貢献も求められる。ウェルベックは確実にマルティネスのケアをしつつ状況に応じて何度かプレスバックでのボール奪取に成功し、ララーナは低い位置まで下がって中盤のサポートをして見せた。

当然ユナイテッドとしてはフリーとなるマグワイアがキーとなるが、配球先の判断力に欠けるためマークの外れた選手や降りてきた選手を的確に使うことができず、チーム全体がブライトンのプレッシングに苦戦することとなった。

ただしユナイテッドによる、ダンクとウェブスターの間へ送り込むパスはブライトンを苦しめることとなった。右サイドはグロスとフェルトマンで受け渡しが見られたが、左サイドではCB間に抜ける敵IHに対して左CBウェブスターと受け渡しをせずにカイセドがそのままついていったため、対応が後手に回るケースが多く見られた。ブライトンにとってここはピンチを招く一因となった。

◆ニューカッスル戦(4-3-3vs3-2-3-2)

この試合は右IHグロスにより高い位置をとらせた。敵左CBをケアさせ、アリスターが敵左IHを捕まえることでさらにマンツーマンの色を強め、ララーナがアンカーのケアに集中することができるように設定。すべてのマークが噛み合った3-2-3-2システムの状態だ。

ポジショニングが良く状況に応じてスッと位置を上げて的確にボールに絡みパスコースを生み出すことができるニューカッスルのアンカー・ギマランイスを警戒したという理由もあるだろう。彼のケア、および中央の遮断を実行するトップ下のララーナがキーとなる守り方だ。
ニューカッスルはビルドアップに苦戦し、CFウィルソンへのロングボールを多用したが、CBダンクが悉くはじき返した。ただしこの守備戦術の難しい部分であるが、両脇のCBが敵WGのスピードに晒されるという点で課題が残った。左CBウェブスターvsアルミロンだ。テクニックのあるアルミロンはウェブスターをいなして何度かチャンスを演出した。またトリッピアーに対してアプローチが遅れる場合、精度の高い縦パスがCB間等に供給されることとなった。

◆リーズ戦(4-2-3-1vs4-3-3)

リーズ戦は4バックを採用、ゾーンの意識が強くなった分、守備にずれが生まれた。

4-3-3システムをベースに、右IHのグロスが押し上げることで4-4-2気味に守ることとなった。リーズはCBが開きSBがやや高めの位置をとったため、ブライトンの両翼は下がってSBのケアを行う。ここで起きた問題がCHロカの見方だ。全体を押し下げられた状態で、広いスペースにて2CB+ロカvs2トップという数的不利の状態で守ることを強いられたのだ。特にロカが左サイドに降りた場合は手が付けられない状態となった。ウェルベックが右CBコッホのマークにつく形となったため、グロスがいかにロカをケアしながらジョレンテに圧力をかけられるか、という点がすべてであった。逆に言えば、グロスがこの難しいタスクを成功させられた際は、ショートカウンターのチャンスとなった。

途中から全体を押し上げ、アリスターが前進してロカを抑えられるようになった。DFラインはゾーンの意識を強め、降りてボールを受けるCFロドリゴに対してはウェブスターが前進して潰すことで対応することに成功した。

リーズは前線のポジションチェンジが激しいためマンマークで対応するのが難しい。そんな中、どうにかゾーンで守ることができたというのは収穫であったといえるだろう。

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いかかでしたでしょうか。

次の記事で後編もお送りいたしますので、ぜひ続けてお楽しみください!


こちらのnoteでは、今後もとんとんさんにご協力いただきながら、新シーズンも開幕した欧州各国リーグの戦術分析をお送りしていく予定です。よろしければぜひフォローをお願いいたします。

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それではまた!


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