
【東京大学ア式蹴球部 連載 vol.2】スカウティング(対戦相手の分析)
こんばんは。
今日は東京大学ア式蹴球部の皆さんによる定期連載・第2回目として、チームの分析班の皆さんが実践しているスカウティング(対戦相手の分析)についてご紹介いただきます。
(連載第1回目はこちらから)
プレー分析チームを立ち上げたい、分析作業をきちんと体系立てて行いたい、次の試合に向けた準備を効率良く行いたい、といった課題をお持ちの皆さんに参考にしていただける内容となっております。是非ご覧ください。
(ここから東京大学ア式蹴球部さんによる記事です。)
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みなさんお久しぶりです、東京大学ア式蹴球部テクニカルスタッフです。
少し遅くなりましたがあけましておめでとうございます。本年度も何卒よろしくお願いいたします。
さて、12月の記事でも書いたようにここでは定期的に、東大ア式蹴球部テクニカルスタッフ、通称「テク」の活動やFL-UXの活用事例など、「分析」という視点からサッカーのすばらしさを伝えていけるような記事を投稿していく予定です。12月の第1回の記事では、東大ア式テクニカルとはいったい何なのか、何をしているのかというのを大まかに書かせていただきましたが、第2回の今回はその中で、対戦相手の分析、つまりスカウティングについて詳しく掘り下げていきます。ぜひ最後まで読んでいただけると幸いです。
スカウティングの流れ
がっつりと深堀りする前にまずはスカウティングの流れを説明しようと思います。スカウティングは3~4人で構成される班ごとに担当する試合が決められており、おおよそ3週間前から担当の試合に向けて動き始めます。そこからの流れとしては
1週間ほど各自で試合の動画をチェックして、FL-UXを使ってタグ付けを行う↓
グループ内で意見を交換し、対戦する相手チームの特徴をまとめる
↓
試合のある週の序盤(主に月曜、火曜)に監督に対戦相手の情報を伝え、試合で用いる戦術、その週の練習内容を検討する
↓
週の後半にスカウティングミーティングで選手に約20分のプレゼンで相手チームの情報を伝える
↓
セットプレー、個人分析の動画をチームに共有する
というような流れとなります。
タグ付け
まず初めに行うのが、タグ付けという作業です。この作業は試合動画を見ながら気になるシーンにタグをつけてシーンごとにビルドアップ、崩し、プレス、自陣守備、セットプレーetc というように様々なカテゴリーに分類していく作業で、約5,6試合分行います。

また、特に気になったシーンについてはコメントを付けてより詳細な情報を残したり、マークをつけてあとから見返したときにわかりやすいようにしておきます。これは地味な作業で量も多いため大変ですが、後から見返すときに非常に楽になる上、どれだけ相手チームのことを正確に把握できるようになるかに響いてくるので大切な作業になります。攻撃担当、守備担当、セットプレー担当というように、プレーの種類ごとにタグ付けを分ける班もあれば、試合ごとのタグ付けを行うという班もあり、それぞれの班に比較的ゆだねられています。
分析班内での意見交換、監督・コーチへの共有
このタグ付けが終わったら次に班の中での意見交換を行い、その後情報をまとめたものを監督、コーチに共有します。基本的にはこの段階では対戦チームのビルドアップ、崩し、プレス、自陣守備の4局面に加え、攻守の切り替えやセットプレーの部分をまとめて伝えます。
あらかじめ、動画、テキストである程度の情報を先に共有しておき、部室のミーティングルームで詳細な情報を共有し、試合でどのような戦い方をするのかということを監督、コーチ陣と話し合います。この共有内容によってその週行う練習をアレンジすることも多いので正確に情報を伝えることが大切です。
例えばチームの守備に関して言えば、FWに裏に抜けるのがうまい速い選手がいるのであれば相手のロングボールに対してDFラインの正確な上げ下げが要求されるため、その対応を重点的に練習しますし、逆にポゼッション(ボール支配率)を高め、中央からショートパスで崩してくるというチームであれば、DF,MF,FWのラインをコンパクトに保つことを練習の中で意識付けしないといけません。また、セットプレー(FK,CKなど)に関してはかなり情報戦の側面があり、試合を決める大きな要素となるので、攻守両方で情報を監督、コーチ陣に共有し、練習の中で試合に向けて準備します。
1週間の練習なんかで対策ができるのかという意見もあると思いますが、後述のプレゼンのところでも書きますが、スカウティングの一番の目的は「選手に勝てるイメージを持たせる」ことです。
昨年度はほとんどの学校がスポーツ推薦を行っているような東京都一部リーグで戦っており、選手個々の質ではおとっているのが現状です。そんな相手に対して何も情報や準備なしで挑むのと、少しでも頭の中に情報があり、練習の中で対策を行った状態で挑むのは違いが一目瞭然です。メンタル面では確実に優位に立つ必要があります。
スカウティングミーティングでのプレゼン
では次にスカウティングミーティングで行っているプレゼンについて書いていきたいと思います。週5回の練習と試合があり、授業も忙しく、試合をゆっくり見る時間のない選手に対戦相手の情報を伝えることができるのは、試合の2,3日前に行うスカウティングミーティングの一回、20分のみです。ここで調べたことすべてを選手に話すことは不可能です。テクニカルスタッフのアドバイザーとして様々なアドバイスをいただいている杉崎健さんもおっしゃっており、上でも少し触れましたが、スカウティングにおいて重要なことは、選手にどれだけ勝てるイメージを植え付けることができるかということです。つまり、相手の戦術、選手の情報を調べて終わってしまっていたらそれはただの自己満足になってしまいます。では実際プレゼンはどのように行っているのかというのに触れていきます。
まずプレゼンの流れについてです。基本的には相手の自陣攻撃(ビルドアップ)、敵陣攻撃(崩し)、攻守の切り替え、敵陣守備(プレス)、自陣守備(ブロック守備)について、相手チームの特徴と、それに対する東大の対策を話していきます。文字ベースの資料は後から共有し、見返すことができるので基本的には動画を流しながら説明をするという風になります。この動画を選び、編集する作業が実は非常に難しいのです。選手は初めてその動画を見るのでわかりやすい映像にするために、できるだけカメラに近いサイドのプレーの動画を用いたり、どの選手がどのポジションの選手なのかをわかりやすく編集する・しっかり動画の余分な部分はカットするなどを行う必要があります。動画だけだと少し理解するのが難しい場合はアニメーションを用いるなどできるだけ選手の印象に残るようにプレゼンを行います。セットプレーに関しては時間があれば話すのですが、大体の場合はその日の練習でセットプレーの練習の時間をとり、監督から詳細を話してもらい、後から動画、資料を共有するという形になります。
詳細情報の共有
これが終われば、試合の前日までに相手の警戒すべき選手、弱点となりそうな選手などの個人分析、およびFL-UXで編集を行ったプレー集などを選手に共有し、より詳細な情報を伝えます。また選手からマッチアップする選手について情報が欲しいなどの要望がくることもあり、その対応なども行い選手が万全な状態で試合に臨めるように最大限サポートします。
今回は東大ア式テクニカルが行うスカウティングについて少し深堀りしてみましたがいかがでしたでしょうか。様々な感想を抱いたかと思いますが、テクニカルスタッフが試合での勝利に近づくために、泥臭いながらも工夫を凝らしながら行う分析をすこしでも知っていただけたら非常にうれしいです。
次回以降はデータ分析、リアルタイム分析などの先進的な取り組みについて掘り下げていく予定なのでぜひお楽しみに!最後まで読んでいただきありがとうございました!
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東京大学ア式蹴球部の皆さん、ありがとうございました!
来月号もぜひ楽しみにしていてくださいね。よろしければこちらのマガジン、そして東大ア式蹴球部さんのTwitterの方も、ぜひフォローお願いいたします。
それではまた!
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