見出し画像

「鳥の眼」で観る欧州サッカー〜【爆発的な攻撃力を支える「3本柱」】スパレッティ・ナポリの4-3-3戦術分析〜前編〜

こんばんは!
FL-UXマーケティングチームです。

10月も終わりに近づいてきましたね。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

さて、今回もとんとんさんによる「鳥の眼」シリーズをお楽しみいただきたいと思います。今日はセリエAで好調な成績を納めているナポリに着目します。

それではとんとんさん、早速お願いいたします!

===============================

絶好調ナポリの快進撃が止まらない。セリエAでは11節終了時点で首位に立ち、CLでは強豪リヴァプールを撃破と波に乗っている。

昨季の主力4人が退団する中でも的確な補強と個々人の奮起により、ここまで昨季以上の戦績をあげている。

リーグ戦11試合で26ゴールと爆発的な得点力が持ち味のナポリであるが、その攻撃力を支え好調の要因となっている3つの柱が存在する。このどれか1つでも欠ければナポリの強さは損なわれてしまう。

では、その3つの柱とは何か?どのように機能しているのか?紐解いていく。

■基本布陣

基本布陣は4-3-3だ。リーグ3位であった昨季から4人の選手が入れ替わっている。

GKにはオスピナに変わってメレトが入る。左CBにはチェルシーに移籍したクリバリに替わりボールの扱いが巧みな韓国人のキム・ミンジェが起用される。
CHで攻撃を司ったファビアン・ルイスの代役は170cmと小柄でアジリティに長けたスロバキア代表ロボツカだ。左WGのインシーニェの後釜には900万ポンドで加入した推進力ある突破が武器のジョージア代表21歳クヴァラツヘリアが据えられた。
その他ポジションは昨季と同じだ。右SBにポジショニングが良く万能型でバランスの取れるディ・ロレンツォ、右CBに安定した守備力を誇るラフマニ、左SBに足元の技術の高いマリオ・ルイが入る。
右IHにはリーチが長く自在に配給のできるザンボ、左IHにギャップへの侵入と推進力が持ち味のジエリンスキ、右WGにアジリティに長けたポリターノやロサーノが起用され、最前線には圧倒的なフィジカルとスピードを誇る絶対的エース・オシムヘンが君臨。イタリア代表にも選出されたラスパドーリ、昨季ヴェローナで得点を量産したジョバンニ・シメオネとCFの層は厚い。

■チームのスタイル

レギュラー選手が4人退団したものの、チームのスタイルは変わっていない。丁寧なパス回しで前進を図るためポゼッション率はリーグでもトップクラス。各選手がバランスを見ながらポジションを調整しつつゴールに迫る。相手のプレッシングが厳しい場合はオシムヘンへのロングボールを利用して打開を図っていく。
守備においては前線から相手のシステムに応じてポジションを調整し、マンツーマン気味にプレスをかける。カバーシャドウでの限定をかけるのはCFオシムヘンのみだ。
ショートパスによるビルドアップが上手くいかなければロングボールとプレッシングにより打開を図り、オープンな展開となればジエリンスキや左WGのクヴァラツヘリアのドリブルと推進力が発揮される。

このように「ショートパスを用いたビルドアップ」、「ロングボール」、「プレッシング」といった複数の戦術を用いることで手詰まりを防ぐ、万能攻撃型であることがナポリの強さの秘訣となっている。相手のプレッシングを前にビルドアップが上手くいかない→ロングボールとプレッシングで得点を狙う→オープンな展開に持ち込み得点を狙う→相手が引いて守ればビルドアップが容易になる、といった具合だ。
つまり点を取るために局面を転換でき、そのどの局面からも点が取れる。しかしどの局面の機能性が落ちても全体的な攻撃力が低下するということだ。
オープンな展開で活きるクヴァラツヘリアがブレイクを果たした要因にも通じている。
3本の柱自体はシンプルであるが、これらが実際どう機能しているのかに注目していく。

■敵陣を崩す配置の妙

ナポリはポジションを微調整して組み立て、前進することに長けている。そのトリガーとなるのがディ・ロレンツォ、ロボツカ、ザンボだ。
まず中盤の配置と微調整から見ていく。この部分は昨季よりもさらに精度の上がった部分だ。
ナポリの中盤は相手のシステムと噛み合わないように配置をずらしていく。例えば相手の中盤が逆三角形の場合、ロボツカとザンボが並列になると相手のマークがかみ合ってしまう。そのため、ザンボが右IHのポジションをとる。こうすることで、ロボツカの対応に出てきたIHの背後を突いていく。

敵の左IHがロボツカ、アンカーがザンボを捉えるようであれば、それだけでも敵の陣形は乱れる。この状態でジエリンスキがトップ下の位置をキープ、もしくは左IHの位置からど真ん中に絞ると、相手の右IHはどの程度絞るか判断に苦労する。このジエリンスキの動きは非常に効果的であり、どのチームでも見られるものではない特徴的なものとなっている。
ロボツカはアジリティに長けた今シーズンのキーマンだ。ターンに加えて敵を一瞬外してショートパスを通すのが抜群に上手い。アウトサイドパスも駆使することができるためジエリンスキへの縦パスが通りやすい。ジエリンスキはレイオフパスもターンもこなすことのできるプレイヤーであるため、攻撃の幅が広がっていく。


敵の右IHがアンカーのロボツカをケアする場合、ジエリンスキがそのまま空くこととなる。ロボツカから見て左からプレスを受けることとなれば、右から進んで楔を試みることができる。そうなると敵のアンカーはジエリンスキをマークするために左にスライドすることができなくなる。CFオシムヘンへのパスコースが空いてしまうからだ。
ただし、オシムヘンがグラウンダーの楔を受ける機会はさほど多くない。ゾーンで守る敵が警戒するというのも要因の一つだが、裏への抜け出しおよびロングボールとゴール前でのターゲット役となることに重きが置かれているのだ。相手がマンツーマンで守る際はコースが空くため、彼がボールを呼び込む機会が増える。
アンカーが左右両サイドにサポートに行くことで、特定の人物にマークを受け続けるという機会は減る。ついてくるようであれば2CHに変化させ、空いたスペースをジエリンスキが突く、という形でグルグルポジションを入れ替えられるのが彼らの特徴となっている。


中盤のポジションチェンジにはアンカーのロボツカも含まれる。そのため彼は常に低い位置に留まっているわけではない。例えばロボツカがマンツーマン気味につかれた場合、ジエリンスキやザンボが低い位置に降り、入れ替わるようにロボツカが前進していく。
マークが噛み合わずに空いたIH(ジエリンスキもしくはザンボ)をCBが見るチームの場合、DFラインの人数が減るため迷いなくオシムヘンにロングボールを送り込んでいく。ビルドアップにおける陣形・仕組みがロングボール戦術にもつながるという仕組みだ。

■ディ・ロレンツォのポジショニング

組み立て時には中盤のポジションチェンジに加え、DFラインにも変化が起きる。そのキーマンとなるのが右SBディ・ロレンツォだ。彼は攻守にバランスのとれたSBであり、特に秀逸なポジショニング能力を活かしナポリの攻撃を後方から支えている。
ディ・ロレンツォが見せるポジション移動は下記の通りだ。

①4バック→3バックへの変換において、3バックの一角に入る
②IHザンボが降りてきた場合に開いて上がる
③CHの位置に絞る
④CHの位置から斜め後ろに開いて敵をひきつける

まず4バックから3バックへと変換する場合、彼は絞って後方に留まる。これは相手を押し込めている際、攻撃に変化を加えるために実行されることが多い。配置に変化を加えることで敵の陣形に綻びを作り出すのだ。

相手のプレッシャーが激しいときはDFラインに変化は与えず、中盤のみの変化にとどめる。ディ・ロレンツォは縦のロブパスも得意としており、SBの位置から送り込むロブパスはロングボール戦術やシンプルに裏を狙う攻撃において重宝されている。
サイド低い位置の彼から裏に抜ける右WGポリターノへのロブパス、アンカー周りのギャップで受けるジエリンスキへの斜めのパス、そしてチャンネルに入り敵を背負うオシムヘンへの楔は、敵のマンツーマンプレスを掻い潜る有用な手段の一つとなっている。
SBはプレッシングの狙いどころにされてしまうケースも多いが、彼の場合は相手を十分に外に引き付けて前線や中央に送り込むことができるため、逆にプレス回避の手段の一つとなっている。これには当然ターゲットのオシムヘンや裏に抜けるポリターノ、中盤の配置といったプレス回避のための構造も重要であり、相乗効果を生み出す関係性となっている。どちらかが欠ければ機能しない。
IHのサンボが降りてくれば、ディ・ロレンツォはポジションを上げる。CBからボールを受けるのではなく、CB→ザンボ→ディ・ロレンツォといった形でパスを受けるためだ。ザンボがそのままサイド低い位置に流れてくれば、逆に内側に絞ってIHの位置をとることもできる。内側への動きに抵抗がない柔軟性も彼の強みだ。味方選手の位置を見てポジションを修正していく。

左サイドから押し込んでいる際はCHの位置に絞り、被カウンター対策と同時にセカンドボールを狙っていく。その位置でボールを受ける際はCHとしての役割をこなすため、右CBのラフマニがサイドに寄り、ディ・ロレンツォがCB間に入るといったポジションチェンジもみられる。アンカーならともかく、SBがCB間に降りるというのは珍しいパターンだ。しかし、チームとしていかに配置バランスを保ち効率よく得点をとりにいくのかが明確に擦り合わされていれば、こういった動きも当然発生する。
CHの位置からバックステップで下がりつつ元のポジションに帰還する動きについては見逃されがちであるが、これも相手をひきつける効果があり、パスコースの創出につながっている。ただ戻るだけではない、無駄のないプレーぶりが光っている。
左のマリオ・ルイはシンプルにパスの技術やアジリティに優れている。タイプは違うものの両SBにパスをつなげる選手が揃っていることもナポリの特徴の1つといえるだろう。

===============================

とんとんさん、ありがとうございました!

記事は後編に続きます。ぜひお楽しみに!

こちらのnoteでは、今後もとんとんさんにご協力いただきながら、新シーズンも開幕した欧州各国リーグの戦術分析をお送りしていく予定です。よろしければぜひフォローをお願いいたします。

また、とんとんさんがご自身で運営されているブログもぜひご覧ください。

それではまた!


弊社RUN.EDGEが開発・販売しているスポーツ映像分析アプリFL-UX(フラックス)の詳細は下記のリンクからご覧いただけます。
スマホのカメラを使ったライブ配信、映像の編集、共有、チャットが、一つのアプリで全てできます。
欧州サッカークラブをはじめとするプロチームが使う映像分析を、あなたのチームでもぜひ取り入れてみませんか。

☆★☆ユース・学生チーム向けのお得なプランもできました☆★☆

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!