【選手の色を全面に】モウリーニョ・ローマの4-2-3-1戦術分析〜前編〜
こんにちは。
今年もあと残すところ2ヶ月を切りましたね。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
ファンの皆さま、お待たせいたしました。とんとんさんの連載の続編をお届けします。今回からドイツからイタリアに移動し、セリエA特集をお送りします。まずは、世界最高峰の実績を誇る指導者と言われるモウリーニョ監督率いるローマのチーム戦術分析です。前編・後編に分かれておりますので、よろしければぜひ続けてお楽しみください。
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名将ジョゼ・モウリーニョが就任したASローマ。セリエA11試合終了時点で19得点12失点、勝ち点19の4位とまずまずの戦績をあげている。
彼等の強みであり弱みは選手個々の色を前面に押し出して戦う点にある。守備においては安定した陣形を敷いているが、攻撃においては明確な型を持ち合わせていない。では、どのように攻撃が展開されているのか。
ジョゼ・モウリーニョ率いるローマの4-2-3-1戦術を紐解いていく。
Lots of chances for both teams, but no goals ⚖️ #RomaNapoli #SerieA💎 #WeAreCalcio pic.twitter.com/ZAjOEtJPA7
— Lega Serie A (@SerieA_EN) October 26, 2021
■基本布陣
ローマの基本システムは4-2-3-1だ。GKはポルトガル代表ルイ・パトリシオ。右SBにスピードあるカルスドルプ、左SBには堅実なパス能力と力強いランニングが武器のビーニャ、CBに出足の良いマンチーニと非凡なカバー能力を持つイバニェスが並ぶ。
CHは正確なロングボールと強靭なフィジカルを備えるクリスタンテ、そして機動力に長け鋭い楔のパスを打ち込めるヴェレトゥがコンビを組む。
右SHにはリーグでもトップクラスの力強いドリブルを持つザニオーロ、左と中央にギャップでのボールの受け方が上手いムヒタリアンとペッレグリーニが入る。
トップには敵の死角に入る動きと真正面からのフィジカルを活かした動きで攻撃に絡むエイブラハムが起用される。
■チームのスタイル
ローマは守備時、ミドルゾーンで4-2-2-2の陣形を組み相手を待ち構えて前進を阻む。攻撃時は4-2-3-1のまま、もしくは左SBのビーニャが2CBと共に3バックの一角を成す3-2-5の陣形で攻撃を展開していく。基本的には鋭い楔を打ち込めるヴェレトゥとクリスタンテを軸に、タレント揃いの2列目の選手達の技量を活かしライン間で前を向くことで前進していく。ただし、ロングボールを厭うことはなく、多少成功が難しい状況であってもフィジカルの強いエイブラハムやDF背後を狙う2列目の選手に蹴りこんでいく。
個々が持つ能力をそれぞれ発揮し、それが重なり合うことで攻撃が展開されていく。どちらかというとシステマティックというよりも個人能力を活かした攻撃である。そのためここからは個々の効果的なプレーにフォーカスする内容が主となる。
■ビルドアップにおける3バック化
ローマは基本的に4-2-3-1のまま攻撃を組み立てていくが、時折3バックに変形することがある。
これは、左SBのビーニャがDFラインに残り、右SBのカルスドルプが位置を上げることで成されるケースが多い。ビーニャはボールを受ける際の身体の向き、視野の確保が巧みで、トラップで必ずサイドにも中央にも出しやすい位置にボールを置いてプレーする。そのため攻撃の展開を図りやすく、配置がずれることでトップ下のペッレグリーニもしくはムヒタリアンがハーフスペースでボールを受けやすくなる。
この3バック化については、全く行わないか毎回行うかの0か100であり、状況に応じてではなくスカウティングにより試合前に決めていると考えられる。ビーニャには推進力もあるため高い位置に進出しても力を発揮することができる。
■CH陣(クリスタンテとヴェレトゥ)
CHとしてコンビを組むクリスタンテとヴェレトゥは共に鋭い楔のパスを入れることができる選手だ。フィジカル能力の高い前者は比較的中央で静的な起点になるのに対し、アジリティを兼ね備えた後者は広範囲に顔を出してボールの前進を促していく。
彼等2人が連携を取るケースは少ないが、2人が後方に残ることでSBが高い位置を取ることでできるようになる。
クリスタンテの右脚から放たれる右SBカルスドルプへのロブパスは攻撃のひとつのオプションとなっている。この攻撃では5バックが相手の場合でさえ、カルスドルプをフリーにすることができる。ロブパスはクリスタンテが左サイドからの攻撃のやり直しを受けた際に送られることが多いが、この時にCFのエイブラハムはオフサイドポジションから戻りながらCBの死角に立つようにポジションをとる。この動きに反応するのは左HVとなるが、そうなると絞った右SHザニオーロに対応するのは敵のWBとなるため、スピードあるカルスドルプが大外でフリーとなる。つまりエイブラハムの巧みなポジション取りとザニオーロの囮によって大外が空くのである。
しかしこのロブパス攻撃には欠点がある。カウンター対応だ。左サイドからのやり直しからの展開となるため、両SBがポジションを上げた状態となっている。2CHが残っているとはいえ共に左サイドに寄っており、右へのロブパスが弾かれた際にスムーズに守備に移行することが難しい陣形だ。それほど押し込んだ状態でなくても逆サイドへのロブパスを用いるためなおさらカウンターを受けやすい。この部分は改善の余地がある。
敵のラインが高ければ、ボールホルダーがプレスを受けていない状況でも、そして多少雑であってもシンプルにDFライン背後にロブパスを送りCFや2列目が抜け出しを図っていく。
クリスタンテのロブパス自体は類を見ないほどの精度というわけではないものの、ロブパスと同じモーションで右サイドに展開するように見せて中央に鋭い楔を打ち込むことができる。これは敵に的を絞らせないように攻撃を展開するうえで非常に効果的なスキルとなっており、ヴェレトゥも同様に備えている。
20歳のダルボエはより短いパスを繋いでリズムを作るタイプだ。味方の動きとパスルートを予測し、事前にスペースに走り出し2手先のプレーに関与することができるクレバーさを兼ね備えており、攻撃に違ったオプションを与えることのできる貴重な人材だ。
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いかがでしたでしょうか。
後編では、アタッカー陣と守備分析をお送りします。ぜひ続けてお楽しみください。
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それではまた!