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「鳥の眼」で観るUEFAチャンピオンズリーグ〜クロップ・リヴァプールの4-3-3ワンポイント戦術分析〜

こんばんは!

2月の2週目が始まりました。皆さんいかがお過ごしでしょうか?

さて、今日は、とんとんさんとRUN.EDGEのコラボ企画、『「鳥の眼」で観るUEFAチャンピオンズリーグ』シリーズ続編として、2月17日にインテルとの対決を控えているリヴァプールのワンポイント戦術分析をお送りします。

それでは、とんとんさん、お願いいたします!

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基本布陣

ビルドアップは右SBアーノルドがポジションチェンジの中心となり、左右非対称な形をとる。それに伴い右サイドと左サイドでの攻撃の手法も異なっている(後述)。ファイナルサードではサラーのドリブルやマネのスピードに加えアーノルドの高精度クロスを武器にゴールへと迫る。ボールを失った際は近くの選手からプレッシャーをかけ、奪えずとも攻撃を遅らせる意図が見て取れる。

右サイド攻撃

右サイドからの攻撃において、特徴的なのは右SBアーノルドの位置取りだ。アーノルドはハーフスペースに入ることでパス交換に絡んでいく。ファビーニョとの細かいパス交換で敵を動かし、鋭い楔を打ち込む下準備をすることが可能となる。世界でも屈指のキック精度を誇る彼をピッチ中央付近に位置させることで、ハーフスペースからのクロス、サイドチェンジ、楔、と様々な攻撃を展開することができるのである。

そして彼がハーススペースに入ることで、押し出されるようにIHのヘンダーソンが外に流れる。この動きによって彼にマークが吸い寄せられれば、敵中盤とDFのライン間に降りてきたCFのジョタもしくはフィルミノへのパスコースが開き、ボールを送り込むことができる。マークがついて来なければ、ヘンダーソンは敵SBとSHの間でフリーの状態でボールを扱うことができるようになっている。

この攻撃の際の左サイドの動きにフォーカスする。まずマネは中央に絞り込むことで、降りるCFの背後を狙う動きを見せる。その間左IHのチェンバレンはアンカー脇くらいまで下がった位置を取り、マネが空けた大外をSBのロバートソンが狙っていく。アンカーはボールサイドよりも中央にずれ込むため、チーム全体として時計回りの「渦巻き」のようなポジション移動が行われることとなる。

マネがCFの空けたスペースに入り込める位置にいるというのは、ハーフスペースから高精度のクロスをあげられるアーノルドの良さを引き立てることができ、効果的なポジションチェンジとなっている。

右WGのサラーはさほど大きく動くことはなく、サイドに張ってボールを待つ。彼はドリブルでの突破力を兼ね備えているが、加えてワンツーの壁パスが非常に上手いという特徴も持つ。勢いを殺した柔らかいパスだ。そのため、ハーフスペースを駆け抜けてくる選手に対して適格な落としのパスを送り込んでチャンスメイクをすることが可能となっている。

左サイド攻撃

左サイド攻撃は右と大きく異なる。基本的にはWGマネがハーフスペースに絞り込み、SBロバートソンが大外の低い位置という形をとる。この状態からまず狙うのは、ロバートソンからマネへ、左脚で巻いたパスをDFライン背後に落とすことだ。マネはハーフスペースをまっすぐに駆け抜けてゴールを狙う。

このパスが難しくマネに対して敵SBがマークについているのであれば、マネはサイドに流れて起点となり、代わりにロバートソンがインナーラップでゴールを狙う。IHのチェンバレンは基本的に低めの位置でそのサポートを行う。これでも難しいようであれば、ロバートソンはシンプルにサポートのチェンバレンやファビーニョにボールを預け、大外の高めの位置にポジションを移し、ポジションチェンジによる打開を図る。

この間の右サイドは、アーノルドもサラーも絞り気味にポジションをとる。サラーは、ボールホルダーがオープンの状態でサイドチェンジを蹴ることができそうになった段階でタッチラインまで開いていく。アーノルドが外にポジションをとる場合は、サラーは絞ったままでバランスをとる。

CFと逆WGの関係性

CFと、ボールの反対サイドのWG(逆WG)は、CFの挙動に逆WGが合わせる形で連携をとる。CFがボールサイドに寄って降りる動きを見せれば逆WGはその裏に抜ける。ちょうど上の右サイド攻撃の図解のような形だ。

この時の抜ける動きは、斜めに抜けるというよりも一度横方向に動いてから縦に抜け出すようなイメージとなる。これはマークを外しやすくなるとともに、オフサイドにかからないように助走をとることができるという利点がある。

逆にCFがDFライン背後に抜ける動きを見せれば、逆WGはその手前に移動してボールを呼び込んでいく。WGが開きすぎているとCFの空けたスペースに入り込めず、上述の連携を取ることができない。ある程度絞った位置をとっている必要があるのだ。つまりリヴァプールの逆WGは幅をとることよりもCFとの連携を重視したポジショニングとなっているのだ。

セット守備戦術と課題

リヴァプールはボールを保持している時間が長く、平均ポゼッション率が60%を超えている。そのためセットして守るという機会は多くない。

そのセット守備に関しては数年間一貫して4-3-3の守備ブロックを形成し、WGが外を切るようにポジションをとっている。WGが外を切れなければIHがスライドして対応し、WGが中を切り、アンカーが中央をプロテクトする。

このセット守備に関して、いくつか脆さを見せるシーンがある。まずは2CHに対する対応だ。これも従来通りであるが、敵アンカーはCFのジョタ(フィルミノ)が見る形となる。しかし相手が中盤を1枚増やして2CHでビルドアップを行う場合、ジョタだけでは物理的にどうしても抑えきれずに空いてしまう。CBからのパスの出し先が二つになるからだ。ここでパスの出し入れをされると、WGが徐々に絞ってくるため、大外を切るという前提が崩れてしまうことになりかねない。

そしてより深刻になりかねないのがDFラインの統制だ。CB間でのカバーの意識が非常に薄れており、前進して奪いに行った相方が空けたスペースをカバーできていないシーンが増えている。ファン・ダイクも事前にスライドしてケアをするというよりも、よりゴール前で対応する方向にシフトするケースが多くなっている。

ネガティブ・トランジションと課題

ネガティブ・トランジションにおいて、リヴァプールはボールホルダーに近い選手からプレスをかけ、奪取ないしはバックパスを強いて攻撃を遅らせることに意識を向けている。後方には2CBとアンカーが確実に残っているものの、IHとSBでバランスがとれていない。基本的にアーノルドと片方のIHが残ることが多いが、アーノルドは自身の背後まで気が回っておらず、カウンターの決定打として彼のスペースを使われるシーンが多い。チェンバレンに関しても、左SBのロバートソンが高い位置をとる分リスク管理のため下がった位置をとりたいところだが、セカンドボールの回収位置およびカウンターを遅らせるに必要な位置より高い位置までじわじわと上がってしまうケースが散見される。

ファビーニョ一人では広大なスペースをケアしきれず、ファン・ダイクでもアーノルドの背後のスペースまでは管理できない。この被カウンターの部分は相手にとっての付け入る隙となってしまうだろう。

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とんとんさん、ありがとうございました!

先日公開したインテルの戦術分析、そして、リヴァプールvsインテル対決のマッチプレビューもぜひ、合わせてお楽しみください。

それではまた!


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