【SBの役割と重要性】セオアネ率いるレヴァークーゼン戦術分析

【SBの役割と重要性】セオアネ率いるレヴァークーゼン戦術分析

こんにちは!

今日はとんとんさんによる欧州チーム分析シリーズ第4弾として、ブンデスリーガの注目チームバイエル・レヴァークーゼンの戦術分析をお送りします。今回は1話完結です。

セオアネ新監督を迎え今季こそCL出場権を狙い現在リーグ4位をキープしているレヴァークーゼン。今後も動向に注目していきましょう!

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シーズン開幕前に多くの上位チームで指揮官の交代が行われたブンデスリーガにおいて、バイヤー・レヴァークーゼンが好調を維持している。ヤングボーイズから新指揮官として就任したセオアネ監督の志向が早く深く浸透し、機能している証左である。
攻撃的なサッカーを展開する彼らの特徴は何といっても的確なポジションチェンジと連動性だ。今回はゴールを量産するレヴァークーゼンのとる攻撃戦術を中心にフォーカスする。

https://twitter.com/Bundesliga_EN/status/1429152258764193797?s=20

■基本布陣

基本布陣 (2)

レヴァークーゼンの基本布陣は4-2-3-1だ。GKにはビックセーブを連発し、素早い判断とスローイングでカウンターの起点になることもできるフラデツキーが起用される。CBはフィジカルの強いターとカバーエリアの広いコスヌがコンビを組む。右SBはアジリティに秀でたフリンポン、左SBにキック精度の高い長身のバッカーが入る。CHはリーグ屈指のゲームメイカーであるデミルバイと気の利いたポジションを取れるアンドリッヒを軸に、アミリ、アランギス、パラシオス、バウムガルトリンガー等厚い層を誇る。
SHには右に圧倒的なスピードとアジリティが武器のディアビ、左にはタイミングの良いポジション修正とドリブルを得意とするパウリーニョが起用される。
トップ下には柔らかいボールコントロールで狭いスペースでも敵を制すことのできるヴィルツ、CFには左脚とヘディングのシュート精度の高いシックが起用される。
ELも戦う彼らはローテーションを行っている。特にCHの構成は多様なものとなっている。

https://twitter.com/EuropaLeague/status/1448262694306467841?s=20

■チームのスタイル
レヴァークーゼンの持ち味は攻撃にある。遅攻においてはCHを中心とした的確なポジションチェンジと連動、サイドでのオーバーロードを駆使し、丁寧にボールを繋ぎながらゴールに迫っていく。敵の防衛ラインを乱すために「複数のライン間」に入る意識がチームに徹底されており、スムーズなパス交換を可能にしている。
ポジションチェンジのタイミングと的確さは特筆すべきものであり、彼らの生み出す連動性に直結している。ユニークな特徴はSBへのサポートの早さと厚さにある(後述)。速攻においてはスピードあるウイングが守備に穴をあけないように攻め残ることでゴールに到達しやすい状況を生み出している。
攻撃的なサッカーを展開するがリスク管理にぬかりはなく、フリンポンやバッカーといったSB、そしてCH陣が互いの位置を把握し、カウンターに備えるポジションを取る。

■徹底した「ライン間」の意識
レヴァークーゼンの攻撃は「ライン間」を意識した前進が徹底されている。それが如実に表れているのが左サイドだ。

ライン間1

敵の守備陣形における「ライン間」は複数存在する。システムによるが、主に「DF-中盤間」、「中盤-FW間」、そしてDF背後のスペースと、セーフティとなるFW手前のスペースだ。これらのライン間はどれも「誰が対応に行くか」という迷いの生じるスペースであり、かつ警戒していても対応が難しいスペースだ。
例えばDF-中盤のライン間はどちらのラインの選手が対応するべきか判断に迷いが生じやすい。中盤の選手が対応するには死角になってしまうため難しく、下がって守ると守備ブロックの重心が下がって新たなスペースが生まれてしまう。DFが前進すれば最も警戒すべき背後のスペースが空くこととなる。
こういった影響のある「ライン間」だが、ボールを受けた時にこの4つの空間全てを選択肢に入れることが可能なポジションが存在する。それがSBだ。
サイド低い位置から全体を見渡せるこのポジションは敵の背後へボールを送り込むことも、楔のパスを打ち込むことも、横パスで別の展開を窺うことも、セーフティにバックパスを選択することもできる。
このSBの重要性を認識し、SBへのサポートを厚くしているのがレヴァークーゼンの特徴だ。このチームの攻撃において最も重要なポイントである。
例えばSBからDF裏、DF-中盤のライン間へのパスが困難な場合、上図のように3人目の動きとしてすぐ脇にCHがサポートに向かい、CHを経由して楔のパスを打ち込んでいく。
バッカーからヴィルツへのパスコースができていれば問題ないが、そこが切られている場合ヴィルツが動き直すのではなくデミルバイがバッカーのサポートに行き、横パスでボールを動かすことで楔のパスコースを作り出していく。
2CHのシステムのため両サイドでこの動きを行うことが可能となるが、ゲームメイカーのデミルバイがDFラインに降りることで敵のプレッシングを回避するビルドアップを行う機会も少なくない。これによりSBへの補佐役が1枚欠けた場合どのように前進していくのか。

ライン間2


まず、ブンデスリーガでも屈指のゲームメイカーであるデミルバイは、低い位置から精度の高い左脚で敵の隙を突き、楔のパスを成功させることができる。
ただし、多くの場合トップ下のヴィルツがサポートに降りてくる。

https://twitter.com/Bundesliga_EN/status/1448181711976599555?s=20

ライン間3

ヴィルツが降りる場合、敵のCHを前方に釣り出すことが可能となる。これに応じてディアビとパウリーニョの両SHはハーフスペースに絞り、ヴィルツの空けたスペースで楔を受け取る。パウリーニョはこの絞るタイミングが抜群で、ボールを受けてからスピードを上げてゴールに迫っていく。
この時、SBに対してヴィルツとパウリーニョが同じハーフスペース上で段差をつけてボールを呼びこむこととなる。敵CHからするとどちらか一方に対応する必要があり、必ずどちらかをフリーにしてしまうのだ。

https://twitter.com/Bundesliga_EN/status/1448997092446330881?s=20

2列目がこうした動きをこなす中で、CFのシックがパス回しに関与するシーンはさほど多くない。彼は常に中央に位置することで敵のCBを釘付けにする役割を果たす。仮にCBがライン間のパウリーニョに食いついていけば、その裏のスペースを陥れる動きを見せる。正確な左脚と打点の高いヘディングシュートを武器に持つシックは、ボールを送り込むだけで得点の可能性を生み出すことができる。そのため彼はゴール前での仕事に集中し、かつ中央に位置して2列目のためのスペースを作り出すことが役割となる。
彼が引いてボールに絡むのはライン間に大きなスペースが空いた場合、そしてロングボールを収める場合となる。
デミルバイがトップ下に入る場合、大外パウリーニョとバッカーの間に流れることでオーバーロードを生み出す動きを見せる。敵SHはバッカー、敵SBはパウリーニョを見るためフリーになることができるのだ。

ライン間4

ヴィルツがパスを受けられない場合、バッカーはセーフティにCBターにボールを預けることとなる。ここでヴィルツの持ち味が発揮される。バックパスが送られると敵は無意識に注意を前方のター(ボール)に向け、かつラインを上げる。このリアクションに対してヴィルツはバックステップを踏みながら敵と真逆の前方に移動し死角に入る。敵のマークが剥がれたところでターから楔を受けるのだ。楔を打つ側から受ける側に変化する動きが秀逸で早いのがヴィルツの特徴となっている。

ライン間5


ヴィルツや他の選手からの「横のサポート」が受けられなかった場合、かつ楔のパスが難しい場合、バッカーは内側への持ち出しを試みる。この動きも当然楔のパスコースを自ら作り出そうという動きである。この動きに対して敵は多くの場合中盤をコンパクトに絞ることで楔を警戒する。それによって空いたCHにパスを送り込み、別の展開を模索していく。バッカーは左脚のキック精度が高く、アウトサイドを駆使して細かいパス交換も苦にしないため低い位置からの配球役に適した選手である。レヴァークーゼンにとって重要なSBというポジションに置く選手としてまさに最適な人選と言える。

右サイド1


右サイドではよりシンプルな攻撃が展開される。圧倒的なスピードを誇る右SHのディアビは絞った状態から、降りて足元で受ける動きと縦に抜けてスペースに呼び込む動きを繰り返す。敵の嫌がる位置で、一瞬で局面を打開できるプレイヤーだ。

右サイド2


右SBのフリンポンはアジリティに長けており、敵を一瞬で置き去りにすることができる。ディアビが絞って空いたスペースに駆け上がり突く動きはお手の物だ。アタッカーの資質のある彼はポジションチェンジの中で楔を受ける側に回る2列目のポジショニングや偽SBの位置取りもこなすこともできる多彩なプレイヤーであり、バッカーとは違った機能性を見せている。
こうした形で前進を図り、ゴール前のシックにボールを送り届ける、もしくはディアビのスピードやヴィルツの狭い局面での打開力といった個人の能力を絡めて得点を奪っていくのがレヴァークーゼンの攻撃となる。


■リスク管理
以上のようにビルドアップにおいて重要な役割を果たすSBとCHだが、この2ポジションの4選手はリスク管理を行うというミッションも課されている。自チームの攻撃時、2ポジション4選手のうち3選手が後方に残り、2CBと合わせて5人でカウンター対策を取る。互いの位置関係を確認し、時に片方のSBがCHの位置まで絞る等でネガティブ・トランジションに備える。両SB共に攻撃的なプレイヤーであるが、彼らが同時に上がる状態はほとんど見られず、CBはターとコスヌというカバーエリアの広い選手が並んでいることもあり、パスを主体に攻撃を組み立てるチームの課題であるリスク管理とカウンター対策の部分に関する弱みはほとんど見られない。

■守備における特徴
レヴァークーゼンのセット守備は4-4-2で行われる。ミドルゾーンにてプレスを開始するスタイルであるが、敵を追い込めるようであれば全体を押し上げてハイプレスを敢行する。機動力のあるアランギスやパラシオス等CH陣、そしてチーム一のアジリティを誇る右SBフリンポンによる前進してのボール奪取は速攻のポイントとなる。
自陣まで迫られた場合、ボールとは逆サイドのSHは攻め残る傾向が強い。特にディアビだ。自身の守備エリアを侵攻されないだろうという予測に長け、守備に負担がかからないように攻め残り自慢のスピードでカウンターに大きな迫力を与える。

■おわりに
レヴァークーゼンはするための共通意識=ライン間の意識が深く浸透しており、チームとしての狙いがはっきりとした好チームだ。SBへのサポートを厚くし、いかにライン間を広げ、いかにライン間を使うのか。リスク管理もぬかりなく、攻撃的であることは間違いないがバランスの取れたチームと言える。
各ポジションにタレントが揃っており、選手の層も増している。デミルバイとヴィルツの替えが利かないのが玉に瑕であるが、ディアビやシックに託すことで、一発で局面を打開することもできる。
このいわゆる観ていて面白いチームが、ELとリーグで躍進することに期待したい。

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いかがでしたでしょうか。

次回からはセリエAを特集する予定です。お楽しみに!


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