【諸刃の剣4-3-1-2】マルコ・ローゼ率いるドルトムント戦術分析〜後編〜

【諸刃の剣4-3-1-2】マルコ・ローゼ率いるドルトムント戦術分析〜後編〜

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こんにちは。

今回も引き続き、とんとんさんによるボルシア・ドルトムントの分析記事をお送りします。

こちらは後編になりますので、前編をまだ読んでいない方はぜひ前編からお楽しみください。

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■攻撃スタイル
ドルトムントの攻撃は配置的な優位を活かしたものと、ボールコントロールに長けたメンバーによるやや強引にも見えるパスワークとが存在する。システム上、幅を取るのは基本的にSBであり、ボールサイドもしくは中央に選手が集中する傾向が強い。そのためやや強引な細かなパスワークが生まれるのだ。
時にアンカー、時にIHがDFラインに降りてビルドアップのサポートを行うが、チームがバラバラにならないのは一人一人が敵と味方の位置を的確に把握、ボールサイドに十分な人数を配して連動しているからだ。「自分がどう動いたら守備側が困るのか」を理解しているかのように動く。
起用される選手によって各ポジションの動き方は異なるが、特徴的で再現性の高いものをピックアップしていく。

■ビルドアップ
ドルトムントは連動したプレーが得意だ。スペースが生まれれば次々とそこに人が雪崩れ込んでいく。そのため、ビルドアップはボールを前進させるだけでなく、前線のためにスペースを作り出す必要がある。繰り返しとなるが、キーワードは連動である。
ボールを前進させスペースを作り出すために、ドルトムントはアンカーやIHがDFラインに降りてビルドアップに加わる。

ダフード

アンカーのダフードはCB間に降りる前にボールを受ける。ターンの切れ味が鋭くアジリティの高い彼が中央でサポートに入ることを見越したCB陣、特にアカンジはハーフスペースから前進を図り、積極的に楔を打ち込んでいく。降りる前にボールを受けるのは、自身に敵の注意を向け、ハーフスペースに開くCBをフリーにするためである。フリーのCBに寄せに出る選手が空けたスペースを使って攻撃を作っていくのである。楔の質の高いフンメルス、積極的に楔を放ち攻撃に推進力をもたらすアカンジを大いに活かすプレーとなっている。
 IHはリンクマンとしての役割を果たす。主な動きとしては
・SBを押し上げるためにCBの脇に降りる
・敵DFと中盤のライン間でボールを受ける(ポジションを取って牽制する)
・CFからのレイオフを受ける
・高い位置で幅を作るSBを孤立させないようパスコースを確保する。
といったところだ。

IH落とし

レイナとベリンガムは共に低い位置に降りてSBを押し上げるプレーを見せる。この動きは、SBを高い位置へ押し上げるとともに、敵の中盤を守備ブロックから引きずり出す効果もある。空いたハーフスペースにCFが入り込むことで大幅に増える選択肢は、敵に迷いを与え、多様な展開を可能としている。

IHとSBの連携は非常に重要なものとなっている。ベリンガムが良く見せるプレーであるが、アンカーのダフードが降りて3バック化しSBのムニエを押し上げる際、ベリンガムはSBと連携を取れるポジションを常に意識している。

https://twitter.com/BlackYellow/status/1438885181813891076?s=20

ベリンガム


初めは敵の守備ブロックの隙間で顔を出すことで敵SHの注意を自身に引き付け、ムニエをフリーにするポジションをとる。敵の注意が自身に向かなければ、パスを受けて一気にゴールを陥れる態勢を取る。
ボールがムニエに渡るとすぐにポジションを取り直し、ムニエからのパスを受けられる位置に入る。次の展開までも考えたプレーが得意な彼は、このポジション取りを活かしてバイエルン・ミュンヘン戦、CLベジクタシュ戦等で得点に絡む働きを見せた。

https://twitter.com/BlackYellow/status/1432706428016513030?s=20

レイナ


レイナはよりギャップに顔を出すプレーを得意としている。IHやCBがボールを持った際、逆サイドからトップ下の位置まで絞って顔を出す。逆サイドから選手が侵入してくるというのは、守備側にとってはマークを受け渡すうえで大きな負荷がかかる。4-3-1-2ゆえの近い距離感がもたらすものでもあり、レイナの強みが活きる部分となっている。
ここで、2トップというシステムにも注目する必要がある。2トップに対して2CBがマークに付く場合、カバーを行う選手がいなくなる。そのためDFが前進してボールを奪取に行くことが難しくなり、状況によっては4バックで2トップの選手を見るような場面も出てくる。ましてや稀代の点取り屋・ハーランドが居ればなおさらだ。こうした中でレイナのような動きをこなせる選手が貴重な存在となってくるのである。

■トップ下ロイスの役割
ロイスはまさに神出鬼没だ。ビルドアップに加わるためアンカー脇に降りることもあれば、サイドに流れて起点を作ることもある。ハーフスペースや中央でボールを引き出し、失わないようワンタッチで捌くプレーもお手の物。彼が「遊軍」のようにプレーできるのは、中央に選手が集結しやすいシステムであるため、スペースが空いても別の選手が入り込めるからである。優れたテクニックでロストの少ない彼がボールに関わる回数が増え、かつスペースを作り出し、仲間がそこを利用できるという複数の利点が存在する。そのため、2トップとの距離感を維持するよりもその前段階でボールと人に絡むプレーを見せる。
仮に彼が動かなければスペースを作り出すトリガーが無くなることにもつながってしまうため、攻撃が硬直化してしまう。

■2トップの役割
2トップは絶対的なストライカーであるハーランドと、ムココやマレン、時にはロイスといったスピードある選手がコンビを組む。
ハーランドはさほどパス回しに関与せず、ゴール前で得点を奪うことに注力する。スピード・フィジカル共に優れている彼はヘディングでも抜け出しでもゴールを奪える。加えてロングボールの収め所としても機能している。
ハーランドの相棒となる選手は、ハーランドと連携を取るというよりも中盤のパス回しのヘルプに入ることが多い。これまでに挙げてきた例となるが、IHが低い位置に降りた際にハーフスペースで顔を出す、逆に前線に張ることでライン間にスペースを作り出すといった具合だ。2CBvs2トップというシステム的なかみ合わせの利点を活かし、カバー役として敵SBを釘付けにすることもでき、逆にカバーが居なければ自身やIHがチャンネルを陥れることもできる。ハーランドの相棒を務める選手の振る舞いは今後キーポイントになるだろう。

■ロブパスを活用した前進

ロブパス (1)

ドルトムントはハーランドの強靭なフィジカルやムココ、マレンといった選手のスピードを活かしたロブパス攻撃も手札に持つ。特にスーパーカップのバイエルン戦では多くのチャンスを作り出した。
バイエルン2トップに対してCBとともに3vs2の数的優位を生み出すダフードは持ち前の小回りの利いたプレーでプレスをいなし、CBにフリーでボールを持たせることに成功。
IH2人の主な役割は敵を自陣に誘き出すこと、そしてロブパスを前線が収めて前進に成功したら前を向いた状態でボールに関与することだ。彼らが敵を引き付けることでDFライン周辺のプロテクトを薄弱にした。2人の働きで最終ラインが2vs2という状況を生み出すことに成功した。DFライン手前のスペースでスピードあるムココやフィジカルの強いハーランドがボールを収め、ロイスが補佐に入り、時間差でベリンガムとレイナが前進する、理想的な形を実現するに至った。


■リスク管理に大きな課題
前線の選手は極力幅を取らず、SBがオーバーラップで大外を使うドルトムント。ムニエのクロスとゲレイロのパスワークという攻撃力を活かすうえでも非常に有意義なものであるが、課題となっているのはリスク管理の部分だ。例えば左サイドからの攻撃においてゲレイロが上がっている際、逆サイドでムニエが死角を突こうと前進すると、後方に残るのはアンカーと2CBの3人のみとなってしまう。逆IHのベリンガムは敵を引き付けるうえで効果的なポジションをとっていることが多く、誰がリスク管理に下がるのかという部分に問題が起きている。リスクを見るのであれば少なくとも4人は後方に残したいものである。両SBを上げて幅を使った攻撃で敵を刺すのであれば、ボールサイドのIHを下げる等整備が必須である。


■ドルトムントの4-3-1-2攻撃の意識
ドルトムントの4-3-1-2攻撃において、幅を取るのは基本的にSBの役割となっており、無闇にIHやCFが外に流れることはしない。距離感が崩れてしまうからだ。可能な限り中央もしくはハーフスペースでパス交換を行い前進していく。仮に外に流れる場合は、距離感が開かないようそのサイドにオーバーロードを形成して攻撃を展開する。この陣形でのパス回しにおいてドルトムントは以下のルール付けがなされていると考えられる。


・パスを出したらとどまらずに前進する(追い越しが増える)
・楔を受けた選手は極力前を向かずに捌く。パスの出し先がなければ後方へドリブルして時間を作り、やり直す。
・楔を受けられなかった選手は降りて配球役に回る
・パスはスペースでなく足元へ


彼らが中盤で渋滞した状態にならないのは「段差」を作り出しているからだ。守備の陣形は横だけでなく縦に広げることも考える必要がある。既述のIHが降りることで敵の中盤を「前方に」誘き出すのは最たる例だ。これと同様に、選手が少しずつ縦にずれたポジションをとることで「2歩進んで1歩下がる」、バックパスを挟んだ前進が可能となるのだ。例えばCB→IH→アンカー→CF→トップ下といった具合だ。極論を言えば、SBが幅を取っているため他の選手は中央とハーフスペースだけで崩していくことも可能となる。
細かいパスとバックパスを取り入れるチームにとって、CBが勇気を持って積極的に楔を打ち込むことも重要となる。CBからの楔が入らず、サイドへの展開が多くなると攻撃のスイッチが入らない。
ドルトムントは正確にパスをつないで前進できるテクニカルで連動性あるチーム特有の4-3-1-2攻撃を展開している。

■おわりに
4-3-1-2は4-3-3のチームに対するプレッシングを行う上で非常に効果的なシステムであるが、ひとたび押し込まれると押し戻すことができず、苦しい展開となってしまう。攻撃に関しては、近い距離感で細かいパスを駆使した前進を得意とするチームにとってはうってつけであるが、ここぞという時の幅の使い方とリスク管理が難しくなっている。
ローゼのドルトムントは目に見える課題がまだまだ多いものの、高いレベルで機能させていると言える。今後さらに突き詰めていくのか、ローゼの特徴である他システムとの使い分けを行っていくのか、要注目である。

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いかがでしたでしょうか。

今後も引き続き、とんとんさんによる欧州チーム分析をお送りします。次回は、ブンデスリーガで今季順位を上げてきており、上位を争うあのチームです・・・!よろしければぜひ、フォローをお願いいたします。


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