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王者レアル・マドリードCL戦記~戦術を打ち負かす自由。圧倒的な個とバランス~前編〜

こんばんは!

本日は今シーズンの欧州CLで見事優勝を飾ったレアル・マドリードに着目した記事をお送りします。今回もとんとんさんにご寄稿いただきました。

今年2月よりお送りしていた『「鳥の眼」で観るUEFA チャンピオンズリーグ』は今回の3本立て記事にて完結といたします。ご愛読くださった皆様、ありがとうございました!

こちらの特集は下記のとんとんさんの記事一覧からご覧いただけますので、ぜひチェックしてみてください!

それでは早速、前編からいってみましょう!

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21-22シーズンCL決勝のカードは盤石の強さを見せるリヴァプールと、信じられないような逆転勝利を重ねてきたレアル・マドリードの一戦となった。
このシーズンを締めくくるに相応しいハイレベルな攻防が見られたこの一戦は、スペインの雄・レアル・マドリードに軍配が上がった。

パリ・サンジェルマン、チェルシー、マンチェスター・シティ、リヴァプールと優勝候補たちを次々と撃破し、まさに完全優勝となったレアル・マドリード。
そんな彼らのこれまでのCL決勝トーナメントでの戦いぶりから、レアル・マドリードの戦術に触れていく。
早速ではあるが、はじめにチームとして最も完成していた決勝戦での戦いぶりを見ていく。

◆リヴァプールの守備

序盤はレアル・マドリードが果敢にボール保持を試みるも、リヴァプール得意の守備ブロック&プレスを前に、前進が阻害される形となった。

リヴァプールの守備戦術は普段通りだ。サラーとディアスがSBへのアプローチをかけられる位置に立ち牽制。マネがCBへプレスをかけて攻撃の方向付けをすると、逆WGはCBへのプレスをかけられるようにCBとSBの間に位置をとりサイドを限定する。
広くポジションをとるCBに対してマネのプレスが間に合わない際は、多くの場合ヘンダーソンが前進して左CBアラバへアプローチをかける。ヘンダーソンは、必ず低い位置でビルドアップに絡むクロースのマークを請け負うため、距離的にもクロースを消しながらアラバへプレスをかけやすいのである。
※詳しくはリヴァプールvsビジャレアルの記事にて

◆レアル・マドリードのビルドアップ

このリヴァプールの守備戦術を前にレアル・マドリードは思うように前進できないものの、危険なショートカウンターを食らう場面もほとんど無かった。では、レアル・マドリードの攻撃はどのようなものであったか。
レアル・マドリードのビルドアップの中心はIHのクロースとモドリッチだ。彼らが低い位置で2CBと4人でビルドアップに関与することでチームは前進していく。共にCBの左右いずれかの脇に寄り添うように降りるのが特徴だ。ただしこの試合の序盤、そしてCL準決勝のマンチェスター・シティ戦は、降りるクロースを狙われることとなった。

「降りながら」ボールを受けるクロースに対し、マークにつく選手(リヴァプールの場合はヘンダーソン)がそのままついていき、同時にCBへのプレスもかけることでプレスを誘発する結果となってしまう場面が頻発した。「降りてから」ボールを受けることを許してもらえれば、また違った攻撃が可能となっただろう。
WGの牽制をいなしてSBのカルバハルがボールを持てた場合も、手詰まりの状態に陥った。ディアスの献身的なプレスバックでやり直しの選択肢を狭められるうえに、低い位置のモドリッチがアンカーのカゼミロへのパスコース上に位置することでパスコースが一つ減り、チアゴのスライドも相まってパスコースの確保されていない状況であったからだ。逆にカゼミロとモドリッチで、カルバハルに対してパスコースをそれぞれ確保できれば、チアゴ一人では塞ぎ切れず、リヴァプールの守備に穴を空けたシーンも見られた。

◆ロングボール戦術

後方で余裕を持つことが簡単でないレアル・マドリードがとった前進方法の一つがロングボールだ。ファン・ダイクの影響範囲に入らないWG(特にバルベルデ)に向けたロングボールは、主に前半戦において多く見られた。
このロングボールは危険な失い方を防ぐという意味合いが強かった。ヴィニシウスへのロングボールはCBコナテにより完封され、メインとなったバルベルデへのロングボールもセカンドボールを回収する仕組みが弱く有効な攻撃手段と呼ぶには難しいものであった。
これを有効な攻撃手段へと昇華させるため奮闘したのがカルバハルだ。カルバハルは状況に応じてハーフスペースに絞ることも、DFラインの背後に抜け出すことも、幅をとることもできる。バルベルデが中に絞るのとセットで幅を確保することで、左SBロバートソンに対して2vs1の局面を作ることにたびたび成功した。

◆ロングボール戦術

後方で余裕を持つことが簡単でないレアル・マドリードがとった前進方法の一つがロングボールだ。ファン・ダイクの影響範囲に入らないWG(特にバルベルデ)に向けたロングボールは、主に前半戦において多く見られた。
このロングボールは危険な失い方を防ぐという意味合いが強かった。ヴィニシウスへのロングボールはCBコナテにより完封され、メインとなったバルベルデへのロングボールもセカンドボールを回収する仕組みが弱く有効な攻撃手段と呼ぶには難しいものであった。
これを有効な攻撃手段へと昇華させるため奮闘したのがカルバハルだ。カルバハルは状況に応じてハーフスペースに絞ることも、DFラインの背後に抜け出すことも、幅をとることもできる。バルベルデが中に絞るのとセットで幅を確保することで、左SBロバートソンに対して2vs1の局面を作ることにたびたび成功した。

◆カウンター

速攻でヴィニシウスにボールが入ると、基本的にはベンゼマと二人でゴールを目指す形となった。レイオフやリターンパスの上手いベンゼマが斜め後方でサポートに入り、抜群のスピードとドリブル技術を誇るヴィニシウスと繰り出すワンツー攻撃は、対人の強さを備えたコナテでなければゴールにつながってもおかしくはなかった。2人で攻め上がることができるため、他のメンバーは無理して攻撃参加をせずカウンターに備えることができた。

◆技術の高さに基づく「白い巨人」の自由

カウンターを食らわないためにロングボールを織り交ぜるレアル・マドリード。それとは別の前進方法はいかなるものか。それはモドリッチとクロースを中心とした、いわば普段通りの技術の高さに基づいた「自由」だ。
レアル・マドリードの攻撃は「自由」である。決められた動きをこなすというよりも、状況から判断して自身が活きるエリアへ移動する、もしくは自身の得意なプレーを発揮できるエリアへ移動するという自由だ。
ただし、これはただの自由ではない。選手の技術やポジショニング能力に基づいた自由だ。相手の策に屈しないレベルの技術、バランスが崩れないようチーム全体でバランスをとる能力を有していることが条件となり、いずれかを失えば破綻する。
例えばこの決勝戦、機能しない部分もあったものの最後までビルドアップの中心はクロースとモドリッチであった。
レアル・マドリードはビルドアップにおいてSBを中心にピッチの幅を使って広くポジションをとるため、ボールを失った際には中央が手薄となり非常に危険な状態に陥る。ましてやリヴァプールのプレッシングは上述の通り速攻に移りやすいためなおさらだ。それでもモドリッチとクロースは圧倒的なパス技術、視野の広さを駆使して危険な失い方をすることがなかった。
彼らの技術を活用して狙ったエリアの一つがサラーとアーノルドの間のスペースだ。右サイド攻撃の場合はディアスのプレスバックにより時間的余裕がなかったものの、左サイド攻撃においてはサラーによるプレスバックがさほどなされない。アーノルドは最も危険なプレイヤーであるヴィニシウスのマークにつく必要があり、サラーの背後にポジションをとる左SBメンディは比較的余裕のある状態でボールを受けることができた。
メンディにボールを送り込むためにはサラーの頭上を越えるロブパスを送り込む必要がある。当然失敗すればリヴァプールで最も危険な選手に速攻を仕掛けられることになるが、クロースとモドリッチは当然のようにメンディにロブパスを送り込む。リヴァプールの組織的な守備をも破壊する圧倒的な技術だ。組織的に戦うチームにとって怖いのはそれを上回る組織力・相性の悪い相手だけでなく、組織をものともしない破壊的な個の力である。レアル・マドリードの「自由」の条件のひとつである「個」は間違いなく担保されていた。
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とんとんさん、ありがとうございました!

いかがでしたでしょうか。
続けて中編、後編もお送りしますので、そちらもぜひご覧ください。

それではまた!

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