
【鳥の眼で観る欧州CL】【高質プレッシング】ナーゲルスマン・バイエルン4-2-3-1ワンポイント戦術分析
こんばんは!
FL-UX マーケティングチームです。
いよいよ明日2月15日(水)5:00から欧州CL決勝トーナメントが始まりますね!
本日のとんとんさんによる「鳥の眼で観る欧州CL」では、キックオフまであと12時間を切った、バイエルンの戦術分析をお送りします。
また、この記事に続けて、PSGvsバイエルンのマッチプレビューもお送りしますので、ぜひそちらも合わせてご覧下さい。
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■チームのスタイル
採用するシステムは4-2-3-1だ。現状、最大の強みとなっているのはこのシステムによるプレッシングである。CFチュボ・モティングによる制限から始まる連動したプレッシングは、ほぼ確実に敵からボールを回収することができる。
攻撃においては前線にスピーディーでドリブルができ、細かなパスワークもこなすことができる選手が複数存在し、オーバーロード的な崩しを見せることができる。しかし年明け以降は前線の距離感が広がっている状況であるうえビルドアップの配置が安定しないため、ちぐはぐな攻撃に終始している。
🇩🇪 @FCBayern in #UCL Gruppenphase 2022/23 = ⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️⚽️#TBT | @FCBayernEN | @FCBayernUS pic.twitter.com/F3CoI8lZPu
— UEFA.com DE (@UEFAcom_de) January 17, 2023
■4-2-3-1プレッシング

バイエルンの最大の武器は4-2-3-1プレッシングだ。このプレッシングはほぼ100%の確率で敵からボールを回収できる。攻撃方向を制限し、サイドではめ込む形だ。
最も重要となるのはCFによる攻撃方向の制限となる。出場機会を増やしているCFチュポ・モティングは巧みにCBのパスコースを切りつつボールに寄せ、攻撃方向を制限する。制限がかかると、逆SHはすぐにポジションをあげてやり直しをさせないようにピッチに蓋をしていく。
攻撃方向が制限される段階で、2列目の選手は中盤のパスコースを抑えておく。この時、敵がアンカーを配置していれば、トップ下の選手がアンカーに張り付くことで配置に悩むことなく抑え込むことができる。トップ下は守備強度の高いムシアラや、クレバーなプレッシングを見せるミュラー等、守備の面で貢献できるプレイヤーが採用される。
敵が2CHである場合、2列目が近い距離感を維持することで、3枚で2人をみる形となる。こうして中盤を避けさせ敵SBにボールが出たところで、SHがプレッシングをかけてはめ込んでいく。
枚数が足りない場合はSBが前進して補充する。特に敵2CBが大きく開いた場合、チュポ1人ではカバーができない。しかしSHが敵CBについたら敵SBが空いてしまう。そういった際にSBが前進していく。これは主に左のデイビスの役割となる。
SBが躊躇なく前進していく中でCBがサイドに大きくスライドし、逆CBに関しても大きくボールサイドにスライドしてカバーを行う。
現状彼らのプレッシングは世界でもトップのレベルにあるといえる。
■攻撃不調の原因
機能性の高いプレッシングを見せる一方で、攻撃は年明け以降3戦で3得点と不調に陥っている。この原因は前線の距離感にある。

良い時のバイエルンは前線の選手の距離感を狭め、2レーンを3人で共有するような形でポジションチェンジを入れながら段差を作り、レイオフパス等を駆使して抜け出しを図っていく。段差もレイオフパスも、選手間の距離が近くないとできないプレーだ。
・SHが絞り、入れ替わるようにFWが外に流れる。
・SHが張ったまま、その手前にミュラーが流れてフリーで受ける。
・CHのゴレツカが高い位置をとり、2列目のグナブリーやサネがスペースに降りて受ける
・サイドのスペースが空けば、デイビスが駆け上がる。
こういったプレーが頻繁に現れる。
ライプツィヒのような近い距離感での攻撃を、左SBのデイビス、フィニッシュに絡むCHゴレツカを交えて行うようなイメージだ。
しかし年明け以降はポジションを固定し静的な配置をとる傾向が強く、各選手が孤立し段差やレイオフパスが見られなくなった。同レーンで交わることがないため、フリーの選手を作りにくいのだ。中盤以下の選手もサポートポジションにつけていないため、厚みも出せない。
こうなると、前線にスペースを与えてフリーの選手を作り出すために、ビルドアップにおける後方のプレイヤーの配置がさらに重要となる。しかし、そこもアンバランスだ。中盤で攻撃を組み立てる選手がキミッヒのみとなり、彼が左右に広くサポートに行かなければならない状態であり、効果的な前進ができない。ビルドアップにおける配置で敵陣形を乱すことができないため前線にスペースを提供できず、マークを剥がせないまま縦に攻め急いだ攻撃となる。
キミッヒは左右の移動距離が長いため、DFラインに降りるプレーが減っている。その分SBが偽SBとして配球に関与するケースが見られる。ただし役割として曖昧であり、こちらも効果的なものには至っていない。デイビスがこの役を担う場合、スピードと突破力を活かしにくくなるため宝の持ち腐れだ。
スタニシッチ、パヴァールがこの役割でなかなか機能しきれない中、右SBマズラウィがこの役割で輝きを放った。アヤックス時代と同様にDFラインと前線をつなぐリンクマンとして、効果的な配球で攻撃にスイッチを入れることができる選手だ。やや絞った位置で周囲の味方を活かすプレーを見せたものの、運悪く負傷をしてしまった。カンセロの加入でこの課題が克服されるのか、大きな注目が集まる。
■守備面の弱み
バイエルンのプレッシングはほぼ100%ボールを回収できる。ただし、前線で奪えるかというと必ずしもそうとは言えない。敵は早々に諦めてロングボールを選択するからだ。そうなるとバイエルンのボール保持での攻撃が始まるが、上述の通りなかなか上手くいかない。するとバイエルンはカウンターを受ける機会も増える。こういった形で悪循環に陥り、最後のカウンターこそが、バイエルンの守備の弱みとなる。
配置の面から見ていく。基本的にネガティブ・トランジションにおいて、前線の選手も即座にプレスをかける。それに伴い中盤でキミッヒが芽を摘んでいくが、ゴレツカが攻撃時に上がっているため中盤で芽を摘む役はキミッヒのみとなる。ここまでで回収できない場合、デイビスも高い位置をとる傾向があるため、デイビスの裏が狙われやすくなる。デイビスの場合スピードでカバーできるという面もあるが、DFラインのバランスは崩れてしまう。
そして最後にウパメカノの対人守備だ。彼はフィードや積極的な楔で貢献している。しかし守備において相手のエース格とマッチアップする際、あっさりやられてしまうケースが少なくない。ボルシアMGのテュラム、フランクフルトのコロ・ムアニなどがその例だ。
最終ラインに位置をとるウパメカノクラスのCBには、こういったエース格の相手に迫り負けない対人能力と安定感も求められる。
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とんとんさん、ありがとうございました!
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