マンツーマン・流動性・罠。トゥドール率いるエラス・ヴェローナ3-4-2-1戦術分析〜後編〜

こんにちは!
前編に引き続き、今回もとんとんさんによるヴェローナ戦術分析をお送りします!(前編をまだ読んでいらっしゃらない方はぜひこちらからチェックしてみてください。)

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ビルドアップ

ヴェローナのビルドアップは3バック+2CHを中心に展開され、シャドーやWBがその補佐的な働きをこなす。3バック+2CHには「スペースを得た選手が前進する」という約束事が見て取れる。
2CHはすぐにDFラインに入れるような低めの位置をとる。これには、

  1. 3バックが前進しやすい環境を作り出す

  2. リスク管理が頭をよぎることで、バックが上がれないという事態を無くす(上の約束事を守るため)

  3. バックが上がれば必ずCHが埋める

  4. 複数レーンからの前進を可能とする

  5. HVが敵の死角を取りやすい

といった効果がある。

例えばCHのタメズが右の低い位置に降りる場合、元居たHVのカザーレはサイドに寄ることができる。元々敵SHが見ていたゾーンにタメズが降りた場合、敵CHがそこまでプレスをかけるのは難しい。距離的な問題、そして背後にバラクという憂いがあるからだ。バラクにボールが入ればシンプルにボールを捌かれ攻撃がスピードアップしてしまう。そこで敵SHが継続してそのゾーンを守るのだが、サイドの空いたスペースからカザーレが前進していくという仕組みだ。タメズが下がったためカザーレはリスク管理の心配をすることなく前進できる。敵は即座に受け渡しの対応ができない。CHが低い位置にいることで後方の人数が担保されるため、スペースの空いたエリアの選手が思い切りよく前進できるのだ。

ミゲウ・ヴェローゾやイリッチはポジショニングとパスワークで、タメズはアジリティでビルドアップに貢献する傾向が強い。パス精度の高い選手が楔の起点となるハーフスペース低い位置にポジションをとれるというのも、この構造の利点だ。

このようにして生み出されるスペースとフリーの選手からボールを前進させていくのがヴェローナの特徴だ。

ヴェローナはサイドの低い位置で数的優位を作り出すケースが非常に多い。上の例はHVのカザーレがサイドの位置に入ったが、例えばCHが降りない場合はWBが低い位置でフリーの状態となる。HV+WBで敵SHに対し数的優位を作って前進するのだ。この時シャドーやCFのシメオネが流れる、HVがチャンネルへと駆け抜ける等でサイドにオーバーロードを形成しつつ前進していく。

上のシーンでも最前線にランニングを入れているのはHVのカザーレだ。彼のランニングがシメオネのマーカーの注意をひきつけ、高いシュート精度を誇る右脚が振るわれている。

このランニングは敵に新たな迷いを生み出す。ランナーについていけばボールホルダーへのマークが緩み、前進してシュートまで持ち込むことも可能となる。デコイの役割としても用いることができるこの動きは最終ラインのHVが行うことでより効果が表れる。本来SHがマークについていた選手がCBの横まで入り込めば、マークの所在が曖昧になるのは必然だ。

CHがリスク管理のため残るのは当然だが、逆シャドーのバラクもバランス次第でCHのサポートを行えるような低めの位置をとる。変わって右WBのファラオーニが前進する等どこをチャンスと捉えるか、その意識が共有されている。

左WBのラゾビッチは右利きのプレイヤーだ。そのため、カットインからの展開を図ることができる。敵から遠い足で内側にボールを持ち出すことができるため、中央のプレイヤーとのリンクや角度を変えてのプレーが可能となる。HVからのパスに対しても敵のプレスを内側に抜けて外すことができるため重宝する特徴となっている。さらに彼は右足のアウトサイドキックも得意としており、敵のタイミングを外しつつ裏に抜ける選手に長めのロブパスを合わせることも可能だ。

シャドーとCFの役割と関係

ここまででバラクの働きについてはいくつか触れてきた。彼は敵の中盤とDFのライン間でボールを引き出し、シンプルにボールを捌くことで攻撃のスピードアップを図っていく。彼のシンプルなプレーは、彼にボールを集めることで守備が中央に固まりサイドのスペースが空くという効果もあるため、ビルドアップ時の経由地点としても重宝している。CHの補佐もできる非常にバランスの取れたプレイヤーだ。

ではもう一方のシャドー・カプラーリ、そしてCFのシメオネはどうだろうか?

カプラーリはアジリティとドリブル、シメオネはスピードとオフザボールに長けたプレイヤーで、近い距離感を維持して動くことが多い。同じレーンを共有するイメージだ。

スピードあるシメオネが常にDFラインの背後を狙い、アジリティに長けたカプラーリが広がったライン間でボールを呼び込む形は彼らの得意な連携プレーだ。

同じレーンを共有すると、DFとしては前か後ろかの2択を迫られる形となる。CBが縦関係になるのはDFラインに大きなスペースが空くことを意味するため非常に危険である。ゆえにカバーが難しい局面に陥る。この状態でパサーは前後どちらかの空いたスペースにボールを供給していく。

特にシメオネであるが、セリエでも随一のシュート精度を誇っている。ミドルシュートの上手さは他を寄せ付けないレベルだ。そんな彼がフリーでボールを持てば敵の脅威となることは間違いない。そこで機転の利くカプラーリを傍に添え、局所的な数的優位を作りフリーで持てる時間を作るというのは理にかなった攻撃手法といえる。

近い距離にいるためボールを失った際にも素早く連動してプレッシングをかけることが可能だ。しかし後方にはリスク管理のため残ったメンバーもいるため、再度守備をセットしてボールを回収する方がヴェローナにとって攻撃に移りやすい展開であるといえる。

ロングボール戦術

低い位置で攻撃を組み立てる志向の強いヴェローナであるが、プレスが厳しければロングボールも駆使していく。

ヴェローナは前線の3枚が近い距離を維持して動くため、2人でボールを収める試みが多い。ロングボールに対して1人が敵DFと競り合う。ここで競り合う選手は敵にクリアをさせないもしくは飛ばせないことを目的としたものが多い。そうしてこぼれるセカンドボールを2人目が回収するという形だ。そのためロングボールを蹴る選手は、前線2選手が集まるエリアへ・タイミングでという共通意識を持つことができる。

カウンター等敵陣に大きなスペースが存在する状況であれば、そこにロングボールを蹴り込むことでスピードあるシメオネやカプラーリがフィジカル能力に頼ることなく収めることが可能となる。彼らのスピードで敵を間延びさせ、後続の選手たちがゴール前に入り込む攻撃も選択肢の1つとなっている。

おわりに

ヴェローナの守備は中央の選手を中心に柔軟にポジションを調整してのマンツーマンとファラオーニによるトラップが特徴となっている。攻撃に関しては2CHによるリスク管理と配球をベースに、HVが前進し近い距離で連動する前線3枚を助ける、といった構成となっている。

トゥドール監督就任間もないものの、いずれの質も高く魅力的なものとなっている。

課題は上にあげたものに加え、なんといっても選手層の部分だろう。特に前線のメンバーはカリニッチが控えているとはいえ、いずれの選手が欠けても機能性が落ちてしまうだろう。今いるメンバーで、前線の連携をいかに構築していくのかも今後の見どころの一つだ。

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とんとんさん、ありがとうございました!

次回はイタリアサッカー特集のラストとして、インテルに迫りたいと思います!(予定)その後はCLの季節が近づいてきますので、CLのマッチプレビューを検討中です!お楽しみにしていてください。
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