
【東京大学ア式蹴球部 連載 vol.3】リアルタイム分析
こんばんは。
ページを訪れてくださり、ありがとうございます。
RUN.EDGE株式会社 FL-UXマーケティングチームです。
今日は東京大学ア式蹴球部の皆さんによる定期連載・第3回目として、チームの分析班の皆さんが実践しているリアルタイム分析についてご紹介いただきます。
(なお、東京大学ア式蹴球部の皆さんの他の記事は、こちらのリンクからチェックいただくことができます。)
昨年からリアルタイム分析を取り入れ、実戦でも活用している東大ア式蹴球部の皆さん。今回は、実際にどのようにリアルタイム分析を日々の活動に取り入れているのか、そしてリアルタイム分析は実際にどういうシチュエーションで役に立つのかを詳細にまとめていただきました。
(ここから東京大学ア式蹴球部さんによる記事です。)
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東大ア式テクニカルの仕事内容としては三本柱があります。一つ目はスカウティング、これは対戦相手の分析を通じてチームに勝利のイメージを持たせるという仕事です。二つ目はデータを用いた自チーム分析、これは試合から得られたデータを用いて自分達のパフォーマンスを振り返る作業です。そして三つ目はこのリアルタイム分析、試合中にリアルタイムで自分達のプレー選択の修正と相手の分析を行うものです。スカウティング資料を過去問とすれば、言うなればリアルタイム分析は試験中のカンニングであり、スカウティングで知った相手の傾向や、それへの東大の対策が試合中にうまく機能していない場合に、速やかに修正することを目標にしています。そこでここからはリアルタイム分析をどのように実行しているかについて時系列に沿って紹介していこうと思います。
まずリアルタイム分析をするにあたり、ソフト、ハード両面での準備は欠かせません。ホームでの試合の場合は通信環境が整っていますが、外部での試合の場合はWi-Fi環境下である必要があります。ア式ではアウェーの試合にはポケットWi-Fiを準備し、いつでもどこでも試合のライブ配信が可能なようにしています。
ソフトについてはFL-UXを用いています。FL-UX導入の決め手はやはりライブ配信機能であり、ライブ配信中もタグ付けができることにあります。この環境さえ整ってしまえば、ネットの繋がった場所でFL-UXにログインすることで現地で観戦していなくともリアルタイム分析に携わることができ、コロナウイルスの拡大に伴って応援が禁止とされた昨年においては大きなアドバンテージとなっていました。
次に事前に準備したスカウティングに基づき、リアルタイム分析における分析のポイントや目安がテクニカルユニット内で共有されます。例えば相手が奪った後のロングカウンターに強みのあるチームの場合、スピードのある選手がどこに配置されているかはもちろん、東大はあらかじめ予防的マーキングとして後ろにカウンター対策要員を配置しておく必要があります。ネガティブトランジションで素早くプレスをかけて前を塞ぐといった対策も必要でしょう。
以上のことはスカウティングを行った時点で洗い出せているので、当日はそれがきちんと遂行できているかを確認することになります。他に選手や監督からあらかじめこのようなポイントを見ておいて欲しいと頼まれることもあります。例えばCBの選手がひとつ前の試合で出足が遅く、相手のCFを潰しきれなかったために失点を許したとしましょう。その選手から「きちんと前に出てつぶせているかを確認して欲しい」といわれた場合には試合を見ながら該当シーンをタグ付けしていきます。
タグ付けはスカウティングの時の四局面のタグではなく主に選手タグを使うことが多いです。FL-UXではフォーメーションを入力すると選手タグをつけることができるので、相手の分析よりも監督の策定したゲームプラン通りに選手が動けているかに主眼を置いているリアルタイム分析では大変重宝しています。
リアルタイム分析をする際には、ベンチにパソコンを抱えたテクニカルスタッフを配置し、通話で綿密に連絡を取り合うことで、監督やコーチの要求を吸い上げることができるようにしています。タグをつけるときにはミスだけではなく、良いシーンも多くつける事も肝心です。選手に映像を見せて勝てるイメージを持ってもらうためには、良かったプレーもフィードバックする必要がありますが、どうしても修正というと悪いプレーのみに注意が向けられがちなので気をつける必要があります。
タグを大体つけ終わると、いよいよハーフタイムが迫ってきます。ここからはベンチ入りしたテクニカルスタッフの出番です。タグをつけた沢山のクリップの中から選手に改善点や良かった点を映像付きで説明していきます。選手としてもついさっきまで行っていたプレーをすぐに振り返ることができるので、非常に役立っていると言えるでしょう。タグをつけたシーンについてテクニカルスタッフと選手の一対一のやりとりだけではなく、複数のプレーヤー同士でフィードバックし合うような場合もあります。
後半はハーフタイムのような、修正ポイントを伝える機会が残されていないので前半ほどタグ付けをすることはありませんが、相手が配置を変えてきたり、メンバーを変更してきたりした際には、いち早くその特徴を監督に伝えられるように準備しておきます。試合後の選手へのフィードバックのために選手一人一人のプレーに焦点を当てて良かった点、反省点をタグとしてつけることもあります。
このように試合当日のリアルタイム分析の流れを紹介してきましたがいかがだったでしょうか?
リアルタイム分析でタグ付けを主に担うのはスカウティングを担当したテクニカルスタッフですが、リアルタイム分析をする際には十数人ほどのテクニカルスタッフが各自のパソコンを持って試合観戦することもよくあります。
最後にリアルタイム分析をしていく中で印象的だった事例をいくつか紹介して終わろうと思います。
一つ目は東大の選手に対してのフィードバックが奏功した事例です。その試合での東大はボール保持の時間が長いながらもファイナルサードでのボールタッチの回数、ボックスへの侵入回数ともにとても少なく、決定的なプレーをほぼ生み出せずにいました。しかし試合を見ていく中で、その原因はどの選手も足元で受けようとするがあまり、配置が硬直化して相手に対応されやすいためであることがわかりました。そこでIHが裏に向かってアクションするべき場面でしていないシーンや、SBがオーバーラップする場面でしていないシーンなどを切り出して選手に見せることで後半からは裏へのアクションが増え、それによって裏を警戒した相手の守備ブロックに隙間が生まれるという好循環を生むことができました。
もちろんこれらは監督やコーチもハーフタイムに口頭で伝えたことではありますが、映像を見るのと見ないのとでは選手の中でのイメージしやすさが格段に違います。
二つ目は相手のやり方がスカウティングと違った場合にうまく対応できた事例です。事前のスカウティングでは東大も相手も負ければ降格のかかる非常に重要な試合であることも相まって、お互いにリスクを取らずに慎重にゲームが進んでいくと考えられていました。相手のセット守備は5-2-3であり、中から前進させないように守ってくるため、東大のプランとしては守備意識の低い左WGの方を重点的に、サイドから前進しようと伝えました。
しかし当日、相手は5-3-2で東大の4-1-2-3に対して前から人を捕まえにきました。東大はサイドからの前進を試みるも、相手WBの強気な縦スライドで見事にハマってしまい、ショートカウンターであわやというシーンも散見されました。そこでSBに低めの位置を取らせて相手WBのプレスを誘発しつつ、裏へロングフィードを蹴ることで主導権を握り返すことに成功しました。これもベンチにいるテクニカルスタッフを通じて監督とコミュニケーションをとり、リアルタイムで試合を分析していなければ成し得ない事例だったと思います。
以上にように昨年導入したばかりのリアルタイム分析ですが、すでに活躍の兆しを見せていると言えるでしょう。まだまだ整備されきっているとは言い難いですが、今後もリアルタイム分析は東大ア式の強みになっていくのではないかと思われます。
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東大ア式蹴球部の皆さん、ありがとうございました!
皆さん実際の試験ではカンニングはされていないと思いますが、「言うなればリアルタイム分析は試験中のカンニング」という表現がとても印象的でしたね。
なお、東大ア式蹴球部さんの活動は、こちらのTwitterからもチェックいただけます。
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それではまた!