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「鳥の眼」で観る欧州サッカー〜【爆発的な攻撃力を支える「3本柱」】スパレッティ・ナポリの4-3-3戦術分析〜後編〜

こんばんは!

さて、今回も前編に続き、とんとんさんによるナポリ戦術分析をお送りします。

それでは早速、お楽しみください!

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■ロングボールとオープンな展開

こういったショートパスとポジションチェンジを用いたビルドアップが相手のプレッシング等で抑え込まれてしまった場合、ナポリがとる策はロングボールとプレッシングだ。まずここではロングボールについて見ていく。

ロングボールのターゲットとなるのはオシムヘンであり、彼の能力だけでロングボールによる前進を完結させることもできる。パワー・高さ・スピードを兼ね備えた彼と両WGによる3vs3のエリアにロングボールを送り込むのがナポリのロングボール戦術のすべてだ。WGはワイドから中央に寄っていき、セカンドボールをDFライン裏や手前で回収する。4バックが相手でも3vs3にもっていくために、先述の中盤の配置で相手選手を1人DFラインから誘き出しておく傾向が強い。

これは相手のプレッシングを回避し前進するとともに、オープンな展開へと局面移行するという効果もある。ロングボールの蹴りあいになり両チームが間延びしピッチに大きなスペースが生まれるようになれば、ジエリンスキやクヴァラツヘリアといった推進力あるドリブラーが水を得た魚のように躍動、ピッチを切り裂きゴールに迫ることができるのだ。

クヴァラツヘリアが今季セリエAで最も大きなインパクトを残している選手のひとりとなっているのは、彼の能力に加えてこういったナポリの戦い方も大きな要因となっている。実際対峙したカラブリアやドゥドゥに抑え込まれるシーンも見られ、個人能力での打開だけでは難しい。
CFがラスパドーリやシメオネの場合は空中戦の強さは無いもののポストプレーやシュート技術の高さ、ゴール前での抜け出しやスピードに長けるため、裏のスペースやセカンド回収を狙ったロングボールとなる。いずれにせよ、オープンな展開となれば彼ら自身も活きやすくなる。

■局面を転換させるプレッシング戦術

組み立てに苦労する場合、オープンな展開に持ち込むことでクヴァラツヘリアやジエリンスキの推進力を活かした打開を図ることのできるナポリ。彼らがオープンな展開に持ち込む手段がロングボール、そしてプレッシングだ。

ナポリのプレッシングにてカバーシャドウを用いてアプローチをかけるのはCFのオシムヘンのみだ。押し込まれた状態でもチームを鼓舞してプレッシングの先陣を切っていく。それでもオシムヘンだけでカバーできない場合が多く、マンツーマン気味に対応していく。これがナポリのプレッシングのベースとなる。

「どの選手に誰がつくか」は毎回固定ではなく、自身の近くの選手に前から合わせていき、後方で帳尻を合わせていく形となっている。
特に中盤は流動的だ。多くの場合左IHのジエリンスキがCBへアプローチをかけるためオシムヘンの高さまで前進していく。その後方、敵の中盤3枚に対しては対応が分かれる

1. ロボツカが敵アンカー、キム・ミンジェが敵右IH
2. ザンボが敵アンカー、ロボツカが敵右IH

プレッシングの嚙み合わせとは、試合や状況によって異なる。例えばCLリヴァプール戦であれば、敵右IHに対して左SBがアプローチをかけ、右WGサラーに対してはCBキム・ミンジェがケアするような場面も見られた。
マンツーマン気味に合わせてロングボールを選択させ回収するのがナポリのプレッシングだ。状況に応じてマークの相手を切り替えていくが、ここがあやふやになる場面も決して少なくない。その場合はゾーン気味に切り替えて前線でのボール奪取からリトリートに変化させていく。詳細を以下で見ていく。

■守備戦術のウィークポイント

守備のウィークポイントは大きく2つだ。

①プレッシングにおけるマンツーマンの齟齬
②撤退守備時の中盤の連携

まずはプレッシング時のマンツーマンの齟齬だ。上述の通りマンツーマン気味に前からアプローチをかけていくが、都度マッチングの相手が異なる。そのため役割の変化についていけずにギャップが生まれてしまうケースも見られる。流動的となるのは中盤であるため、最も多いのは敵IHがフリーとなる形だ。

例えば、
(1) ロボツカが敵のアンカーを見るために前進するものの、キム・ミンジェが前進しきれずに敵右IHを抑える選手が居なくなってしまう

(2) ロボツカが右IH、ザンボがアンカーを抑えるものの、逆サイドのIHに手が回らずにそこにセカンドが落ちるようロングボールを送り込まれる

といった形だ。DFライン手前のケアは課題となる。

そして撤退守備にも課題が残る。特に昨季から課題となっているのは右IHザンボの背後のスペースだ。ザンボは背後のスペースを消す意識が希薄で、高頻度で楔のパスを通されてしまう。右WGポリターノが絞って引いて守備をすれば、サイドに大きなスペースを与え、対応が後手に回ってしまう。その空いたサイドからロングボールを入れることもできる。左SBのマリオ・ルイは小柄であるため、敵の左SB→右WGへ対角のロブパスが送り込まれると対応が難しくなる。

ナポリの撤退守備は効率よく敵の攻撃をからめとれるものではなく、人海戦術で耐え忍ぶものとなっている。DFラインの連携とカバーリングに関しては非常に優れており、守備局面において大きな支えとなっている。

■おわりに

ナポリの爆発的な攻撃力を支える「3本柱」は、「ビルドアップ」、「ロングボール」、「プレッシング」である。優れたビルドアップがベースとなり、相手のプレッシングにより手詰まり状態に陥ったらオシムヘンへのロングボールを選択。加えてプレッシングも利用してオープンな展開に持ち込み、クヴァラツヘリアやジエリンスキの推進力を活かしていく。

ビルドアップに複数パターンを持たせるというよりも、別の戦術を用いて局面を転換し打開できるのがナポリの強さの秘訣だ。

CFオシムヘンが怪我で不在の中でもラスパドーリやシメオネが結果を残し、勝ち点を重ねることができた。万が一中盤のプレイヤーが離脱した際にも控えの選手の活躍で機能性を維持できるか、ウィークポイントを覆い隠して勝ち点を積み重ねていくことができるかがスクデット争いの焦点となる。

今季もナポリから目が離せない。

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とんとんさん、ありがとうございます!

いかがでしたでしょうか。

こちらのnoteでは、今後もとんとんさんにご協力いただきながら、新シーズンも開幕した欧州各国リーグの戦術分析をお送りしていく予定です。

また、次回からは、いよいよ間近に迫ったW杯特集をお送りしていきます!(日本の初戦の対戦相手であるドイツ代表分析、日本vsドイツプレビュー、W杯注目選手の記事、などを予定しております。)よろしければぜひフォローをお願いいたします!

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それではまた!


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