【諸刃の剣4-3-1-2】マルコ・ローゼ率いるドルトムント戦術分析〜前編〜

【諸刃の剣4-3-1-2】マルコ・ローゼ率いるドルトムント戦術分析〜前編〜

FL-UX_Realtime Analytics by. RUN.EDGE Limited.

こんにちは。

すっかり寒くなりましたね。いかがお過ごしでしょうか。

今日はとんとんさんに、今季よりマルコ・ローゼ新監督率いるボルシア・ドルトムントの戦術分析をしていただきましたので、前編・後編の2本連続でお送りします。とんとんさんファンの皆様、お待たせしませした!

================

2021年夏、マルコ・ローゼがドルトムントの監督に就任した。ザルツブルク、ボルシアMGを経て辿り着いたドルトムントにてローゼは4-3-1-2をメインとして戦っている。このシステムは以前監督として率いた2チームでも駆使していたものだ。
4-3-1-2はそのクセの強さもあり、現在それほど一般的に使われているシステムとは言い難い。21-22シーズン序盤の現段階において最もこのシステムを機能させているのはドルトムントであると言えるだろう。
ローゼは起用する選手を固定せず、システムも柔軟に変更するタイプの監督だ。今後は併用、もしくは別のシステムを採用する可能性は大いにあるが、現状クセの強いこの4-3-1-2というシステムが、ドルトムントでいかに機能しているのかを探っていく。

https://twitter.com/Bundesliga_EN/status/1439646046917906434?s=20

■基本布陣

基本布陣 (1)


マルコ・ローゼはメンバーを固定せず、起用する選手や位置を頻繁に入れ替えながら戦う傾向が強い。
GKにはビルドアップ時の判断力に長けシュートストップにも優れるコーベルが起用される。右SBには推進力がありクロスでのアシストが期待できるムニエ、タイミング良い攻撃参加が可能なパスラック。左SBには細かいパス回しがロイスに並んで巧みなゲレイロ、もしくはスピードあるシュルツ。CBには楔の質が非常に高いフンメルスと、同じく楔の意識が強くビルドアップに貢献できるアカンジ、中盤が本職のヴィツェルが起用される。
アンカーにはアジリティとターンの技術に長けるダフード、IHにはポジショニング良く得点も期待できるベリンガム、ドリブルと抜け出しをこなせるレイナ、ブラントが入る。
トップ下は効果的に降りて細かいパス回しに関わり攻撃を活性化させるロイス、2トップにはスピードに長け柔軟にポジションも移動できるマレンやムココ、そして世界でも屈指の万能型ストライカーであるハーランドが起用される。

https://twitter.com/BlackYellow/status/1438903677914394629?s=20

■チームのスタイル
ドルトムントで採用されている4-3-1-2は4-3-3の相手へのプレッシングを行うのに適したシステムとなっている。ドルトムントも高い位置からのプレッシングを機能させており、チームの武器となっている。逆にプレッシングがかからなかった際のプランはまだ固まっておらず、ファーストプレスを抜かれた際に弱みを見せる傾向もある。CLのベジクタシュ戦では4-4-2を採用し、プレッシングを控えてブロックを組んでの守備を行った。
攻撃では中央に人数がかけやすい形となっているため、SBと時折サイドに流れるロイスやFWがブロックを広げつつ中央での細かいパスワークで崩していくスタイルとなっている。

■プレッシング
ドルトムントが採用する4-3-1-2は4-3-3の相手に対するプレッシングを行うのに非常に有効なシステムだ。特に、敗れこそしたもののスーパーカップでのバイエルン戦は敵のビルドアップを破壊し続けた。

※詳しくはバイエルン・ミュンヘン戦術分析記事にて

画像2

ドルトムントの4-3-1-2プレッシングの概要はこうだ。まず2CB+アンカーに対して2トップ+トップ下がプレスをかける。パスの出し先をSBに限定、SBにパスを誘導するとIHが敵アンカー(横方向へのパスコース)をカバーシャドウで消しながらプレスをかける。同じタイミングでアンカーはボールサイドにスライド、逆IHは中央に入り、SBが敵WG、CBもスライドし楔のパスを断ちに行く。非常にシンプルであるが、誘導からボール奪取まで効率良く行うことができる。
2トップ+トップ下という構成は2CB+アンカーに対してマークに付きやすく、誘導した後にやり直しの選択肢を排除することができるため、その後の奪取も思い切りよくプレーすることが可能なのだ。

■4-3-1-2プレッシングの弱み
この4-3-1-2は4-3-3に対するハイプレスに効果的なシステムだ。その一方で明らかな脆さを見せる場面も存在する。それは、ポジションチェンジにより上記の役割がぼやかされた時。つまり、3バック化およびSBへの補佐が入った時であり、「IHを内か外かでいかに惑わすか」が最終的な焦点となる。

2点目


まずはバイエルン戦の2失点目を見ていく。このシーンは一時的にCHのキミッヒがポジションを左後方に下げたことで役割が曖昧になっていた。それまでSBのデイビスにプレスをかけていたIHのベリンガムがキミッヒにプレスをかける形となったのだが、デイビスは
キミッヒの補佐によりポジションをあげることに成功。代わりにグナブリーが内側に絞りマークを外し、2人のワンツーで背後に抜け出してゴールを奪った。通常グナブリーに対してはSBのパスラックがマークについていたが、中に入ることで浮いたグナブリーがデイビス経由でボールを受けることで、マークを外してかつ前を向いた状態でプレーすることが可能となったのだ。
このように役割をぼやかす、SBに補佐をつけることで4-3-1-2のプレッシングをいなすことが可能となる。
このSB補佐や3バック化から悉くプレッシングを外されてしまったのがレヴァークーゼン戦である。4-2-3-1を採用するレヴァークーゼンのキーマンとなったのはCHのデミルバイである。

画像4


まずはSBへの補佐だ。まずロイスの役割は相手のCHを見ることにあるが、2CHの場合対応が遅れてしまう。デミルバイは予めSBに寄った位置を取ることで、前を向いてボールを受けて展開することができる。ベリンガムがデミルバイを切りながら寄せることができればまた違った展開となることも予想される場面だ。
上図のように展開されていくのだが、ここでレヴァークーゼンの選手の特徴にも触れる必要がある。
まずドイツ代表経験もあるデミルバイは左脚のキック精度およびボールコントロールに優れ、状況に応じてポジションを移動してボールを捌くことのできるリーグ屈指のゲームメイカーだ。相方のCHアンドリッヒはデミルバイと適切な距離感を維持してビルドアップの助けとなる、気の利いたプレーのできるプレイヤーだ。
左SBのバッカーは冷静にパスを捌く能力に優れている。左脚のキックは非常に正確で、185cmと大柄だが細かなパスワークも問題なく、アウトサイドキックやハーフスペースに絞ってのプレーもこなすことのできる期待の21歳だ。プレッシングでの奪い所となるSBにこういった配球型の選手がいると、ドルトムントとしては問題となる。
トップ下に入るドイツ期待の星である18歳ヴィルツはアジリティとボールコントロールに優れたプレイヤーで、この試合の先制点もマークした。この試合のドルトムントのアンカーにはヴィツェルが起用されたが、アジリティで凌駕するヴィルツがボールを収めて展開するシーンが何度も見られた。ドリブルが得意な左SHのパウリーニョは内側に移動するポジションチェンジもお手の物である好プレイヤーだが、CFシックやヴィルツがアンカー脇で受けるためにサイドに張ってスペースを作るタスクも全うした。
レヴァークーゼンの選手それぞれの特徴も相まって、ドルトムントのプレスを巧みに回避することができていたのだ。

画像5

次の策が3バックへの変化だ。CHのデミルバイがDFラインに降りることでロイスのマークから逃れることができる。ロイスはデミルバイを諦め、中央に構えるアンドリッヒを抑える。プレスが噛み合わなくなったドルトムントは引くこととなり、役割が不明瞭となる。特に困難に陥るのがIHだ。ベリンガムはSBのバッカーを見るのか、中央のスペースを管理するのかという選択に迫られる。SBのバッカーを見ないとサイドのスペースから安定した配球を許すこととなる。SBのバッカーは配球が上手いうえ、デミルバイがDFラインに降りてきたことでよりサイドでプレーできるCBがサポートに入れるからだ。
中央のスペースを埋めない場合、アンカー脇のヴィルツやシックが入り込んできてしまう。デミルバイから高精度の楔が打ち込まれ、楔の受け手に対してはアンドリッヒのサポートが入る。パウリーニョがSBを釘付けにし、アンカー脇にシックが入る形はロングボールの局面でも利用されていた。

画像6


仮にデミルバイが降りる動きにロイスが呼応してついていった場合はどうなるのか。その場合、ダイアモンド型の中盤の中のスペースが大きく空くこととなる。このスペースを使われて中央で主導権を握られると攻撃はより円滑に進み、守備側のドルトムントは攻撃に制限をかけられずにさらに辛い状態に陥る。ここを埋めるためにIHが絞ればSBを経由して外を使われてしまうのだ。そのため、ロイスによる制限が果たす役割は非常に大きく、リヴァプールにおけるフィルミノくらい重要なものであると言える。

================

いかがでしたでしょうか。

続きは後編でお楽しみください!

また、欧州サッカーでも採用されている映像分析ツールに興味がある、自分でも手持ちの映像を使ってプレー分析をしてみたい、といった方には、手軽に始められるプレー分析アプリFL-UX(フラックス)がおすすめです。

アプリの詳細、無料トライアルお申し込みはこちらのページからお願いいたします。

それではまた!



みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!
オススメありがとうございます!
FL-UX_Realtime Analytics by. RUN.EDGE Limited.
サッカー、バスケなどのスポーツの戦術分析を中心に発信します。 映像分析ツールFL-UX(フラックス)の製品情報は下記サイトから (サッカー)http://fl-ux.run-edge.com (バスケ)https://basketball.fl-ux.run-edge.com/