
【サッカーアナリスト杉崎健さん連載 vol.4】これからのサッカーアナリストに求められるスキルとは
こんにちは!
2月も最終日となりました。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
本日は、プロサッカーアナリスト杉崎健さんによる連載第4弾をお送りします。
今回は、連載第1弾で大変反響の多かった、杉崎さんのキャリアのお話を少し深掘りさせていただいて、これからアナリストを目指したいと考えている学生の皆さんや、既にサッカーの仕事に携わっていてより高いところを目指していきたいと考えている皆さんにとって参考になるような記事を書いていただきました。
新学期まであと1ヶ月。新シーズン・新学期の目標を考える機会も増えるこの時期。皆さんの参考になれば幸いです。
それでは、杉崎さん、お願いいたします!
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当ページへのアクセスありがとうございます。定期的に投稿させていただいているサッカーアナリストの杉崎です。
アナリストに関わる事項やFL-UXをはじめとする映像分析の事項等について、様々な角度からお届けしております。よろしくお願いします。
前回はチーム分析やデータ分析の手法についてお話させていただきました。今回は、質問やメッセージをいただく機会が増えてきた中で多い質問としてある、キャリアやサッカーアナリストに必要なスキルについて深堀りしたいと思います。
これからサッカーアナリストを目指す人や、現在も所属クラブや大学チーム等でアナリストとして活動している方々も、おそらく私がプロ現場で活動していた時と同じ感覚があるかもしれません。
「このままで良いのだろうか」
それは将来のことを指すこともあれば、現在の仕事の中身の話でもあります。自分の仕事の内容やその質は、果たしてチームや選手にどれほど活かせているのか。まだアナリストという役職がサッカー界において定着しきっていないからこそ、起こる「悩み」だと思います。つまり、誰も教えてくれないから正解が分からないのです。
もちろん、自分も同じ経験をしました。プロの現場ですら、プロの監督や選手たちにとって、本当に有益な存在となり得ているのか。もっとできることがあるのではないか。誰か教えて欲しいという感じでした。だからこそ今は、僭越ながらその役割を自分が担えればと、オンラインサロンで認知拡大と養成を試みたり、セミナーを通して啓蒙活動も行っています。
今までのアナリストに求められたスキルと、今のアナリストもしくはこれからのアナリストに求められるものは変わります。では、志している皆さんにとって、以下のものの中で足りないものは何でしょうか?それを紐解いていきましょう。
映像処理能力
最も求められるのは、おそらく今までとこれからも変わらないでしょう。映像処理です。編集、加工、共有におけるスペシャリストでなければなりません。ソフトウェアを使いこなすことも同意ですが、いとも簡単に動画編集をしたり、短時間で仕上げる効率性を極めていたり、監督などの意向を見事に再現するアイディアなり。変わっていくのは、それを扱うソフトウェアの高度化でしょうか。FL-UXもそうですが、常に進化を続けます。新しい機能やUIに即座に反応できるようにアンテナを張っておくことも必要です。キャリアという意味では、こうしたソフトウェア開発会社等への道も1つだと思います。サッカーアナリストは常にクラブ等に所属していないといけない理由もないですし、映像処理を担う会社に所属してスキルを身につけるのも有効でしょう。
データ処理能力
未だにサッカーアナリスト=データアナリストという解釈があるのは、変えていきたい部分です。確かにアナリストにとってデータを扱えた方が良いです。しかし、そのスペシャリストはデータサイエンティストだと思っています。とはいえ、アナリストもデータ処理できた方が良いでしょう。サッカーにおけるデータは数多くなってきていますが、扱える人は少ないです。大事なのはデータを扱うことではなく、サッカーを解釈した上で扱うこと。データから何かを言おうとして大抵失敗するのは、自分の過去の経験からも容易に想像できます。数字の羅列をグラフ化できる、可視化できることが扱えることとはなりません。現場にとっていかに使えるものとして変換できるか、選手らにとっていかに有益な情報を説得材料として付加できるかの方が大事です。これは、一個人としてブログ等で発信していくこともスキルアップにはなると思います。そこで反応してくれる人がいればなお良しですが、投稿をアップすることだけであれば学生でも可能なはずです。アウトプットすることも大事ですしね。
プログラミング(アルゴリズム)
サッカーアナリストを目指している人にとって、本当に必要かと言われると難しい分野ですが、個人的に学んでいて良かった部類の1つです。それがプログラミングです。こう聞くと、C言語とかJavaとかPythonとかは私は無理だと思われるかもしれません。学ばなくてもサッカーアナリストにはなれますのでご安心を。ただこれを学んでいると何が良いのか。プログラミングを学ぼうとすると、必ずと言っていいほど出てくる言葉は「アルゴリズム」です。これがアナリストにとって有効な思考となります。簡単に言えば、問題を解決するための最適解を導き出す手法みたいな感じですね。プログラミングは、何かの課題やお題に対して、様々なコードなどを利用して解を導き出すために使われることが多いです。サッカーアナリストとしても、実作業を行っていく上で、効率的に作業もしていかないといけませんし、相手を分析する時にも最適解をズバッと言えた方が良いですね。そのための思考回路を、この分野で学べると思っていますし、自分も大学時代にこれを学んでいたので、学んでいて損はないと言えます。
物理、力学
この辺の言葉を聞くと、「あぁ、もう嫌だ」という人がいることも分かります。ただやはり、サッカーは人が行いますし、地球で行います。重力がある中で行いますし、ボールは丸くて3次元です。ある程度の物理の法則や、人の力が加わることで変化する力学の観点を持っている人は強いと思います。サッカーを分析する人=サッカーアナリストだと思っているので、上記を理解している方が得ですね。ものすごい深い研究までする必要はありませんが、球体に対していかなる力を加えるとどんな結果になるのか。その思考回路があると論理的に処理できたり、様々な視点を持つことができると思います。「左足のアウトサイドでボールの右下を強く蹴ったらどんな回転になりますか?」の解答を論理的にでき得る思考を持っていた方が良いということです。
読心術、心理学
ここまでをお読みの方であれば気付きますね。「結局、典型的な理系かよ」と。これからのアナリストは、そうとも限らないと思っています。その筆頭になりそうなのがこの分野です。いわゆる「メンタル」ですね。アナリストはサッカーを分析しますが、人も分析するケースが非常に多いです。論理的、数字的に分析できても、人を見れなければ効果が薄れるのがスポーツです。顔やジェスチャー等で心理を読み解いたり、会話の仕方でその人の性格や狙いを感じ取れる能力がある人は、アナリストに向いていると思いますし、これも学問的に学んでいて損はないと思える分野です。私はほんの少しだけ触れた程度ですが、もっと若いうちに学んでおけば良かったと思っているカテゴリーですね。
プレゼンテーション
これは逆に必須とも言えるかもしれません。人前で話すというと誰でもできそうですが、人に伝えることは非常に難しく、かつそれを数十人に対して一斉にとなると緊張感も出てきます。キャリアという意味でも、どんな企業でも経験はできるのではないかと思います。まずは自己PRから入るはずです。自分をプレゼンテーションできなければ企業にすら入れないですしね。学生のうちでもできますね。自分が作ったものを誰かに見てもらうとか、プレゼンすることは飛び込めばできるでしょうし、実際にオンラインサロン内でも何人もいます。それを実践している人たちは一様にして、どんどん成長していきます。話し方を変えてみたり、着眼点を変えてみたり、動画の作り方を工夫してみたりと。プレゼンの質を上げるには、サッカーがうまくなるための手法と変わりません。トレーニングが重要なのです。トライ・アンド・エラーを繰り返しながら、より良いものを作り、明確に聞き手に伝わるような話し方も含めての「作品」を完成させる。これができる人は、サッカーアナリストとして優秀な部類に入ると思います。
これまでのアナリストは、どちらかと言うと「作業屋」でした。相手を分析し、映像を何試合も見て、それらから最適な映像集を作る。この作業工程と質が伴っていれば、ある程度こなせていたと思います。しかしこれからは、それは当たり前で、加えて上記に挙げてきたようなスキルを高水準で持っている人がさらに高みに行けると思いますし、求められる要求がどんどん高くなっていくのではと想像しています。学ぶべきことは多いかもしれませんが、その分、やりがいや専門性、特異性があり、何よりこの分野は世界一を目指せると本気で思っています。自分も学びを通して成長しないといけないですね。
「同志」が増えることも心待ちにしていますので、ぜひ目指している人はステップアップしていってください。
今回は分析とかFL-UXのお話ではなく、キャリアやスキルに関するお話をさせていただきました。最後までお付き合いいただきありがとうございます。次回もまたよろしくお願いします。
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杉崎さん、ありがとうございました!
アルゴリズムや物理、力学など理系的な知識から、「人」を見るための心理学やメンタル的な部分を読み解く力、そしてプレゼンテーション力。非常に幅広いスキルが必要とされるということですね。大変勉強になりました。
この記事を読んで、自分もアナリストという職種にチャレンジしてみたい、また、アナリストとしての知識やスキルをより本格的に、体系的に学びたいと思った方はぜひ、杉崎さんが運営されているオンラインサロンもチェックしてみてください。
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それではまた!