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「鳥の眼」で観る欧州サッカー〜【アーセナル4-2-3-1戦術分析】チェルシー4-0撃破の要点とは?〜
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「鳥の眼」で観る欧州サッカー〜【アーセナル4-2-3-1戦術分析】チェルシー4-0撃破の要点とは?〜

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こんばんは!
FL-UXマーケティングチームです。

さて、本日は、とんとんさんのご寄稿でお送りしております『「鳥の眼」で観る欧州サッカー』シリーズをお送りさせていただきます!
本日着目するのは、富安選手も活躍するアーセナルです。

それでは早速、とんとんさん、お願いいたします!

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今夏マンチェスター・シティからジンチェンコ&ジェズスを獲得したアーセナルと、昨季リーグ3位のチェルシーとで行われたプレシーズンマッチは、アーセナルが4-0で快勝するという予想のつかない結果となった。

この強烈なインパクトを残した試合は、結果だけでなく攻守共に優れたパフォーマンスが発揮された、内容の伴うものとなった。

このチェルシー戦から、アーセナルの戦術的特徴を分析する。

プレッシング戦術

この試合で最もチェルシーを苦しめたのは、アーセナルのプレッシングである。
4-2-3-1を採用したチェルシーは、ほとんどポジションチェンジを交えることなくビルドアップに臨んだ。対するアーセナルは4-4-2もしくは4-4-1-1で高い位置からビルドアップ阻害のプレッシングを敢行した。彼らのプレッシングはどの選手も連動した機能性の高いものであったが、特に目立ったのがマンチェスター・シティから加入したCFのジェズスであった。
ジェズスはマンチェスター・シティ所属時から、レアル・マドリードをも苦しめる優れたプレッシングを披露していた。

※詳しくは別記事『レアル・マドリードvsマンチェスター・シティに見るプレッシング戦術の差異』を参照

ジェズスから始まるプレッシングは、必ずと言って良いほど攻撃方向の制限に成功する。

ビルドアップの起点となるCBがボールを持つ際のジェズスの初期ポジションは、CHへのパスコースを遮断するような位置となる。ボールがSBに渡るタイミングで自身のプレスの到達点とパスの流れを予測し、CB間を切るようにポジションを移して制限をかけるのが彼の得意技だ。
ジェズスがCB間の遮断に入る際、ジョルジーニョとギャラガーの2CHのマークは、トップ下のウーデゴーアとCHのシャカが1列上がって対応する。スライドに余裕がある場合はSHが絞ってケアするケースも見られた。
こうしてボールをサイドに追い込むと、SHによるボールホルダー(敵SB)へのプレスと、SBによる縦のケアでボール奪取を図った。
右SBに入ったベン・ホワイトは特に積極的にボール奪取のため前進守備を敢行した。彼の背後に位置するCBサリバがサイドへのスライドとカバーを完璧にこなしたため、後ろを憂う必要のないホワイトの前進守備がより効果的なものになった。DFラインのはっきりとしたスライドは、チームとしての狙い所が定まっていないと難しい。逆に、狙いが定まっていてもスライドが弱ければ機能しない。この両方が噛み合った点も、チェルシーを苦しめるプレスを敢行することに成功した要因といえる。
ホワイトは、ハーフスペースに絞って降りるスターリングに対して、CH脇まで強気に前進してマークについた。この動きに絡めてCFのヴェルナーが入れ替わるようにサイドに流れる動きで打開を図るチェルシーであったが、これに対してもサリバとガブリエルのスライドでカバー。3-2-4-1のような形で対応して見せた。

守備面の課題

アーセナルの守備の課題、逆に言えばチェルシーが上手く突いた隙を見ていく。
この試合、アーセナルのプレッシングは非常に高い位置から開始された。そのためチェルシーは失点シーンも含め、拙い奪われ方をするシーンが少なくなかった。広くポジションをとった状態でボールを失えば、不利な状態でネガティブ・トランジションに臨むこととなるのは必然だ。
それでもチェルシーは先述のヴェルナーとスターリングの入れ替わりの他にも的確な攻撃でチャンスを作るシーンが見られた。
まず、アーセナルのプレッシングの粗を突いた攻撃だ。マルティネッリやシャカが単独気味に行うプレッシングに関しては確実に回避し、ゴール前まで進出することに成功した。特にアーセナルにとってこの事象はやや低めの位置からのプレッシングで起こりやすく、課題の一つとも言える。

次に、チェルシーの3バックでのビルドアップだ。チェルシーは後半、3バックに変更してビルドアップ・前進を行った。この修正に対してアーセナルは有効な手立てを取ることができなかった。プレッシングがはまらずに2トップの脇から前進を許し、シャカとトーマスがチェルシーのCHとトップ下に挟みこまれた。両方を見る事はできないため、空いた選手を使われて前進を許すこととなった。2点リードの後半、無理にプレスを行う必要は無いが、引いて守るというよりも押し込まれた状態となり、ピンチは非常に多くなった。
つまり、「押し込まれた状態から全体を押し上げるフェーズ」、そして「引いた状態での守備」に課題が見られるということである。
プレッシング自体も機能はしていたが、逆サイドにボールがある際のジンチェンコの位置取りがトーマスの横と比較的高く、仮にホワイトのサイドが突破された際はファーでクロスを合わせられる可能性が十分に考えられる。ここを割り切って中央のセカンド回収に集中するか否かも検討事項と言えるだろう。

配置バランスを活かした攻撃

アーセナルの攻撃においてまず注目すべきポイントは配置バランスの良さだ。ベースは4-2-3-1となるが、ジンチェンコが周囲の配置を見て自在にポジションを調整し、多くの場合2CB+右SBホワイトの3バックのような形をとった。中盤はトーマスがアンカー、右ハーフスペースにトップ下のウーデゴーア、左ハーフスペースにややポジションをあげたシャカが入る逆三角形気味となる。SHのサカとマルティネッリは幅を取り、3-3-3+1(ジンチェンコ)のような陣形が出来上がる。適度にポジションチェンジを交えつつ、サイドからも中央からも攻撃が可能な陣形だ。

この陣形について詳しく述べる前に、アーセナルのビルドアップにおける配球の特徴を見ていく。
アーセナルのビルドアップにおいて効果的なものとなっているのが、DF陣からCHトーマスへつけるパスだ。
トーマスはシャカと同様に相手の頭越しに出す柔らかなロブパスが上手い。相手のカバーシャドウを無効化するこのパスは、攻撃の選択肢を大きく広げる。
勿論トーマスにボールを預けるということはこのパスで攻撃を展開できるという意味合いもあるが、それ以上の効果を発揮している部分がある。
それは3人目の選手が活用しやすくなるという点と、敵の守備ブロックを動かしギャップを作ることができるという点だ。
アーセナルのようにパスをつないで前進するチームにとってのビルドアップは、敵の1列目のプレスラインを確実に通過する必要がある。
そのためにはプレスの網にかからないように複数のパスコースが確保されている必要がある。

トーマスにパスをつけるということは、このパスコースを大きく増やすことを意味する。
例えば、CB→SB間のパスコースが切られていたとしても、トーマスを介することでCB→トーマス→SBという流れでボールをSBに送り届けることができる。
こういった意識の元、ボールを回すことのできるチームは巧みに前進することが可能となる。
トーマスをマークしようと相手の守備ブロックの一角が動けば、その動きで空いたスペースへボールを送り込んで前進することができるため、連動した攻撃も可能となるのだ。

ここで改めて陣形に話を戻す。アーセナルはホワイトとジンチェンコの柔軟なポジショニングにより、4バックと3バックを使い分けることが可能となるため、様々な角度からCHにボールをつけることができる。中盤は逆三角形の形となり、ウーデゴーアが右のハーフスペースで自由を謳歌する。彼が自由を得られるのは右SHに入るサカの働きが大きい。サカはサイドに張ったままでいることが多く、敵SBをサイドに釘付けにし、スペースメイクをすることでウーデゴーアがハーフスペースもしくはサカとホワイトの間に流れてボールを受けることができるようになる。これはウーデゴーアがレアル・ソシエダ在籍時代にも得意としていたプレーであり、アーセナルでも同様に用いられている。高い位置まで前進すると、ホワイトがハーフスペースに絞ってボランチのようなポジションをとりパス交換に参加、ネガティブ・トランジションでトーマスと共に防波堤を築いた。
ウーデゴーアが右に入るため、中央で彼とジェズスが被ることがなくなり、ジェズスが降りてボールを受けやすい状態となっている。的確に顔を出しボールを捌くことのできるジェズスの特徴も遺憾なく発揮される形ということだ。サカ、ウーデゴーア、ジェズスがそれぞれの持ち場で顔を出して楔のパスを引き出していく。
左IHに入るシャカは、機動力こそないもののキープ力とパス技術を活かしてパスの中継役として機能する。左SHのマルティネッリはボールをキープして溜めを作ることができ、ジンチェンコは世界でも屈指のポジショニング能力を誇るSBであるため、シャカとマルティネッリのポジションを見て高い位置、アンカー脇、チャンネル侵入の選択肢から的確に状況を見極めて攻撃に加わることができる。この3人による連携が左サイド攻撃の肝である。

※詳しくはジンチェンコのプレー分析記事を参照

こうして前進を果たしたのち、ファイナルサードでも細かな連携での崩しが多く見られた。また逆サイド大外への対角のロブパスが効果的に利用されていた。

上の得点シーンはロブパスではないが、幅をとる選手を確保することで生まれている。
細かい崩しに加えて大外(ロブ)パスを利用できるとなれば、攻撃の幅は格段に広がる。サイドで幅をとる役目を担うサカ、そしてマルティネッリとジンチェンコの連係は今後もカギになりそうだ。

おわりに

この試合におけるアーセナルは課題も見えるものの、内容・結果共に充実したものであり、新シーズンに期待が持てるものであった。敵を苦しめる前線からのプレッシングと的確な配置バランスを活かした攻撃はこのチームの大きな武器であり、魅力である。今夏加入したジェズス、ジンチェンコが躍動しており、補強の成果も存分に見られた。
昨シーズンは序盤で大きくつまずきながらも5位フィニッシュ。上位チームと戦う上でも先述の武器は注目となるが、大きな消耗を伴うものであるため、必ず課題である「引いて守る」シーンが訪れる。そこで安定した守備をみせることも順位を上げていくうえで必要になっていくはずだ。実際にこの試合も後半は押し込まれる時間が長くなっており、CLへの復帰は簡単なものではないことを示唆している。
それでも期待の膨らむ試合を見せたアーセナルの成長と魅力的なパフォーマンスに期待したい。

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とんとんさん、ありがとうございました!

いかがでしたでしょうか。

こちらのnoteでは、今後もとんとんさんにご協力いただきながら、新シーズンも間近に迫る欧州各国リーグの戦術分析をお送りしていく予定です。よろしければぜひフォローをお願いいたします。
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それではまた!


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