
【鳥の眼で観る欧州CL】【準決勝】R・マドリードを破ったシティ。「最大の要因」と戦術的ポイントとは?
こんばんは!
FL-UXマーケティングチームです。
本日から6月ですね!皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
さて、本日もとんとんさんによる「鳥の目で観る欧州CL」特集をお送りしていきます。
今回は、先月行われ、マンチェスター・シティの決勝進出という結果で幕を閉じた準決勝、2ndレグを分析していただきました!
シティvsインテルの決勝戦に向けて、シティの戦術を振り返りましょう。
(シティvsレアル・マドリーの1stレグはこちらからお読みいただけます。)
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CL屈指の好カードとなった準決勝マンチェスター・シティvsレアル・マドリード。1stレグは1-1のドローに終わったものの、2ndレグはホームのマンチェスター・シティが4-0と圧勝した。
シティが優勢であったとはいえ、1stレグを1-1の五分で終えた両チーム。レアル・マドリードが世界屈指の実力を持つクラブであることに疑う余地などまるでない、ではなぜ2ndレグではこのような差が生まれることとなったのか?
マンチェスター・シティが1stレグから見せた変化、継続したもの、勝利の要因を振り返っていく。
■シティのプレッシング構造

2ndレグのシティにおいて目立ったのがプレッシングだ。このプレッシングでマドリーの攻撃を完封するだけでなく得点まであげてみせた。
システムで見ると、マドリーの4-3-3(4-2-3-1)に合わせた3-4-1-2のような形だ。
デブルイネがアンカーのクロース、ハーランドが左CBアラバを抑えた中で、グリーリッシュがカルバハルを切りながらミリトンにプレスをかけるのは約束事であり、徹底されていた。カルバハルに対しては左SBアカンジが大きく前進し、シウバは左SBにプレスをかけられるよう準備しつつ絞る。マドリーのゴールキックの局面では、後半のセーフティリードの状況であっても必ずこのプレッシングが実行されることとなった。
マンツーマン気味にプレッシングを受けたマドリーがロングボールを蹴る場合、回収の仕組みができておらず、シティDF陣に悉く弾き返された。回収の仕組みだけでなく、体格差でもシティが圧倒していた。
圧倒的なプレス回避力を持つマドリーでも、シティのプレスはほとんど回避できなかった。
繋ぎの意識が災いし、2点目、4点目がプレッシングから生まれることとなった。2点目はプレスを回避しようとカマヴィンガが中に絞ったことで、奪われた際に陣形が大きく崩れた状態となった。4点目はプレスバックからの得点であり、シティのプレスはマドリーに余裕を全く与えなかった。
■ネガティブ・トランジション

ネガティブ・トランジションが整備され、被カウンターでのピンチが減った今シーズンのシティ。この日は特に被カウンターのリスク管理が徹底されていた。シティの攻撃時、ウォーカーを中心に常に後方のメンバーが手振りを交えてマークの確認を行っていた。マドリーを押し込むとアカンジがロドリゴ、ディアスがベンゼマ、ウォーカーがヴィニシウスにアプローチできるポジションを取り、ロドリがモドリッチ、ストーンズはDFライン手前のプロテクトを行うよう調整されていた。当然パスを回すためにはアプローチを受けないよう、上記のマドリーの前線の選手から離れた位置でプレーする必要がある。そのため、マークするのはボールがアタッキングサードやサイド深い位置に入り、自分たちがパス回しに関与する可能性が低くなったタイミングだ。ロドリゴが低い位置まで守備に戻れば、その分アカンジは前進できる。その際、ストーンズが低めの位置に戻り、DFライン手前のプロテクトと数的優位の確保を行うといった形の連携が常に行われた。特にマドリーは前線に人数を残してカウンターにつなげることも多いため、この試合ではより神経質にリスク管理が行われた。ストーンズがあがるタイミングではIHが低めの位置をとるなど、前線のメンバーもバランスを考慮し、奪われたら相手の選択肢を削ぎつつ素早く奪還に走った。こういった全体でのリスク管理は、マドリーのロングボールがなかなか収まることがなかった要因でもある。
■1stレグに残された疑問の答え合わせ

シティがボールを保持する局面においては1stレグと同じ展開となった。SHとSBの間のスペースを利用することでバルベルデとクロースに過剰なスライドを強いる。カバーのためにモドリッチが中盤に加わると、ロドリとストーンズがフリーになるという仕組みだ。
※詳細な仕組みは1stレグ
https://note.fl-ux.run-edge.com/n/n268be4e02e05
1stレグの記事の最後の通り、1stレグにはひとつの疑問が残されることとなった。
1stレグの時点でレアル・マドリードの弱みは既に晒されていた。チャンネルの守備が明らかに整備されていない。しかしシティはチャンネルへの攻撃的アプローチをせず、誰も侵入していくことはなかった。
ペップがチャンネル攻撃のアプローチをとらなかったのは単なるミスなのか、それとも別の理由があったのか?
答えは後者であった。別の理由とは、リスク管理である。チャンネルを狙えばおのずと攻撃の展開は促進される。シュートの本数も増える可能性があるが、クロスが弾かれる等で攻撃の終了回数が増えることを意味する。攻撃の終了回数が増えれば、マドリーの攻撃回数が増える。得意のカウンターも脅威となるだろう。
以上の点から、アウェイで余計なリスクを負わず最低限の結果を得るために、試合を落ち着かせるための攻撃のアプローチであった。今回ネガティブ・トランジションで密な連携をとることによるリスク管理は、このチャンネル攻撃のためであったとも考えられる。
2ndレグにおいてもIHがチャンネルではなくWG手前のスペースに流れることはあった。しかしそれはマドリーのプレスを低リスクで回避するための策として利用することがほとんどであった。

この試合、敵SHとSBの間は基本的にWGのグリーリッシュとシウバが使うこととなった。その分IHはチャンネルに抜ける役割を担う。IHがチャンネルに抜ければ、敵はリアクションを取る。SBが引く、CHがついていく等だ。それに応じてWGの2人はチャンネルに入るIHを使う、もしくは彼らを餌に敵の隙間を縫うようにドリブルコースを選定していった。1vs1を仕掛けるのではなく、敵陣の隙間にドリブルをすることで、敵の陣形は崩れる。そうしてシティの攻撃は形作られた。
先制点もチャンネルを突いたものだ。ストーンズとシウバが入れ替わりでチャンネルに侵入することで、マークの受け渡しを大きく乱し、シウバが完全にフリーの状態でゴールに蹴り込んで見せた。
■安定した試合運びを見せた後半戦
後半戦のシティはミドルゾーンにブロックを築いた。シティのミドルゾーンでの守備ブロックはさほど堅牢ではない。そのためマドリーもパスを繋いで前進していくシーンが見られた。特にSB、IH、WGのサイドの三角形での侵入はお手本のようであった。
この守備ブロックにおいてシティがマドリーよりも優れていた部分は、デブルイネの位置取りだ。彼は中盤ラインの中央手前に立ち、マドリーの中盤の間でのパスを制限して見せた。これは左右に振られる危険性が減り、守りやすくなるという大きな効果を持つ。加えて彼は、カウンターで脅威を与える存在となり続けた。
彼は低い位置でボールを受けても、推進力あるドリブルと鋭いアーリークロスで一気にゴールに迫ることができる。さらには最前線にハーランドが構えているため、2人でのカウンターも驚異的な攻撃力を発揮する。
リスク管理としてIHのチャンネルランは後半利用せず、ゆったりと中盤でボールを回して時間を使った。セットプレーで追加点を挙げ、マフレズ、アルバレス、フォーデンと前線にフレッシュな選手を次々と送り込むと、最終盤ではプレッシングから4点目のゴールを決めた。特にリスク管理の部分で、1stレグからのシティの戦い方は完璧にマネジメントされたものであった。
昨季王者のマドリーも見せ場を作ったものの、それを上回ったシティ。悲願の戴冠が現実味を帯びてきた。
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