
「鳥の眼」で観るW杯2022〜【W杯初戦】ドイツ代表とはどんなチーム?狙うべき6つのポイントとは?〜
こんばんは!
FL-UXマーケティングチームです。
いよいよサッカーW杯カタール大会の開幕が近づいてきましたね。心待ちにしている方も多いのではないでしょうか。
さて、本日は、そんなW杯で日本が初戦で対戦するドイツ代表のチームを徹底分析しようということで、いつも「鳥の眼」シリーズでお世話になっているとんとんさんにご協力いただき、ドイツ代表チームの分析を行っていただきました。早速ご覧ください。
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2022カタールW杯。日本はドイツ、スペイン、コスタリカという非常に厳しいグループEに入った。
ドイツ、スペインがグループリーグを突破するというのが大方の予想であるが、日本が突破を果たすためには何としても初戦を終えた時点で勝ち点を獲得しておきたいところだ。
日本の初戦の相手はドイツ代表。多くの選手がバイエルン・ミュンヘンをはじめとしたビッグクラブに所属する、押しも押されもせぬ強豪だ。
では、そのドイツは一体どんなサッカーをするのか、そして日本に付け入る隙はあるのか、どう戦うべきなのかという点にフォーカスしていく。
◆基本布陣

基本布陣は4-2-3-1だ。GKにはセービング力が高くパス技術にも長けたノイアーもしくはテア・シュテーゲン。
CBには万能型のリュディガーと、パワーと楔のパスの上手さを併せ持つシュローターベックもしくはズーレ。右SBに高さがあり3バックの一角にも入れるクロスターマン。左SBには高いクロス精度を誇るラウムが起用される。
CHはチームの心臓であるキミッヒと、パス技術が高く高い位置でも仕事のできるギュンドアンが入る。2列目は最も人材が豊富で、試合によって起用選手を変えてくるだろう。
右サイドに背後への抜け出しでドイツ代表の攻撃に深さとスペースを与える陰のキーマンであるホフマン、もしくは圧倒的なスピードと両脚のシュート力を誇るグナブリーが入る。
トップ下にはプレッシングを司りスペースを自在に創出・侵入するミュラー、もしくはキープ力と万能性が持ち味である期待の19歳ムシアラが起用される。
左には中央に絞ることでプレーの幅をぐっと広げたスピードスター、サネが入る。
CFはヴェルナーが怪我により欠場を余儀なくされたこともあり、長身でキープ力とシュート技術に長けたハフェルツが起用される。
◆ドイツ代表はどんなチーム?
最も重要とされるW杯初戦の対戦相手ドイツ。彼らは一体どういうチームなのか?
彼らの強みを3つ挙げるとすれば以下だ。
①世界最高のプレッシング戦術
②スピードとテクニックに長けたアタッカー陣
③パスサッカーを支える流麗なビルドアップ
🇩🇪 Timo at the double! ⚽️⚽️#NationsLeague | @DFB_Team_EN pic.twitter.com/jb3DDWGvT2
— UEFA EURO 2024 (@EURO2024) June 17, 2022
🇩🇪 Kai Havertz from range... 🤩@kaihavertz29 | @DFB_Team_EN | #NationsLeague pic.twitter.com/Bgxpo8DUYP
— UEFA EURO 2024 (@EURO2024) October 3, 2022
4-2-3-1を採用するドイツ代表最大の特徴はハイプレスだ。ボールを奪われると即座に奪還を目指して激しい勢いでボールに群がり、刈り取る。
仮にボールを奪えなかった場合でも、相手のバックパスに合わせて全体を押し上げてプレスをかけ、前進を許さない。
監督は19-20シーズンにバイエルン・ミュンヘンを率い、その圧倒的なプレッシング戦術でCL王者となったハンジ・フリックが務める。
サネ、グナブリー、ムシアラ、ミュラー、ハフェルツ、といったアタッカー陣はスピードとテクニックに優れるうえプレッシングという守備の面でも多大な貢献を見せる。世界屈指のタレント軍団である。最年少17歳でメンバーに選出されたムココもプレッシングに優れたプレイヤーである。
攻撃においてはキミッヒを中心にゆったりとボールを回して攻める、いわゆるパスサッカーだ。圧倒的なスピードを誇る前線の選手が相手の中盤の隙間でボールを呼び込み、細かなパスと連携でゴールに迫っていく。4バックと3バックを自在に変化させ、攻撃時は3-4-2-1に変化するケースが多い。
◆日本はどうなると厳しい?
🇩🇪 This link-up 🤤 Musiala 🤝 Werner ⚽@DFB_Team_EN | @JamalMusiala | @TimoWerner pic.twitter.com/HVccqUwQRN
— UEFA EURO 2024 (@EURO2024) August 10, 2022
ドイツは個のクオリティ、チームの完成度共に非常に高いチームだ。優勝候補にも挙げられるチームであり、当然日本をも上回っている。特にプレッシングの鋭さは世界トップであり、日本がボール保持にこだわるようであればひとたまりもなくショートカウンターを浴びてしまうだろう。
かといって屈強なドイツCB陣に対してロングボールを収めるのも難しい。自陣に引いて守る場合、ドイツは3バックへの変化も見せて攻撃してくるだろう。日本は3バックに対する守備対応を苦手としているうえ、ドイツの崩しはパターンも豊富だ。シュローターベックやズーレ等CB陣の楔の質が高く、ムシアラやサネ等アタッカー陣は狭いエリアでも難なくプレーするテクニックとスピードを兼ね備える。左のラウムからは質の高いクロスが供給され、高さがありプレーの幅も広いハフェルツやミュラーがゴールを脅かす。
🇩🇪 Ter Stegen with a huge save to deny Sterling ❌🧤#NationsLeague | @DFB_Team_EN pic.twitter.com/FF8ot2Ockk
— UEFA EURO 2024 (@EURO2024) October 5, 2022
GKのノイアー、シュテーゲンはセービングだけでなく足元の技術に長けたプレイヤーだ。そのため前からプレッシングをかけた場合、高さのあるミュラーやハフェルツにピンポイントでロブパスを送り込まれることも懸念される。プレスがいなされればスピードあるアタッカーによる速攻を浴びるだろう。アタッカー陣は流動的であり、高さやスピードのミスマッチが必ず起きる。
このように、複数の攻め筋を高水準で実行し試合を運ぶことができるのがドイツ代表である。
◆日本代表が狙うべき6つのポイント
強豪ドイツにも付け入る隙がある。狙うべきポイントは以下の6つだ。
1. キミッヒ依存の強いビルドアップ
2. CB陣の弱点
3. 被カウンター対応
4. プレッシングの弱まる後半戦
5. トップ下ハフェルツの守備
6. ブロック守備の脆さ
1.キミッヒ依存の強いビルドアップ
ドイツのビルドアップは自在に形を変化させる。3バックにも4バックにも変化することができるが、そのキーを担うのはCHのキミッヒだ。彼のポジショニングがドイツ代表のビルドアップの生命線となる。つまり、キミッヒを抑えるだけでもドイツの組み立ての機能性をガクっと落とすことができる。
さらに(長身の選手の少ない日本が相手であれば脅威になりうるが)、ロングボール戦術にはさほど優れていない。長いボールで局面の打開が図れない点は、彼らの優勝を難しくする要因となりうる部分だ。前線は比較的小柄な選手が多く、現状ホフマンの抜け出し以外に手札がない状態だ。
🇩🇪 Jonas Hofmann has scored four goals in seven starts for Germany ⚽️@DFB_Team_EN | #NationsLeague pic.twitter.com/Zp8uLWAY4N
— UEFA EURO 2024 (@EURO2024) June 14, 2022
2.CB陣の弱点
キミッヒの出来に関わらずCBもビルドアップに関与し、楔や持ち出しを繰り返す。リュディガーは安定しているものの、ズーレとシュローターベックには明らかな弱点がある。
まずズーレに関しては小回りが全く利かず、ポジションの微調整をほとんど見せない。加えて切り替えも遅く、プレッシングとショートカウンターの狙いどころになりうる。
シュローターベックは積極的な楔が持ち味だが、その積極性が仇となりリスクの高い状態でも楔を打ち込み危険な奪われ方をするシーンが少なくない。彼らのミスを誘発して狙うというのは有効な手となるだろう。
3.被カウンター対応
カウンターでの対応にも課題が残る。両SBが高い位置をとる場面も少なくない中、2CHとズーレはカウンターの芽となる選手を予めケアしたり、上がった選手のカバーリングに入ったりする動きが少ない。そのため危険な形でカウンターを受けやすい状態となっている。
4.プレッシングの弱まる後半戦
前半戦は圧倒的なプレッシングの前にほとんどのチームが沈黙するが、後半戦はプレスの勢いが弱まる。ドイツも攻撃のペースが早く落ち着きのないものとなっていくためカウンターのチャンスも増えていく。後半勝負のためいかに前半戦を我慢できるかが重要となる。
5.トップ下ハフェルツの守備
トップ下を担う選手の中でもミュラー、ムシアラと比べてハフェルツは守備能力が高くない。ドイツのプレッシングにおいて中央エリアの遮断というのは重要になっており、ここが遮断できていないとプレッシングが機能しない。トップ下ハフェルツの守備はネーションズリーグ・イングランド戦の後半に3失点を喫した原因ともなった。プレッシングの弱まる後半のハフェルツ周辺エリアは攻略ポイントとなりうる。
6.ブロック守備の脆さ
🏴🔁 Super subs combine... 🔥
— UEFA EURO 2024 (@EURO2024) September 30, 2022
Bukayo Saka 🤝 Mason Mount@England | #NationsLeague pic.twitter.com/hsf8G1GUVr
ドイツはプレッシングおよび、ブロック守備からプレッシングに転じるのが上手いが、ブロック守備自体の強度は低い。特にCHはゴレツカ、キミッヒ、ギュンドアンの3人だけであるうえに守備に長けた選手がおらず、フィルターとして心許ない。SHも比較的高い位置をとるためCHの脇、SBとSHの間のスペースが空きやすく、後半三苫が躍動できるスペースが残されている。
◆日本がとるべき策は
破壊的なプレッシングを誇るドイツを前に、前半のうちにボール保持にこだわるようなことがあれば命取りとなるだろう。
ドイツの弱点を狙っていく積極的な戦い方を選択するのであれば前からのプレッシングが有効だ。GKまでボールを押し戻しつつキーマンとなるキミッヒにマンマークをつける、苦手な3バックに変形される前に圧力を強める等で有利な展開に持ち込み、ズーレやシュローターベックの楔のミスを狙っていく。
前半を無失点に抑え、後半戦で前がかりになるドイツに対してはカウンターを狙いやすくなる。加えてプレッシングが弱まり、得点のためにハフェルツを中央に残すドイツの戦い方により、日本がボールを保持できる時間が増えた段階で切り札の三苫を投入する、という展開が最も望ましい。
ライン間を狙うアタッカーが豊富なドイツに対し、いかにプレッシングをかけつつDFライン手前をプロテクトするかというのは非常に難しいテーマだ。3バックの採用、パスコースを切るようにプレッシングをかけるといったオプションがないことが悔やまれる。
特に3バックが採用できれば、ネーションズリーグでドイツに1-0で勝利したハンガリーの戦い方を取り入れることが有効な手立てとなっただろう。
ハンガリーは5-2-3でミドルゾーンに守備ブロックを敷く戦術を採用。3トップで中央をプロテクトすることでCBから2列目への楔を遮断。加えてCHが前進することでキミッヒやギュンドアンにも全く仕事をさせなかった。前線5枚による楔の遮断に加えて3バックが2列目を抑え込み、サイドへのロングボールをWBがケアすることで、ドイツの攻撃の停滞とスムーズなカウンター攻撃へとつなげていた。
ドイツ代表にはロングボール戦術が欠けている。前線でフィジカルを活かした受け手となれる選手が居ないからだ。サプライズ召集となったフュルクルクに期待がかかるものの、現状右サイドからの背後への抜け出しを得意とするホフマンが唯一の受け手となる。ラインをズルズルと下げずに彼をケアし、他のライン間のアタッカーに対応することが重要だ。
日本代表の場合、同じ5-2-3を採用するフランクフルトにてEL制覇の立役者となった鎌田大地がいる。他にも守備に優れた前線のプレイヤー、アグレッシブな守備を見せるCHの遠藤航等ドイツで活躍するプレイヤーも多くいる。そんな中で5バックのオプションを持てなかったのは痛手である。
いずれにせよ、中盤の底の選手の負荷が高くなるものの前からプレッシングをかけるか、自陣に引いて耐え忍ぶかを明確に定め、中途半端にならないことが現状最も重要だ。
強豪ドイツにも付け入る隙は残されている。日本代表の初戦への準備と奮起に期待したい。
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とんとんさん、ありがとうございました!
いかがでしたでしょうか。
初戦は11月23日(水)22:00〜。強豪ドイツ代表を相手に日本代表がどう戦うか、楽しみですね。
さて、こちらのnoteでは、「鳥の眼」シリーズでおなじみとんとんさんによるW杯関連の記事を今後も公開してまいりますので、ぜひフォローをお願いいたします!また、とんとんさんご自身が運営されているブログもぜひチェックしてみてくださいね。
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