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「鳥の眼」で観るW杯2022〜【ブラジルvsクロアチア戦】ブラジルの課題とクロアチアの守備戦術〜

こんばんは!
FL-UXマーケティングチームです。

日本代表が世界の強豪国相手に見事な戦いを見せてくれたW杯カタール大会もいよいよ大詰めです。4強が出揃い、どこが優勝を手にするのか、とても気になりますね!

さて、今日は、先日行われたブラジルvsクロアチア戦をとんとんさんが分析してくださったので公開したいと思います。この一戦も、日本vsクロアチア戦に引き続き、PK戦にもつれ込み白熱した試合になりましたね。

日本代表を破ったクロアチア代表の特徴がとてもよくわかる分析記事となっております。

それでは早速、とんとんさん、お願いいたします!

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日本代表を破り準々決勝へと駒を進めたクロアチアと、優勝候補筆頭のブラジルの対戦はPK戦の末クロアチアが勝利を手にした。

優勝候補筆頭のブラジルはなぜ敗れたのか?
問題はどこにあったのか?

クロアチアはどのように試合を進め、どのようにブラジルを抑え込み勝利を手にしたのか?
この試合の戦術的ポイントを挙げていく。

■スタメン

■技巧派揃いの中盤が織りなすボール保持

この試合の両チームのポゼッション率はほぼ五分であった。ブラジルは相手を崩すためにボールを保持し、クロアチアは時間をかけてゆったりとリスクを最小限に留めたボール保持で試合を進めていった。

まずはクロアチアの4-3-3ボール保持を見ていく。クロアチアは中盤の3枚が近い距離感を維持してパス交換を行う。IHのモドリッチやコバチッチもドンドンとボールを受けに下がっていく。代わりにアンカーのブロゾビッチが位置を上げる姿はまさしくクロース、モドリッチ、カゼミロで構成される昨季レアル・マドリードを彷彿とさせるものであった。
中盤3枚が低い位置をとるのに対し、SBはさほど高い位置をとることをしなかった。ブラジルには強力なカウンターがあるからだ。3トップもポジションを移動する機会が少なく、各人が断絶される形となった。レアル・マドリードのように的確にポジションを調整することのできるカルバハルやバルベルデ、少人数で打開できるヴィニシウスやベンゼマのようなプレイヤーがクロアチアにはいない。
そのためテクニカルな中盤によりパスは回るがブラジルゴール前にはほとんど辿り着くことができなかった。幾度か見られた左サイドへのサイドチェンジも長身WGペリシッチの起用以外に特別な仕掛けは無く、IHのコバチッチも低い位置をとるケースが多いためなかなか絡めず、ミリトンの起用も相まってかき消された。
彼らのボール保持はどちらかというと自分たちの攻撃というよりも、ブラジルから攻撃機会を奪うという点で効果を発揮した。

■ブラジルの守備構造

クロアチアの攻撃に対し、ブラジルは3-4-1-2でのプレッシングを敢行。左WGのヴィニシウスが右SBユラノビッチへのパスコースを消しながら右CBロブレンにアプローチをかけ、左SBダニーロがユラノビッチを見ることのできる位置でWGパシャリッチも見る形を採用。この左サイド以外がマンツーマンで対応できる形にシフトした。このプレスであらかた回収に成功したが、はまらずに引く場合はヴィニシウスが戻って4-4-2となる。この場合は基本的にクロアチアの中盤を無理して捕まえようとせずに我慢する方向で対応して見せた。
カウンター対応も落ち着いていた。まずはカゼミロが攻撃の芽を摘みに出ていき、摘み切れなければチアゴ・シウバを中心にマークを確認しつつ撤退して対応。リシャルリソンのプレスバックも異様なスピードを見せていた。
背後への抜け出しの少ないクロアチアに対して基本的には強気なハイラインを敷き、クロアチアをシャットアウト。失点シーンだけはカゼミロの脇を使われたのちにDFラインが乱れてしまった。

■クロアチアの守備構造とブラジルの問題点

ここからが本題。ブラジルはなぜクロアチアの守備にてこずったのか??

クロアチアは4-2-3-1でセットして守備を行った。対するブラジルは2-3-5のような形。
クロアチアはトップ下のモドリッチがブラジルのアンカー・カゼミロにマンマークでついた。カゼミロが使えないとなると他のメンバー、特にこの試合で中盤を担った両SBが中央で配球を行う必要があったが、立ち位置が悪くほとんど機能しなかった。特に右のミリトンは中央に絞り切れずに中途半端な立ち位置に終始した。

左のダニーロは徐々に中央に絞ってプレーするようになっていき、カゼミロが消された中での配球役となった。ネイマールの位置するサイドであることもあり、ブラジルの攻撃の多くは左サイドから展開された。しかしこれに対しクロアチアが巧みに対応して見せた。
右CHのブロゾビッチと右SHパシャリッチが徹底的に自身の後ろのギャップを通させないようにスライドを行い、楔のパスをシャットアウトした。こうなるとCH間で顔を出すことのできるリシャルリソンがカギとなるが、彼は前半戦このエリアでボールを受ける動きをほとんどしなかった。これにはモドリッチの守備も関係している。
左CHのコバチッチは中央までスライドしない。モドリッチがカゼミロをケアしつつCH間をも消す絶妙な立ち位置をとっていたからだ。
仮にここでリシャルリソンへのパスが選択肢に出てくれば、彼を経由してネイマールにパスが渡る。つまりリシャルリソンへのパスが無くなれば、ネイマールをゲームから排除できるのだ。
こうしてリシャルリソンへのパスコースが消えダニーロに出し先が無いとみるや、ブロゾビッチは積極的にダニーロにアプローチをかけてビルドアップに妨害をかけた。
ボールを触れないネイマールはポジションを移す。主に左サイド、ヴィニシウスの手前のスペースと、ダニーロの位置だ。ヴィニシウス手前の位置への移動は敵が5バックの際は効果を発揮するが、今回はパシャリッチのスライドが間に合うため効果的なものとはならなかった。
ダニーロの位置へ降りる場合は、ヴィニシウスが孤立しSB、SH、CHのプレスバックに囲まれてしまう結果となった。ヴィニシウス自身も位置が高すぎてボールを引き出すことができなかった。さらにダニーロとも位置が被るため、実質的に1人分少ない状態となる場面も見られた。
ただし、ネイマールが無理やりポジション移動のトリガーとなったため、他のメンバーが連動してチャンスにつながるシーンがわずかに見られることとなった。
カゼミロもレアル・マドリードでみせていたようにポジションを上げることでモドリッチのマークから逃れる動きを見せたが、SBが連動できずIHも降りてくるような役割ではなかったため効果は出なかった。
このように、2-3-5が機能するシーンはまれに見られたものの基本的にはSBの立ち位置問題とリシャルリソンへのパスが使えなかった点が前半戦の大きな問題となり、効果的な攻撃は生まれにくかった。

■後半戦の修正

後半のブラジルはSBを絞らせることを諦め、サイドに重心を置いた。
これによりサイドのローテーションを行えるようになり、ネイマールがハーフスペースを降りた時にも左WGが孤立せずに絡みやすくなった。
またサイドが使えるようになり、モドリッチの守備範囲外からCH間のリシャルリソンへ楔のパスを打ち込めるようになった。リシャルリソン自身もボールを呼び込むためにCBを背負うシーンが増え、ブラジルは彼のポストプレーから何度か決定機を迎えることに成功した。
右IHのパケタはトップ下のような位置取りで左サイド攻撃にも的確に顔を出し、ネイマールのゴールもおぜん立てして見せた。
延長戦も含め決定機をいくつも作ったブラジルであったが、GKリヴァコビッチの好セーブに阻まれ準決勝進出を逃した。
クロアチアは、前半にブラジルの攻撃を守備戦術でシャットアウト。後半は危険なシーンも作られたものの、ボールの保持で時間を潰すことでブラジルの攻撃機会を減らすことに成功した。
クロアチアの試合の進め方、前半の守備戦術が機能していたのは間違いないが、ブラジルからすれば数ある決定機を活かすことができれば、と悔やまれる内容であった。

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とんとんさん、ありがとうございました!

いよいよ準決勝、クロアチアvsアルゼンチン戦は明日12月14日の4:00キックオフです。クロアチア代表、そして対するアルゼンチン代表がどのように戦うのか、とても楽しみですね!

さて、こちらのnoteでは、とんとんさんによるW杯関連の記事、そして海外サッカーをはじめとするサッカー戦術の分析記事を公開しております。こちらのマガジンから、60以上の記事をお読みいただけますのでぜひチェックしてみてくださいね。
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話は変わりますが・・・
今回のW杯では日本代表の森保監督が試合中や練習中に、ノートにメモを取っている姿が話題になりましたね。どこへでも持ち歩けて、パッと出せて気づいたことをすぐに書き込めるノート。この使い勝手に勝るものはないのだろうなと思います。

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