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鳥の眼で観る欧州サッカー【ネクスト・ナーゲルスマン】オーレ・ヴェルナー率いるブレーメン5-3-2戦術分析

こんばんは!
FL-UXマーケティングチームです。

早いもので4月も折り返し、残すところあと10日ほどとなりました。
新しい環境で頑張っていらっしゃる方、新しいことに挑戦されている方も多いのではないかと思います。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

弊社にも新しい仲間が加わったりなど、新しい風が吹いてきていると感じる今日この頃です。

さて、本日も、とんとんさんより戦術分析記事をご寄稿いただきました。今回はいままでとは少し趣向を変え、ブレーメンの分析です。

指揮官としては若手である、34歳のオーレ・ヴェルナー監督率いる注目チーム、ブレーメン。とんとんさんはどのように分析しているのでしょうか。早速ご覧ください。

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22-23シーズンのブレーメンを率いているのはオーレ・ヴェルナー監督だ。彼はナーゲルスマンよりも1歳下の1988年生まれ、期待の若手指揮官である。リーグ戦は中位であるものの、魅力あふれるサッカーを展開している。機能性としてはまさにブンデスリーガ4位に入った16-17シーズンのナーゲルスマン・ホッフェンハイムのリバイバルであり、システムも同じだ。新たな名将誕生を予感させる。
では、そんなオーレ・ヴェルナー率いるブレーメンがどのようなサッカーを展開しているのか解説していく。

■基本布陣

GKにはベテランのパブレンカが起用される。
右HVにはフィードや楔、運ぶドリブルと安定したビルドアップと守備を見せるピーパー、左HVに前進してのボール奪取が魅力のフリードリヒ、CBには運ぶドリブルと的確なパスを武器にビルドアップの核となるシュタルクが起用される。
右WBのヴァイザーは高い位置で2トップと連携するアシスト役を担い、左WBのユンクは内側へのドリブルと的確なパスで攻撃を促進するプレーを得意とする。守備においても危険なエリアを見極めてのボール奪取が光る。
アンカーにはポジショニングとショートパスで攻撃を組み立てるグルエフ、左IHにはSB裏へのランニングでチャンスを作るステージ、右IHにはピッチに発生するスペースを認知し入り込むのが上手いシュミッドが入る。
2トップには25節終了時点で15G5Aと得点王争いトップに立つ189cmフュルクルク、相方に188cmと長身で足元の技術にも優れるドゥクシュが入り、攻撃の核として機能する。

■チームのスタイル

ベースのシステムは5-3-2だ。高い位置からのプレッシングでボールの奪取を目指す彼らにとって、中盤が敵の配置に応じて柔軟にポジションを変えられるのが強みとなっている。
攻撃におけるチーム最大の武器はフュルクルクとドゥクシュの2トップである。彼らは圧倒的な高さ・強さだけでなく、足元の技術も備えているため、空中戦・地上戦の両面でボールを収めることが可能だ。ポストプレーも上手く、点を取るだけでなく攻撃の展開もできる、ブンデスでも屈指の実力派2トップである。
そのため、この2トップにボールを当てるというのがチーム全体の攻撃目標となる。目標が明確であるため、その目標を達するに必要なプレーが各エリアで迷いなく実行されている。

■ビルドアップ

ブレーメンは左右非対称の4-3-3のような形で攻撃を展開する。ビルドアップは左WBユンクを除いた3バック+アンカーがメインとなる。シュタルクとピーパー、特にシュタルクは運ぶドリブルが抜群に上手く、相手のプレスの1stラインの隙間にボールを運ぶことで敵にリアクションを起こさせ、空いたスペースに的確にボールを捌いて攻撃の起点となる。彼の存在はブレーメンのビルドアップにおいて替えが利かないものだ。ビルドアップの選択肢を増やすため、ボールを捌いた後はアンカー位置に抜けることでHV間のパスコースを開通させることもできる。
アンカーのグルエフはシンプルな配球が魅力で、小気味よいショートパスで攻撃にリズムを生み出す。運ぶドリブル、楔、そしてフィードまでこなせるシュタルクやピーパーを活かすため、低い位置でサポート役となり彼らを前進させることもできるが、高めの位置で彼らの周辺にスペースを与えるとともに前線とリンクすることもできる。こういったポジショニング能力も有しているのがグルエフの強みだ。
彼らの目標は2トップに楔のパスを入れることとなる。シュタルクやピーパーは楔を打ち込む能力も高いが、それだけに頼っていても実現は難しい。そのためチームとして楔を打ち込む仕組みも確立されている。その仕組みは主にサイドに仕込まれており、サイドで変化を生み出すことで中央の3バックに対する警戒が弱まり、楔が打ち込みやすくなる。サイド攻撃はブレーメンの流動性のキーポイントなのだ。

■左サイド攻撃は「抜ける」と「内へ」

ブレーメンのサイド攻撃は左右で機能性が異なる。まずは左サイドから見ていく。
左サイド攻撃の特徴はIHステージの位置だ。ステージは常にSB裏を狙っている。WBのユンクがボールを持つ前段階では低めの位置をとっているが、SB裏のスペースが空けば必ずそこへ抜ける動きを入れる。この動きに対して敵の中盤が釣られれば、ユンクから2トップへのパスコースが出来上がり、2トップに楔のパスを入れるという目標を達しやすくなる。2トップに楔が入った後は、そのままダイレクトで抜け出したステージを使うこともできる。CBシュタルクにボールを落とせば、右からの攻撃、前線に向けたロングボールという選択肢が生まれ、幅ができる。
2トップへのパスコースが切られている場合、アンカーを使ったやり直しも可能だ。グルエフは常にパスを受けられるサポートポジションをとり、ユンクも彼とのリンクを切らないよう内側にトラップないしはドリブルを行う。
ユンクは敵SBより手前にポジションをとるため、SBを釣り出しやすい。それでもSBを釣り出せない場合、ステージはユンクの横にサポートポジションをとって中央とのリンクの動きを見せることもある。これに対しても敵中盤がついてくれば同じように2トップへのパスコースができあがる。
ステージがサポートポジションをとる機会は多くない。なぜならユンクが一人で中とのリンクを確保することを得意としているからだ。ユンクは内側へボールを運んでパスコースを生み出す能力に長けているため、ステージが高い位置をとれる。内側に持ち出せば角度・景色が変わり、自らでパスコースを生み出すことができる。楔が難しければCBにボールを返すことで別の展開を模索していく。この時、ユンクに注意が集まり敵の陣形が崩れるため、ボールを受けたCBは展開しやすい状況となる。
結局この内側へのボールの持ち出しの上手さが、攻撃の幅を広げるためのパスコースの創出における最大のポイントとなっている。ユンクが抜群に上手いのだが、他のDF陣も得意としているプレーだ。
このように、左サイドではステージの抜け出しとユンクの配球をポイントに、2トップへ楔を送り込むことを目標に攻撃が展開される。

■2トップの機能性

得点王のフュルクルクと相方のドゥクシュは共に長身でハイボールに強く、足元の技術にも長けているためグラウンダーでもロブでも収めることができる。それに加えてポジショニングを上手く活用することでボールを呼び込むことができる。
2人の関係でいうと、いずれかが前線でCBを釘付けにし、もう片方が降りてボールを呼び込むのが効果的だ。また敵のスライドとは逆の動きをすることで、CH間でボールを引き出すことも得意とする。

チームとしての楔の入れ方は上述の通り、IHの流れる動きが効果的である。それとは別に、CFが降りることでIHが裏への抜け出しを図ることも多い。存在感の強いCFを囮として利用する形だ。2トップと2IHで3レーンを共有するような形となる。
IHは敵中盤の脇や敵CB-SBの間にポジションを上下させることで攻撃に関与していく。彼らが降りてやや開き気味に位置することでCH間が開き、2トップへのパスコースが空きやすくなる。つまり、IHが高い位置でも低い位置でも、絞っても開いても機能するようになっているのだ。これは、IHの動きによって空いたスペースを各選手が認知しているからできる連携攻撃である。
いずれのシーンにおいてもアンカーのグルエフは上記2CF+2IHの4枚からレイオフパスを受けられるようにスタンバイしている。こういった地味だが効果的な働きが、攻撃の幅を格段に広げている。
5バックに対しては3-1-6を形成して攻撃を展開することもある。

■守備戦術

ブレーメンは前線からのプレッシングに特徴を持つ。誘導してはめ込むケースはほとんどないが、敵のシステムに対してマンマーク気味に噛み合わせて高い位置からはめ込んでいく。噛み合わせるためのポイントとなるのが中盤で、柔軟に配置を修正することが可能だ。CFドゥクシュも状況に応じて左サイドに移動してプレッシングの形を微調整する。
HVやWBも積極的に前進して潰しに出る。左WBユンクは敵のWGの位置を確認しつつ、的確にパスコースを消しながら中に絞りプレスをかけることができる。
長身の彼が的確に中に絞ってボール奪取及びロングボール対応に参加できるのは守備の面で良い影響を与えている。

■おわりに

オーレ・ヴェルナー率いるブレーメンの(特に攻撃面の)機能性は、16-17シーズンに躍動したナーゲルスマン・ホッフェンハイムとそっくりである。
守備の面では課題が残るものの、各選手の持ち味も十分に生かした魅力的なサッカーは今季のブンデスリーガのサプライズとなっている。
グルエフやシュミッドはまだ若く、オーレ・ヴェルナーも今後ビッグクラブへとステップアップする可能性を秘めている。
名将誕生の予感に期待が尽きない。

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とんとんさん、ありがとうございました!

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それではまた!


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