【セミナーレポート】実践型プレー分析セミナー「現役プロアカデミーコーチと一緒に欧州トップクラブを解析!ゲーム分析の実践」〜後編〜

【セミナーレポート】実践型プレー分析セミナー「現役プロアカデミーコーチと一緒に欧州トップクラブを解析!ゲーム分析の実践」〜後編〜

こんにちは。

こちらの記事は、同タイトル記事の前編に引き続き、とんとんさんにまとめていただいた、弊社が主催する実践型プレー分析セミナーのレポートの後編になります。

当セミナーでは、EURO 2020準決勝 スペインvsイタリア戦を題材とし、ジェフユナイテッド千葉・市原のアカデミーで現役で指導者を務める飯野大造さんを講師に迎え、プレーモデルの概念に基づいた実践的なプレー分析を行っております。

詳しくは、下記でとんとんさんが詳しくまとめてくださっているので、ぜひチェックしてみてください!

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 2021.8.9、前編に引き続き、ジェフユナイテッド市原・千葉のアカデミーで指導者を務める飯野大造氏による、EURO2020準決勝スペインvsイタリアの後半戦をベースとした実践型分析セミナーが行われた。

★前編のおさらい★

 飯野氏によるゲーム分析において重要なのは、試合中に起きる現象からプレーモデルを読み解くことにある。
 プレーモデルとは、ゲームにおけるプレーのコンセプトや原則を示すガイドラインのようなものである。105×68mのピッチで90分間、攻守様々な局面やシチュエーションが発生するサッカーというスポーツにおいては、このプレーモデルにも適度な細分化が必要となる。飯野氏の考えるプレーモデルの細分化は非常にクリアにまとまっている。4局面、3ゾーン、13(+攻守のセットプレー)のシチュエーションの上で成り立っている。

■4局面
・攻撃(組織的攻撃)
・守備(組織的守備)
・守備→攻撃
・攻撃→守備
■3ゾーン
・敵陣
・中盤
・自陣
■13のシチュエーション
【組織的攻撃】
・ビルドアップ
・前進
・ロングボールでの攻撃
・フィニッシュ
【組織的守備】
・組織的攻撃4項目を阻害する守備
【守備→攻撃】
・組織化の開始
・カウンター
【攻撃→守備】
・プレッシャー
・リトリート
・プレッシャー&リトリート

 この細分化はチーム、監督によってそれぞれであり、色の出る部分である。今回も上記のフレームワークの元、分析が行われた。その一部にフォーカスしていく。

★前半戦からの変化★ 

 後半戦を分析するにあたって真っ先に注意を向けるべきは2つの変化だ。それは15分間のハーフタイムを経てのチームの変化、そして選手交代による変化である。全ての選手が一同に揃う15分間という貴重なひと時は最も修正をかけやすい魔法の時間帯であり、監督の腕の見せ所となる。そして疲労の蓄積、相手とのマッチアップ、味方との相乗効果を考慮して行われる選手交代もまた、チームに大きな影響を与えるものとなる。

 まず初めに変化を見せたのはイタリアだ。前半戦はビルドアップ阻害の局面において前線からプレッシングをかけていたが、後半の頭からプレス開始位置を低く設定し、ブロックを築くよう修正されていた。この修正は0トップとして機能するダニ・オルモ対策が大きな要因のひとつとなっている。前半戦のスペインは、ダニ・オルモが中盤に降りて数的優位を作り出して前進を図り、ボヌッチがダニ・オルモについてくることにより最終ラインが手薄(2枚)になったらロングボールを送り込むというプランであった。これに対してイタリアはプレス開始位置を低くすることで、よりコンパクトな守備陣形を保ちダニ・オルモが降りてもスペースが存在しないという状況を作り出した。守備陣形がコンパクトであるためダニ・オルモが降りても中盤の選手のカバーできる範囲に収まるため、数的優位の恩恵が薄くなるのだ。

★スペインの変化★

 このイタリアの修正に対し、スペインは2つの変化を見せる。まずは幅を使った攻撃だ。前半さほど高い位置を取らなかった左SBのアルバが高い位置を取るようになった。ボールサイドにおいてはより幅を利用した攻撃が可能となったが、バックパスからの展開は前半戦同様乏しいものであった。なぜなら、逆サイドではWGが絞り、SBは低い位置を維持したため、高い位置に張っている選手が存在しなかったからだ。ボールサイドにおいてはこのWGとSBにIHを加えた3選手の位置関係とローテーションが優れていたスペインであったが、逆サイドにおいてはやや整理されていない状態であった。

画像1

 では、優れていたボールサイドでの位置関係とローテーションはどのようなものであったか。これは、モラタの同点弾にもつながるものである。スペインは相手の守備ブロックがコンパクトでありライン間のスペースが狭いと判断すると、IHが守備ブロックの中から抜けて降りるプレーを見せる。これはボールに触れたいから降りるというネガティブなものではない。守備ブロックを形成する相手選手を引きずり出すことで守備ブロックを広げようという、チームにポジティブな効果をもたらすプレーだ。ただし、この動きに対して味方の選手が連動しなければポジティブなものにはならない。元々IHが居た位置にWGが絞って入り込み、使う必要がある。ただしWGが中に絞るだけでは、マークに付いていた敵SBがついていくだけで対応できてしまう。そのため、同時にSBがポジションを上げることで敵SBに迷いを生じさせる必要がある。この3人の連動が、スペインの攻撃から流動性が失われない要因となった。狭いから広げる(IH)、広がったライン間を使う(WG)、ただし幅という選択肢を失わせない(SB)という連動がスペインでは当たり前となっている。
 このポジションチェンジにより、WGがCFと近い位置でプレーすることが可能となった。イタリアからするとIHが前方に釣り出された状態であるため、SBがWGと大外の2枚を見る必要がある。さらに、CBもWGとCFの2枚を警戒する必要が出てくる。そんな中で、WGがハーフスペースで受け、後半途中出場のCFモラタが背後に抜け出すというシーンが増えていく。

画像2

 こういったプレーはモラタの同点ゴールの布石にもなった。同点のシーンは、イタリアのIHがペドリを、WGが外のアルバを、CBがオルモを警戒することでモラタへのパスコースが一瞬空いた隙を突くゴールであった。IHのペドリがはっきりと降りていたわけではないが、ポジションチェンジが行われていなければマークは整理されたままであり、生まれることのなかった隙とゴールであったと言える。
 中盤での数的優位の作成(スペイン)→プレス開始位置を下げて中盤とDFのライン間を狭める(イタリア)→SBを使い横に広げる(スペイン)→IHを落として縦に広げる(スペイン)といった流れでスペインの攻撃は組み立てられていった。

★イタリアの攻撃面での変化★

 イタリアの攻撃面での変化はよりシンプルだ。ヴェラッティとスピナッツォーラがキエッリーニに近い位置をとることでスペインの守備陣を前方に誘き出し、インシーニェが敵中盤ラインの背後のスペースでボールを引き出す。DFの選手がインシーニェについてくることで最終ラインの枚数が減れば、広がった背後のスペースにロングボールを送り込んでいった。イタリアもスペイン同様、単純にロングボールを送り込むのではなく最終ラインの枚数を減らしたうえでロングボールを送り込むという策をとっていた。

★分析を行う上でのポイント★

 飯野氏によるゲーム分析において重要なのは、試合中に起きる現象からプレーモデルを読み解くことにあるということは冒頭に述べた。状況やエリアを細分化して解釈することも重要である。これらに加えて試合中の現象を読み解くうえで重要であるのが、「どの選手がどの選手のマークに付いているのか」を把握することである。このマッチングが変われば、スペースの発生するエリアも変わる。マッチング自体は同じでも、マッチングするエリアが変われば同じくスペースの発生するエリアは変わる。

 スペインの同点ゴールはIHが降りるところから始まる一連のポジションチェンジの産物であり、これをただ単にCBからの楔の質が高いという一点で結論付けてしまうのはいささか横暴である。サッカーは当然相手があってこそ成立するスポーツであるため、この点もふまえたうえで分析を行うことでよりよいものへと進化していく。
 

最後は両チームそれぞれのプレーモデルのまとめで締めくくられた。プレーモデルをベースにした分析方法は、両チームがいつ、どこで、誰が、どのような狙いを持ってプレーをしているのかを整理するうえで非常に有意義であるということを実感できるセミナーであった。

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いかがでしたでしょうか。

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