【EURO2020王者】ロベルト・マンチーニ率いるイタリア代表戦術分析_攻撃・切替編

【EURO2020王者】ロベルト・マンチーニ率いるイタリア代表戦術分析_攻撃・切替編

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こんにちは。

今回は、前回の投稿に引き続き、とんとんさんにご寄稿いただいたイタリア代表の戦術分析の後編をお送りします。

今回は、攻撃とトランジションについてまとめていただきました。

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■攻撃戦術
イタリアの攻撃は、左SBのスピナッツォーラと右IHバレッラが前進して3-2-5の陣形で展開される。攻撃においても3センターの距離感は肝となっており、中盤で細かくパスをつなぎ、ファイナルサードでは守備陣の隙間に高低を使い分けたクロスボールを送り込む形でフィニッシュに持ち込んでいく。

ロブパス

前進の方法として、敵のプレスが強い場合はDFラインのボヌッチから敵のDF-中盤のライン間に位置するインモービレやバレッラに短めのロブパスを送り込む形も持ち合わせていた。ボヌッチのフィードの能力に加え、裏抜けで敵を押し下げてからポストプレーをこなすインモービレ、そこにサポートに入るインシーニェやキエーザといった面々の共通理解、そしてリスク管理のためすぐに中盤3センターが守備ブロックを組んで回収できる連動性を持ち合わせているからこそなせる形となっていた。バレッラは楔を受けに降りるプレー、楔を受けた選手へのサポートに入るプレー、背後に抜け出すプレーと、様々な形でボールを受けることができるプレイヤーとしてチームの攻撃に貢献した。
このロブパスが敵に渡ったとしても上記のリスク管理によりピンチに陥ることがなく、すぐさま回収して速攻に持ち込むことができるという点はイタリアの非常に大きな強みとなった。

クロス

ファイナルサードでのクロスボールにも工夫が施されている。サイドで縦に突破してクロスをあげるというシンプルなシーンがほとんどない。基本的に左サイドではハーフスペースからクロスボールをあげる。ここに位置するインシーニェは右利きであり、中央を向いた状態から右脚で巻いたクロスを選択する。ゴールに向かっていくボールとなるため触れば得点となる。加えてCFがファーサイド寄りに位置することで、大外のキエーザをフリーにすることもできる。
これを嫌ってDFラインが下がれば、ペナルティエリア手前にスペースが生まれるため、横パスを送り込み、崩しにかかる。バレッラがトップ下のような位置取りをしてボールを受けるのだ。インシーニェも同様で、逆ハーフスペースに位置するこの2人は、逆サイドにボールがある際、状況に応じてトップ下の位置まで絞っていく。
またサイドのスピナッツォーラからインシーニェへのバックパスを加えることでラインを押し上げようというDFの心理も働くため、ラインが乱れてスペースが生まれやすくなっている。こうしてラインに乱れが生まれれば、左利きの選手や別の右利きの選手がシンプルにゴール前に送り込んでもチャンスになるシーンが増える。
こういったプレーは5バックを崩すうえでも効果的であり、バックパスとクロスを駆使してラインを乱しつつゴールを脅かすイタリアは5バック崩しに長けたチームであった。中央では近い距離感を維持してショートパスで展開するプレーに長けたジョルジーニョとヴェラッティが優位を作り出し、中央に注意が集まればサイド(WB手前)での数的優位を活用する。

画像3

この5バック崩しにおいてもう一点ポイントとなったのがインシーニェとスピナッツォーラの関係性だ。ベルギー戦はそれが如実に現れ、得点にもつながった。スピナッツォーラが高い位置を取り、インシーニェは低い位置でよりサイドの方向に流れてポジションをとるのだ。ポジションを大きく離れる必要のある右CBは前進が難しく、敵のWBに対してサイドで2vs1の状況を作り出すことができる。CHがカバーに出れば中央が大きく空くこととなる。そうなるとライン間での受け手となることもDF背後への抜け出しもこなせるインモービレに危険な状況を作られる可能性が高い。そんなベルギー守備陣の迷いの中で生まれたのが、インシーニェの美しいゴールであった。

■ネガティブ・トランジション

 イタリアの非常に大きな特徴となったのが攻撃から守備への切り替え、ネガティブ・トランジションの局面である。細かいパスやクロスボールが敵に奪われた際の切り替えでカウンターを浴びることなく、逆に即時奪還からショートカウンターに持ち込みチャンスを演出することが可能となっていた。
イタリアはサイド深い位置まで侵入することが少ないため、ボールを失うエリアはおおよそペナルティエリアの1~2m外近辺となる。3-2-5でボールを運ぶため、ハーフスペースに位置する選手と2枚の中盤の間の辺りだ。

ネガトラ

 ペナルティエリアの外でボールを失った場合、ヴェラッティもしくはジョルジーニョがボールホルダーに向かって即座にプレッシャーをかける。ロングボール1本でのカウンターを浴びないよう、長いボールを蹴らせないという点でも効果的な動きとなっている。この時、近くの選手へのパスコースを切るように寄せることができるのが、ジョルジーニョの強みである。連動するようにヴェラッティも近くの選手を消すポジションをとる。切り替えのタイミングで必ず2人が中盤に位置することで、どちらかが出てもどちらかがスペースを埋めることができる。左サイドから敵を押し込んでいる局面であれば、右SBのディ・ロレンツォは2枚の中盤の脇まで位置を上げ、絞ってセカンドボールに備えることも多い。
 敵が楔のパスを選択すれば、ボヌッチやキエッリーニが積極的に前進して受け手を潰す。この時ボールを奪えずとも前を向かせないことで、プレスバックするジョルジーニョやヴェラッティと挟み撃ちにすることが可能となり、カウンターの速度を落とすこともできるのだ。前線の選手は近くの選手へのパスコースを切りながら自身の定位置に戻っていくため、さらなるプレスバックも期待できる。
 ヴェラッティ、ジョルジーニョ、そして状況に応じてバレッラが近い距離感で連携をとることができている利点がこの部分にも表れている。引いた守備を崩すことができずとも、切替えの局面で敵の陣形が崩れている状態で速攻をかけることができる点は、守備面だけでなく攻撃面でもプラスに働く。ベルギー戦でのバレッラの得点はまさに即時奪還から生まれたものであった。通常ボールを繋ぐチームにとってのウィークポイントとなる被カウンターの部分がイタリアにとってはチャンスになるのだ。

■おわりに
イタリア代表は攻撃、守備、そしてトランジションの局面それぞれにおいて特徴が色濃く出ており、EURO2020制覇、30戦無敗を達成するにふさわしいサッカーを展開した。どの選手も持ち味を発揮していたが、あらゆる局面において軸となったのがヴェラッティ、バレッラ、ジョルジーニョの中盤3センターだ。彼らはいずれもいわゆる「守備的なプレイヤー」=守備を最大のストロングポイントとして持つプレイヤーではない。しかし、連携をとりながら堅実に攻守のバランスをとり、チームの戦術を確実に遂行することで守備の局面においても非常に大きな力となった。この「守備的でない」3選手が守備局面でも大仕事を果たし欧州王者となった点にイタリア代表の、そしてサッカーの面白さが詰まっていると感じる。

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いかがでしたでしょうか。

カタールW杯欧州予選でも堅調な戦績を残しているイタリア代表、これからもその活躍から目が離せませんね・・・!

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それではまた!


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