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「鳥の眼」で観る欧州サッカー〜白い巨人を幻惑させたジンチェンコに見る、SBの攻撃への関わり方〜
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「鳥の眼」で観る欧州サッカー〜白い巨人を幻惑させたジンチェンコに見る、SBの攻撃への関わり方〜

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こんばんは!
7月に入りましたね。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

本日は、とんとんさんによる欧州サッカー分析をお送りします。今回は、5月に幕を閉じたUEFAチャンピオンズリーグでもレアル・マドリードを相手に活躍を見せた、マンチェスター・シティのジンチェンコ選手に注目します。
(とんとんさんによるCL特集はこちらのマガジンからまとめてご覧いただけます。)

それでは、とんとんさん、さっそくお願いいたします!

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CL準決勝レアル・マドリード戦1stレグにおけるマンチェスター・シティは、相手DFを前方に釣り出してのチャンネル狙い&クロスボールで得点を重ねた。攻撃に繋がるプレッシングも効果的であり、4度もゴールネットを揺らしてみせた。

この試合において、際立ってスムーズな連携を見せた選手がいた。左SBのジンチェンコだ。このシーズンのマンチェスター・シティのSBとしてはカンセロの躍動が目立ったものの、ジンチェンコのパフォーマンスも決して低調なものではなかった。
今回はこの試合でSBのお手本のような攻撃参加を見せ、レアル・マドリードを幻惑したジンチェンコにフォーカスし、攻撃への関わり方を見ていく。

大外での役割

ジンチェンコは大外とハーフスペースを的確に移動して攻撃に関与する。

外に位置する場合は大抵低い位置からボールを捌く役割を果たす。左WGとして大外に張るフォーデン、ハーフスペースに位置するIHデブルイネと、パサーに2択を供給する仕組みがチームの中に出来上がっているため、ジンチェンコは局面に応じて配球していく。僅かな隙間を見逃さずに質の高い楔を打ち込むことができるのも彼の強みだ。

また、アンカー・ロドリを機能させるのも彼の起用による効果だ。相手FWによってロドリへのパスコースを切られつつCBにプレスをかけられた際、ジンチェンコが3人目として迂回ルートを創出することで、ロドリへのパスコースを復活させるのだ。
意識的にロドリに当てることも重要だ。一度消したはずのパスの出し先を使われるというのは守備側としては非常に嫌なもので、修正も容易ではない。
復活したアンカーへのパスコースが見えていない選手も多い中、彼の配球はパスの流れを生み出す上で大きな役割を果たしている。

ハーフスペースでの役割と効果

こういった大外での役割に対し、ハーフスペースでの役割はどのようなものであったか。
まず敵を押し込み切っていない低い位置の場合、彼はアンカー・ロドリの脇に絞ってボールの循環に関与することが多い。
これは敵WGが低い位置をとり、大外に位置するジンチェンコへのアプローチがほとんど無い状態、もしくはロドリが右サイドに寄っている際に取られるポジショニングだ。この時、左CBのラポルトが空いたスペースを活かしつつバランスをとる、もしくは敵のマークから外れるよう外に開くケースも多い。
彼がロドリの脇に位置するメリットは
 1. 中央での優位を確立する
 2. IH、WGへの楔を打ち込みやすくする
 3. マークが混乱する
 4. セカンドボールの回収エリアが広がる
といった点となる。

ロドリの脇でパス交換に加わる際、ロンドのようなテンポで細かなパスを回す事で局所的な優位を作り出す。レアル・マドリードのセカンドチェイスを用いた守備に対して中央で「3人目」としての役割を果たす事はプレス回避に大いに役立つ。プレスがハマらないマドリーはリトリートに入り、ジンチェンコが絞ってプレーするのに好都合な環境が出来上がる。
逆にジンチェンコにパスをつけないと守備の乱れを生む事ができない。そのためシティは、ジンチェンコが絞った際はほぼ必ず彼にボールを当てるようにしている。動いた選手を使う事は攻撃に変化を生む上で重要となり、チームとしての約束となっている。SB自身にとっても、チームにとっても有益なのだ。

ジンチェンコが絞る事で敵のWGも絞って対応すれば、CBからWGへのパスコースが出来上がる。ジンチェンコを経由する事も当然選択肢の一つとなり、彼から楔を打ち込むこともできる。フォーデンもやや引いて受ければSBのカルバハルを釣り出しDFラインの枚数を減らす事ができる。背後を狙うデブルイネやゴール前へのクロスといった、この試合マドリーが効果的に活用した攻撃に繋がるものだ。

例えば2点目のゴールは、ジンチェンコがアンカー脇に絞ることで空いたスペースにWGのフォーデンが降り、カルバハルを釣り出したところから始まっている。CBのミリトンをサイドに釣り出すことに成功し、デブルイネもサイドに流れることでIHのマークから逃れフリーでクロスを上げられる状態を作り出した。
このようにジンチェンコの動きがチームとして機能していた攻撃の一端を担っていたといえる。
ハーフスペースに寄る事でセカンドボールの回収エリアも当然広がり、守備面での効果も期待できる。

高い位置での役割と効果

では高い位置ではどういった動きを見せていたか。この試合、彼がWGフォーデンの外を回るオーバーラップを見せる機会はほとんどなかった。その代わり外に開いたフォーデンの内側を抜けるインナーラップを効果的に活用した。インナーラップは守備側からすると受け渡しが難しい。また、WGが下がって対応すると、カウンターの緒が消されてしまう。

ジンチェンコがインナーラップするにあたり、IHのデブルイネがハーフスペースを塞いでしまうと効果は半減する。そのため彼は内側に絞ってマークを引きつけることで、ジンチェンコのインナーラップをより効果的なものとした。
デブルイネがハーフスペースに位置する場合ジンチェンコは別ルートから非常に効果的な攻撃参加を見せた。それがデブルイネの手前に斜めに入る動きだ。エリアとしてはハーフスペースであり、敵のWGと IHの間のスペースである。

基本的にジンチェンコからフォーデン→デブルイネと繋いだ落としを受ける形となる。フォーデンを使うことでWGの背後から前進する形となり、守備側からすると非常にマークにつきにくい動きとなる。WGの守備範囲から抜け、IHはデブルイネをみる必要があり、アンカーが出るとDFラインのプロテクトが弱くなるという悩ましい動きだ。実際にこの動きで決定機を演出してみせた。
バルベルデがサイドに入り5バックのような形となったレアル・マドリードに対しては、基本ポジション自体をハーフスペース寄りに移して攻撃の組み立てに関与した。4点目のシーンはまさしくハーフスペースに位置する彼から生まれたものであった。

※1つ目のシーン

よりゴールに近い位置で攻撃に関与することで得点に直結する仕事を果たした。大外であればクロス以外の選択肢がなくなってしまう。

おわりに

SBは味方の位置、特にIHとWGの位置を意識してポジションを取る必要がある。それに対して隣り合うCBやアンカーはリスク管理とサポートのために適切な位置を取る必要がある。SBのジンチェンコが輝きを放つことができたのはフォーデンやデブルイネ、アンカーのロドリ、CBのラポルトのサポートがあったことを忘れてはならない。
実際に4点目のシーンは、ボールを失ったら危険な状態になっていてもおかしくなかった。前に残ったモドリッチやベンゼマのケアを後方メンバーはぬかりなく行っていた。
ジンチェンコ自身の判断力は素晴らしく、上記にあげた様々な効果的な動きを繰り出してみせた。この試合のベストプレイヤーの一人であったことは間違いない。

昨今重要度の高まっているSBというポジションであるが、選手自身のクオリティと同時に、マンチェスター・シティのようにSBが活きやすいようチームとして整備されている必要もある。それは仕組みだけでなく、上記でいう「SBが絞ったらパスをつける」というような個々人の意識の上でもだ。こういった部分が欠けてしまったら、SBの輝きは損なわれてしまうだろう。

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とんとんさん、ありがとうございました!

いかがでしたでしょうか。

ジンチェンコ選手の活躍には他のクラブも注目しているとのことで、昨今では移籍の噂も耳にします。8月に開幕を控えている新シーズンでの活躍も楽しみですね!

こちらのnoteでは、今後もとんとんさんにご協力いただきながら、新シーズンを控えている欧州各国リーグの戦術分析をお送りしていく予定です。よろしければぜひフォローをお願いいたします。

また、とんとんさんがご自身で運営されているブログもぜひご覧ください。

それではまた!


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