
「鳥の眼」で観るW杯2022〜【フランスvsモロッコ】押さえるべき戦術的ポイント〜
こんにんちは!
FL-UXマーケティングチームです。
メッシ率いるアルゼンチン代表の優勝で幕を閉じたカタールW杯。どのチームもとても良い戦いを見せてくれましたね。
さて、とんとんさんにご協力いただきお送りしている「鳥の眼」で観るW杯2022シリーズもいよいよ大詰めです。決勝のアルゼンチンvsフランス戦にも迫りたいところですが、本日は、今回の大会でダークホース的な活躍で私たちに驚きと感動を与えてくれたモロッコ代表とフランス代表の準決勝を振り返ってみたいと思います。
それでは早速、とんとんさん、お願いいたします。
=======================================
安定した戦いを見せてきた盤石のフランスに対し、大会屈指のダークホースとして並居る強豪を撃破してきたモロッコがチャレンジする構図となったW杯準決勝フランスvsモロッコ。
この試合ではモロッコの刃が惜しくも届かず、フランスが決勝進出を果たすこととなった。ハイレベルなこの試合において、見逃すことのできない戦術的ポイントが多数存在する。
フランスはいかに得点をあげたのか?なぜモロッコの堅守を打ち破ることができたのか?
モロッコはなぜ前半戦で攻撃が機能しなかったのか?後半で攻勢に出られたのはなぜか?
これらについて紐解いていく。
■スタメン

■守備システムの変更と先制点
この試合のモロッコはこれまでの4-1-4-1から5-4-1へとシステムを変更して試合に臨んだ。しかし、この変更がいきなり仇となった。

モロッコの5-4-1に対してフランスは4-2-4気味の配置を組んだ。ペップ・グアルディオラがチェルシーのように5-4-1に類似のシステム「5-2-3」と相対する際によく用いる配置だ。
クンデとテオ・エルナンデスの両SBがモロッコSHを外に引き付け、チュアメニとフォファナの両CHがモロッコの2CHをひきつける。右SHのデンベレはモロッコの左WBをひきつけた。
その中で前線に位置したスピードあるグリーズマンが左HVを振り切ると、ジルーとムバッペがゴール前になだれ込む。DFライン全員でこの2人に対応するなかで、オーバーラップした左SBテオ・エルナンデスが完全にフリーの状態でゴールを奪って見せた。
■フランスの守備
テオ・エルナンデスのゴールが今大会2つ目の失点となったモロッコは攻撃に転じざるを得なくなった。
テクニカルな選手が揃っているモロッコは攻撃においても高いクオリティを持つ。ただし、前半はフランスの守備が完全に勝る形となった。
フランスにとってのウィークポイントは守備に戻らないムバッペの背後、テオ・エルナンデスとの間のスペースだ。ここを使いたいモロッコであるがジルーとグリーズマンの働きにより悉くパスを引っかけることとなった。
2人は「アムラバト封じ」のタスクを担った。パスの中継点となるアムラバトを封じることで、右サイドへの展開を抑え込んだのだ。ムバッペは守備時、右CBとWBの中間に位置をとるため、右サイドに安易に長めのパスを出せばカットされて単騎でカウンターを発動されるリスクがある。ムバッペの背後にボールが入ってもフォファナのスライドとディレイでモロッコの攻撃スピードはそぎ落とされる。右の攻撃が使えないとなると、ハキミやツィエフといった屈指のタレントが消されてしまう。
右サイドを諦めてフランスの右サイドから攻める場合はチュアメニの牙城を崩す必要があるうえにグリーズマンのプレスバックが利いてくる。そんなジレンマの中、モロッコはなかなか攻撃を完結できない状況が続いた。
■カウンターに活路を
モロッコは、カウンターに活路を見出そうと試みた。モロッコは1人1人が走れるテクニシャンタイプだ。それゆえに、カウンターでも前線まで持ち込む力を備えている。
モロッコのカウンターは奪った瞬間に小さなパスを入れてフランスのプレスを躱したのち前進する。ボールを身体の真下に近い位置に置くため、瞬時にボールを捌くことができるのだ。
ただし、これもフランスの守備に勝るには至らなかった。グリーズマンの迅速なプレスに加え、チュアメニのボール奪取力、CB陣のカバーエリアの広さによりこれすらも完封された。
■圧倒的なグリーズマンのパフォーマンス
グリーズマンはこの試合で圧倒的なパフォーマンスを発揮した。守備の面においてはジルーと連携してアムラバトを消し、守備への切り替えでは瞬時にボールホルダーにアプローチ。ムバッペ背後を埋めるために2CHが左にスライドした場合は、デンベレとチュアメニの間に入り危険なスペースを埋めてみせた。
攻撃においては主に中央に位置し、ジルーと共に中央の突破を図った。途中から4-1-4-1へと変更したモロッコのアンカーと2IHの間のスペースに入り込みリンクの役割を担ったかと思えば、そのままチャンネルへと飛び出し、マークを受けない状態を作り出す等、動と静のバランスが取れた抜群のポジショニングで攻撃にリズムをもたらした。
■モロッコの反撃
後半、モロッコが猛攻を仕掛けた。フランスはブロックの位置を前半よりも低く変更。守りを固めた。対するモロッコは左に位置していたIHウナヒを右に移動。モロッコの攻勢はこの2つが要因となった。

前半ジルーとグリーズマンに消されたアムラバトであったが、フランスが引いたことでマークに遭う頻度が減った。加えてボールを受けに降りる傾向の強いウナヒを右に配置することで、フランスのウィークポイントであるムバッペ裏への入り口が出来上がることとなった。
ツィエフ、ハキミ、ウナヒがポジションを入れ替えつつハーフスペースの高低、大外、SB裏に侵入していくことで、一点突破的にフランスの守備陣を穿っていった。
中央ではCFのエンネシリがファーに、左のブファルがニアにクロスする入り方をみせるためブファルがそのまま右サイドに流れてさらなる1点突破を目指していった。
それでもフランスがコナテとヴァランを中心にギリギリではじき返し続けると、最後にモロッコの息の根を止めるチャンスを迎えることとなった。
■フランスの追加点
フランスの追加点は、モロッコのゴールキックからであった。
モロッコに限った話ではないが、スローインやゴールキック等インプレーへの切り替えにおいては陣形が崩れやすい傾向がある。モロッコはポルトガル戦においてもこの局面で危険な状態に陥るシーンが見られたが、この試合では命取りとなった。
ゴールキックからセカンドボールを落ち着かせることができず、テュラムとムバッペの速攻を浴びると、最後はコロ・ムアニに押し込まれた。
テュラム、コロ・ムアニという最後にフランス代表に選出された2人が得点に関与するという層の厚さをも見せつけたフランスが堂々の決勝進出を果たすこととなった。
=======================================
とんとんさん、ありがとうございました!
とんとんさんによるカタールW杯関連の記事はこちらのマガジンでお読みいただけます。他にも、海外サッカーに関する記事を60以上掲載しておりますので、ぜひご覧ください!
また、とんとんさんご自身が運営されているブログ、Twitterもぜひチェックしてみてくださいね。
それではまた!
弊社RUN.EDGEが開発・販売しているスポーツ映像分析アプリFL-UX(フラックス)の詳細は下記のリンクからご覧いただけます。
スマホのカメラを使ったライブ配信、映像の編集、共有、チャットが、一つのアプリで全てできます。
欧州サッカークラブをはじめとするプロチームが使う映像分析を、あなたのチームでもぜひ取り入れてみませんか。
詳細は下記のリンクからご覧いただけます。