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ナーゲルスマンの新たな船出。新生バイエルン・ミュンヘン戦術分析〜後編〜

ナーゲルスマンの新たな船出。新生バイエルン・ミュンヘン戦術分析〜後編〜

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こんにちは!

前編に引き続き、とんとんさんにご寄稿いただいた新生バイエルン・ミュンヘンの戦術分析の記事を公開します!

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ドルトムント戦
■ドルトムントの4-3-1-2プレッシング戦術
 ドルトムントの用いる4-3-1-2はプレッシングに向いたシステムとなっており、マルコ・ローゼがボルシアMG時代も採用していたものだ。

画像1

 2トップとトップ下の3枚で2CBと2CHのセンターラインを抑え、SBにボールを誘導するタイミングでIHがCHを遮断しつつ寄せに出る。この時SBに時間的猶予を与えて配球させないよう、IHはボールの移動中にSBに近づいておく必要がある。最低でもサイドチェンジを阻止するように寄せることで選択肢を限定する。アンカー脇に降りる選手に対してはアンカーとCBの飛び出しで対応することで楔のパスカットを狙っていく。
 この練度の高いプレッシングに対し、バイエルンは非常に多くの時間を効果的な対策を見いだせないまま過ごすこととなった。

2点目

 瞬間的にこのプレッシングを回避することで生まれたのが2つ目のゴールだ。ビルドアップの要となるキミッヒがポジションを左後方に落としたのだ。これによりデイビスがポジションをあげることが可能となり、プレスの基準をずらすことでサイドからワンツーで崩して得点を奪って見せた。これまでデイビスにプレスをかけていたIHがキミッヒにプレスをかける形となり、デイビス経由でIHのプレスラインを掻い潜り、アンカー脇のグナブリーへと繋ぐことができたのだ。
 スタニシッチが台頭してきたとはいえ、アラバがチームを去ったことでビルドアップにおけるキミッヒへの依存度は非常に高いと言わざるを得ないだろう。
 こうしたポジションチェンジを用いたビルドアップもフリック体制時に比べると少なく、まだまだ時間のかかる部分であるといえるだろう。

■バイエルンのプレッシング、ドルトムントの前進
 ドルトムントのプレッシングの前に思うように前進できないバイエルンであったが、同様にバイエルンのプレッシングもまたドルトムントを苦しめた。しかし、相手のプレッシングに上手く対応できていたのはドルトムントであったと言えるだろう。
 まずバイエルンのプレッシングであるが、冒頭に述べた通りSHがCBにプレッシングをかけるスタイルでこの試合も臨んだ。しかしここで一点問題が生じる。ドルトムントがロブパスを駆使して攻撃を展開したのだ。

ドル戦プレス1

 多くの選手が前進してボール奪取を試みるバイエルンに対してドルトムントは幅こそ取らないもののその分中央に人数をかけやすい4-3-1-2のシステムとなっている。バイエルンの2CHはトランジションの遅いゴレツカとキミッヒが起用されており、自陣に引き付けてロブパスを送り込むドルトムントの攻撃に対してボールを回収できずに手を焼くこととなった。

ドル戦プレス2

 これに対してバイエルンはSHのグナブリーがCBにプレスをかけることを断念し、前がかりにならずに中央の人数を担保しつつハーフスペースでベリンガムを抑える形を取った。バイエルンの2トップが2CBとアンカーを見る形だ。これによりシステムの嚙み合わせ上、右SBのパスラックがフリーになる状況が生まれた。バイエルンはここをプレッシングのスイッチに定めた。パスラックにボールが入る瞬間にグナブリーが一気に距離を詰め、周囲の選手とマークの受渡しを行うことで奪還を目指した。スイッチが定まればプレスを嵌めやすくなる。実際この位置でボールを奪取しショートカウンターに持ち込むシーンが何度か見られた。

ドル戦プレス3

 このバイエルンのプレッシングに対してドルトムントは引き続きロブパスを中心とした攻撃を展開した。キーマンとなったのはダイヤモンド型の中盤4人だ。まずバイエルン2トップに対してCBとともに3vs2の数的優位を生み出すダフードが魅せる。ターンの切れ味が鋭く小回りの利く彼がプレスをいなし、CBにフリーでボールを持たせることに成功。パスラックサイドを回避するような配球が多くなった。次にIHの二人だ。この2人の主な役割は敵を自陣に誘き出すこと、そしてロブパスを前線が収めて前進に成功したら前を向いた状態でボールに関与することだ。レイナはゴレツカを、ベリンガムはデイビスをそれぞれ引き付けることでDFライン周辺のプロテクトを薄弱にした。彼等の働きで(また、スタニシッチのポジショニングによっては)最終ラインが2vs2という状況を生み出すことに成功した。DFライン手前のスペースでスピードあるムココやフィジカルの強いハーランドがボールを収め、ロイスが補佐に入り、時間差でベリンガムとレイナが前進する、理想的な形を実現するに至った。

 ゴレツカもデイビスもプレスバックが遅いため、2トップとロイスでロブパスを収めるとIHの2人がゴレツカとデイビスを置き去りにし、比較的フリーの状態で攻撃に関与することができる。これらは非常に有効な手段となった。

■守備ブロックの課題
 2点差をつけ、上述のようにプレッシングに粗の出た後半のバイエルンはプレス開始位置を下げて守備ブロックを組むようになった。ただしこの部分にも課題が見られた。
 最大の問題点はCHの脇のスペースだ。4-4-2でブロックを組むバイエルンはSHの守備基準が定まらず、SH-SB-CHの間の空間が空く傾向が強い。このスペースに入り込むベリンガム等を抑えることができなかった。

画像6

 ドルトムントのゴールはまさにそこを突くものとなった。デイビスがCH脇のベリンガムを見ることで空いた大外のスペースに対してグナブリーの死角からSBのパスラックがアタック。デイビスが遅れて対応に向かうと、マークしていたベリンガムがフリーとなり、カバーが間に合わずに最終的にロイスがノイアーの守るゴールを射抜いてみせた。
 バイエルンはDF同士のカバーリングが上手くいっていないため、このCH脇のスペースが空いてDFが引きずり出されてしまうと瓦解するリスクが飛躍的に高まるのだ。

ケルン戦

https://twitter.com/Bundesliga_EN/status/1429499860525277187?s=20

■3バックでのビルドアップ
 ケルンはドルトムントと同様4-3-1-2のシステムを採用した。対するバイエルンは3バックを採用、3-2-5でボールの前進を図った。

3バック

 3バックを採用することにより、システム的なマッチアップにずれが生じた。後方で3バックvs2トップの数的優位を生み出すことに成功し、この段階でプレスにはまることを免れることができる。HVがフリーで前進できる状況だ。上図のようにHVのズーレからWGのデイビスにボールが渡るとケルンのIHはアンカー脇をケアするように移動するようになる。なぜならデイビスにはこの時点で4つほどの選択肢が生まれており、IHにとってはHV、WG、CHの誰にプレスをかけるのかという迷いが生まれる。またSBに対して2vs1を作られる状況であり、かつデイビスのポジショニングの時点で既にIHのプレスラインを越えられているため、後追いで最悪追いつけない状態になるからだ。
 加えてデイビスには中央に向けたドリブルという選択肢もあるため、IHは最も危険なアンカー脇エリアを抑えに行く。

 しかしこれはプレスではめ込むのに適した動きとは言えない。アンカー脇をケアする結果としてCHのキミッヒへのマークが薄くなり、彼に時間的猶予を与えることに成功する。この3バックの採用による最大の恩恵はキミッヒに自由を与えられたことだろう。中央のキミッヒが自由になることで3バック間のパスルートも増え、中央を経由して逆サイドに展開することも可能となり、プレス回避に成功した。ボール奪取直後も早々にワイドのWGにボールを預けることで敵の守備陣形のファーストラインを越えることが可能となり、IHを押し込むことでプレスを回避することに成功した。
 右サイドではミュラーがサイドに流れるように降りることでフリースペースを活用する姿も見られた。
 この試合で右HVで先発した19歳のニアンズも的確な持ち出しと配球を駆使してビルドアップ面で貢献したものの前半のうちに交代となった。
代わって入ったスタニシッチは、より中央のキミッヒの負荷を軽減するのに貢献した。3バックの採用でキミッヒに自由が与えられたものの、相方のゴレツカが積極的にビルドアップに関わるタイプではないため負荷自体は高いままであった。しかし、スタニシッチが中央に絞ることでズーレやウパメカノからの引き出しを増やし、ケルンのプレスをより容易くいなすことを可能とした。

スタニシッチ

 2点目のゴールはまさにスタニシッチ起用の利点から生まれたものとなった。中央に絞ったスタニシッチがCBからボールを引き出すことでキミッヒのマークについていたケルンのトップ下を引き付けた。すかさずキミッヒに落とすことでキミッヒが中央でフリーの状態で前を向くことを可能とした。空いたスペースに入る選手へとボールを送り込んで前進し、美しいパス回しでのゴールが生まれた。

■クロスからの失点
 バイエルンはこの試合を3-2でものにしたが、失点は両方共クロスから生まれた。CHの脇のスペースに入ったボールにSBが対応し、その背後に抜け出されてのクロスボールである。やはりこのCH脇エリアの守り方がネックとなっている。

画像9

 クロスボールに対しては、ゴール前に入るCBがファー側の1枚のみとなってしまっている状態だ。左右両側から失点を喫しているが、バイエルンの右サイドからの失点シーンでのウパメカノはSB裏のカバーに入りゴール前を空け、左の失点はズーレのカバーが中途半端で遅く、後から入ってくる選手を警戒したためSB裏にもゴール前にも入ることができずに失点を許してしまった。CHの脇をやられてからどこを最終局面とするのか、どのエリアを捨てるのか、どこをカバーするのかといった共通理解と連携が必要であると感じさせるズーレの判断であった。

■おわりに
https://twitter.com/Bundesliga_EN/status/1436765727961255937?s=20

https://twitter.com/Bundesliga_EN/status/1431689590524596226?s=20

 ナーゲルスマンが新指揮官として就任したバイエルン。キミッヒに依存したビルドアップ、CH脇の守備、アラバの抜けた穴、DF同士の連携と明確な課題が出てきている中で、スタニシッチやニアンズの台頭、迫力あるプレッシング、3バックと4バックの併用、鋭さ満点の攻撃と既にプラスの側面も現れている。引き出し豊富な若き指揮官の考えがチームに浸透していけばさらに柔軟で見ごたえのあるサッカーへと進化していくはずだ。

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いかがでしたでしょうか。

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