
【鳥の眼で観る欧州CL】マンチェスター・シティはいかにライプツィヒの4-2-2-2を打ち破ったのか?
こんばんは!
FL-UX マーケティングチームです。
3月も最終週になりました。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
明日28日の日本代表のvsコロンビア戦も気になりますね・・・!
さて、本日は、とんとんさんによる「鳥の眼」で観る欧州CL特集をお送りしたいと思います。今回着目するのは、マンチェスター・シティの8強進出という結果で決着したライプツィヒvsマンチェスター戦のレビューです。
それでは早速、お楽しみください!
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マンチェスター・シティvsRBライプツィヒの一戦は、2戦合計8-1と衝撃的なスコアで幕を閉じた。なぜこのような衝撃的なスコアとなったのか?シティはいかにしてライプツィヒを攻略したのか?ライプツィヒに抗う術はなかったのか?考察していく。
Five from @ErlingHaaland along with strikes from @KevinDeBruyne and @IlkayGuendogan secured qualification in the #UCL! 💪
— Manchester City (@ManCity) March 16, 2023
Watch all the action from victory over RB Leipzig 👇 pic.twitter.com/9o1m3szvfu
■ライプツィヒにとって最悪の相性
ライプツィヒの用いる4-2-2-2は彼らの専売特許であり、ショートカウンターへの移行をスムーズに行うという面でも機能性の高いものとなっている。
ただしこの守備システムにとって、明らかに相性の悪いシステムが存在する。3-2-5だ。4-2-2-2に対する3-2-5は様々なエリアで数的優位を作り出すことができ、ギャップを利用した攻撃を行いやすい。
そして、この3-2-5を駆使して爆発的な攻撃力を示しているのがマンチェスター・シティであり、彼らにとって4-2-2-2崩しは得意分野なのである。
ライプツィヒの守備システムはマンチェスター・シティの攻撃に対して相性が悪い。選手の質もシティに及ばないライプツィヒは、配置的な不利を運動量でカバーする他なかったが、それもシティには及ばなかった。シーズン序盤のチームの不調を救ったマルコ・ローゼであったが、採用経験のある3バックはオプションと呼べる質へと昇華することができず、効果的な修正や対策を施すことができなかった。
では、実際にシティがどのようにライプツィヒを攻略していったのか。戦術的ポイントを見ていく。
■プレッシング戦術
シティがライプツィヒを攻略する上でポイントの一つとなったのがプレッシングだ。1戦目においては先制点のきっかけとなり、2戦目ではライプツィヒから常に高い位置でボールを回収するのに成功した。

シティのプレスは基本的に4-2-2-2で行われ、右WGのベルナウド・シウバが起点となった。2トップが敵2CHを抑える中で、シウバは左SBラウムへのパスコースを切りつつビルドアップの起点となる左CBグヴァルディオルへのプレスを実行した。
足元の技術レベルの高いグヴァルティオルに対し、シウバはこの難しいタスクを完璧にこなしてみせた。グヴァルティオルが左脚でボールを止め、身体を外側に開いている段階ではラウムへのパスコースを切る方向に前進し、グヴァルティオルが身体を外側ではなく前方に向けてボールタッチした瞬間にシウバの進行方向はパスコースからグヴァルティオルに変更される。
グヴァルティオルの身体の向きを考慮してのクレバーなシウバの守備はライプツィヒのビルドアップを破壊するのに十分すぎるクオリティであった。グヴァルティオルが右CBにパスを出せば、左WGのグリーリッシュも同じようにSBを切りつつプレスをかけてロングボールを蹴らせることに成功した。楔のパスを出せば他のメンバーによって回収していく。ライプツィヒは元々ビルドアップに課題があり、変化をつけることができないため修正策も出てこなかった。
■「4-2-2-2崩し」の概要
シウバを中心としたプレッシングでボールを回収したシティは、4-2-2-2攻略に関しても圧倒的なクオリティを見せつけた。

シティは攻撃時、右SBのストーンズを中盤の位置に絞らせた3-2-5でビルドアップを行った。このシステムのマッチアップにおいてまずポイントとなるのが、シティのHVに対してRBLの誰がアプローチをかけるのかという点だ。この試合では主にSHがプレスをかけることとなった。そこでシティが利用したのが敵SHの背後のスペースだ。このスペースにIHのギュンドアンやデブルイネが流れることで、フリーでRBLのプレスを掻い潜った状態を容易に作り出すことができた。
SBがWGグリーリッシュやシウバに釘付けにされており出てくることができないため、サイドに流れるIHに対してはCHが対応することとなった。そうなると次はハーフスペースにギャップができあがる。ハーフスペースではCHとCFハーランドがパスコースを提供する。
つまりHVからのパスルートとしてはHV→IH→CH(CF)というルートが効果的なものとなり、サイドを警戒すればHV→CHというパスコースが生まれ、これもまたRBLの守備の1stラインを抜けることのできるルートとなった。
中央でパスコースを提供するため、ハーランドは降りてボールを呼び込むシーンも多かった。彼はポストプレーに関しては取り立てて優れているわけではないが、フィジカルの強さとシンプルなバックパスでパスコース提供役となった。また仮に味方3バックへのプレッシャーが弱い場合、ハーランドは低い位置から助走をつけて敵DFライン背後に抜け出す動きを見せた。圧倒的なフィジカルとスピードを誇る彼が助走をつけて背後に飛び出してくればRBLにとってはひとたまりもない。ハーランドはパサーの状態を見極めてスプリントすることで、シティのロングボール戦術に破壊力をもたらした。
1stラインを越えた段階で敵は中央を密にしてコンパクトな状態を作り出そうとする。WGがワイドのやや低めの位置でボールを呼び込みチャンネルを広げてIHを走らせる等、WGが主体となりフィニッシュ局面を作り上げた。WGは突破力に注目される傾向があるが、シティのWGの優れている点は選択肢の豊富さと攻撃の作り方であるのだ。
■運ぶドリブルはどこへ運ぶ?
前を向いた状態で敵の守備の1stラインを越えることがビルドアップにおける目標となるがこれを達するためにシティはどのような動きを見せているのか?

目立つのが3バックのボールの運び方だ。特にアケに見られる動きであるが、彼は前でなく中央に向かってドリブルをする。CHとのリンクを重視しているからだ。CHにボールが入れば攻撃の選択肢が大幅に増すことをアケは分かっているのだろう。
ロドリとの距離が近くなることで簡単にボールを入れることが可能となる。ロドリは敵とボールの間に身体を挟み込むターンの技術が高く、敵の手の届かない影に入ることができる。
ではロドリへのパスコースがふさがれた場合はどうか。その場合、敵CFやSHが絞ったということになる。つまり味方CBがフリーの状態になったということであり、サイドに流れるIHもフリーの状態であるということだ。アケはすかさず空いている選手にボールをはたく。単に前進するのとCHに向かって前進するのとでは目的の明確化、CHとのリンクという点で相違が見られるのだ。
■W杯後のCHの変化
W杯期間が明けたのち、CHの動き方に変化が見られた。敵の1stラインの手前で受ける等、1stラインを出入りする機会が増えている。
CHが1stライン手前に引くことで数的優位を確保でき、敵を前方に釣り出すことができる。後ろの枚数が担保されれば、目の前にスペースができた選手が前進することができ、DF陣の攻撃参加の縛りも弱まる。先述のようなDFの運ぶドリブルも行いやすく、1stライン手前に降りたロドリもそれを多用している。

反対サイドのHV(CB)とCHのパスコースが確保できると、攻撃ルートは大幅に増える。そして、CHの片方が1stラインの手前に位置するとそれが実現しやすくなる。
例を挙げる。ロドリが1stライン手前に降りて呼び込み、先述のドライブとバックパスを駆使することで敵を引きつけ、逆サイドにギャップができあがる。ここでストーンズが受けずに絞った状態でいることでCB→IHへの楔のコースを空け前進させることができる。このようにCHが動的になることで本来の形にこだわらずに守備陣形を穿つことが可能となっている。
ただし後方に人数をかけるビルドアップは、前方での攻撃に人数が割けないという事態に陥りやすい。この部分は今後の大きなテーマとなりそうだ。
■おわりに
ライプツィヒの4-2-2-2に対して、シティは完璧な振る舞いで圧倒して見せた。懸念であったショボスライをキッカーとするセットプレーに関しては、セットプレーの機会さえ与えず、逆にセットプレーで大量得点を果たした。
逆に1stレグで1得点にとどまったのはなぜか?
1stレグはライプツィヒのプレス開始位置が2ndレグよりも低く設定されていた。ブロックがコンパクトであるため守備ラインが抜かれてもカバーが利きやすく、戻ってリカバーもできた。質と配置を運動量でカバーすることができたのだ。
また、CHを務めたロドリとシウバの関係性が薄かった。互いにサイドの分担がされたような関係性であるうえ、シウバが動きすぎるために2人の関係が弱まり、逆に攻撃ルートが制限されてしまったのだ。
勝ち上がったシティの次の対戦相手はバイエルン・ミュンヘンだ。強力なカウンターを持つチームに対してどのような試合が展開されるか、最注目のカードに目が離せない。
※より詳細なマンチェスター・シティの分析については追って公開していきます。
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とんとんさん、ありがとうございました!
マンチェスター・シティの詳細な分析も、ぜひお楽しみに!
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