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【鳥の眼で観る欧州CL】新たな一面を見せた最高のカード。バイエルンとPSGの基本戦術と変化とは?

こんばんは!
FL-UX マーケティングチームです。

連日WBCでの日本代表チームの戦いぶりが話題になっていますが、皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

さて、WBCに負けずこちらも盛り上げていきたい欧州CL。本日は先日のバイエルンvsPSGのマッチレビューをお送りします。バイエルンの8強進出という結果で決着したこちらの好カード。とんとんさんはどのように分析したのでしょうか。

それでは早速、お楽しみください!

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パリ・サンジェルマン vsバイエルン・ミュンヘンという豪華カードが1回戦にして早くも実現したチャンピオンズリーグ決勝トーナメント。2戦合計の結果としてはバイエルンの完勝で終わったカードであったが、年明け以降数試合不調に陥っていたバイエルンの変化、そしてPSGの強みと新たな一面の見られた充実した対戦となった。PSGが8強に進出してもおかしくなかったこの試合における両チームの戦術にフォーカスする。

■スタメン

■PSG守備戦術/バイエルン攻撃戦術

バイエルンの攻撃は年明け以降改善がみられる。システム的には左SBのデイビスが高い位置を取り、ゴレツカもポジションをあげることで成される3-1-2-4となる。
3バックとなることで後方メンバーの距離感が改善されたうえに、身体の向きとサポートのポジショニングの良いスタニシッチの起用でキミッヒの補佐役をつけることに成功した。

彼は3バックの右、もしくはキミッヒの脇に前進してパスコースを提供することができる。キミッヒの脇に前進する場合、自身に敵IHの注意をひきつけることで、キミッヒからのスムーズな楔の打ち込みに一役買った。
前線に枚数をかけることでクロスボールの脅威が増し、相手が引けばムシアラがハーフスペースを下ってボールを受け、ドリブルを開始しやすくなる。バイエルンのアタッキングサードでの攻撃は主にこの2つ、クロスとムシアラのドリブルが起点となった。

このような変化を見せるバイエルンの攻撃以上に、この対戦で機能したのがPSGのプレッシング戦術だ。メッシとムバッペを抱えながらもプレッシングを機能させたのはガルティエの手腕であるといえる。

メッシは基本的にキミッヒへのパスコースか左HVデリフトのうちで、自身が居るエリアの近いところにつく。主にはデリフトへの牽制役となる。それに応じてムバッペはスタニシッチやウパメカノへのパスコースを限定するようなプレッシングを敢行し、右IHヴィチーニャがデリフトか右ハーフスペースを見る形をとる。ヴェラッティが前進してキミッヒを抑えこみ、左サイドではマルキーニョスが中盤やサイドへと前進して空いたスペースのケアを行った。
ムバッペはパスコース制限のプレッシングは効果的であり、メッシの周囲の選手は柔軟にプレッシングに変化をつけることでバイエルンのビルドアップを困らせるには十分な守備戦術を実現した。特にメッシの位置取りに応じて変化を加える必要があったのはヴィチーニャであったが、見事にタスクを全うしたといえるだろう。神がかり的なデリフトの守備に阻まれたものの、ゾマーからのボールを奪取したプレッシングによるビッグチャンスをものにできていれば、違った結果になっていた可能性も高い。
メッシも決してただ歩いていたわけではない。移動距離やスピードこそないものの、デリフトやキミッヒへパスを出すのを躊躇ってしまうようなちょうど良い位置を埋めることが多く、周囲の補佐は必須だがプレッシングに確実に組み込まれており、バイエルンを苦しめることとなった。
プレスを躱された後のメッシとムバッペは帰陣こそしないものの、隙あらばやり直しのバックパスをカットできるような位置をとり、バイエルンに牽制を与えた。
ヴィチーニャ、ヴェラッティ、ファビアン・ルイスの負荷は相当高いものであったが、彼らの献身を促すとともに、ムバッペとメッシというスターを守備に組み込んで見せた点は、ガルティエの称えられるべき部分であったといえる。
このPSGのプレスにはまり、思うように前進できないバイエルンはCFチュポがロングボールのターゲットと楔の受け手として奮闘したもののセカンドボールの回収は仕込まれていないため効果的な攻撃は生まれにくかった。仮に前線メンバーが楔を受けたとしても、キミッヒがヴェラッティに消されえているためレイオフを受ける選手が不在となり、攻撃は尻すぼみとなった。
ただし後半に入るとPSGは間延びするケースが増えた。2トップと中盤の間にスペースが生まれるようになり、プレッシングからの得点の可能性はぐっと減ることとなった。

■バイエルン守備戦術/PSG攻撃戦術

こちらで紹介したとおり、バイエルンは破壊的な4-2-3-1プレッシングを有している。しかしPSGのプレス回避能力、1stレグ1-0という状況を考慮し、プレス開始位置をペナルティアークとセンターサークルの間へと下げて4-2-2-2ブロックを築いて守備が行われる時間帯が長く続いた。
PSGのゴールキック等、ビルドアップの起点が低い際にプレス開始位置が押し上げられる傾向が見られた。結局この試合の決勝点となったのはこのプレッシングでゴレツカとプレスバックするミュラーでヴェラッティからボールを奪取したことが最大要因となった。
コンパクトな陣形を維持し、カウンターの際はその距離感を活かしたデコイ役の割り当て、そしてムシアラのキープ力を活かすことで何度か決定機を演出した。バイエルンのオフサイドによるゴール取り消しは2~3度見られることとなった。
互いにショートカウンターでビッグチャンスを作り出した試合であった。そんな中で敵の守備を遅攻で掻い潜る連携を見せたのはどちらかといえばPSGの方であった。
普段より引き気味で4-2-2-2を形成するバイエルンに対し、PSGは5-3-2をベースにヴェラッティやルイスのポジション移動から連動した攻撃を見せた。

中盤3枚、ファビアン・ルイス、ヴェラッティ、ヴィチーニャは献身的な守備でプレッシング戦術の要を担ったが、元来テクニカルなプレイヤー達だ。皆狭いスペースでパスを回すことができる。
バイエルンの1列目よりも低い位置に降りるのはアンカーのヴェラッティだ。彼が降りるのに合わせるのがヴィチーニャとなる。ヴィチーニャはアンカーの位置まで降りることも多く、高い位置でも低い位置でもDFラインと2トップのリンク役を担った。プレッシングの際にヴェラッティが降りるのは先述の通りだが、ボール奪還後にヴェラッティの代わりにアンカー位置に入ることでチームの攻撃移行をスムーズにさせることもできる。
彼の果たす役割は非常に大きい。最も特徴的なプレーがリターンパスだ。狭いスペースにおいては自身の立ち位置を修正するだけではなく「敵を動かす」ことで剥がしてスペースを得る必要がある。ヴィチーニャはヴェラッティだけでなくメッシに合わせてリターンパスの交換ができるため、パスを受ける→敵を自身に引き付けると同時に動き直しをさせる→リターンパスを送るという一連の流れをメッシと同じリズムで繰り出すことができる。
メッシもトップ下のような位置で中盤へと降りてくるケースが多いため、メッシとDFをリンクさせる役割を担うヴィチーニャがこのクオリティを見せつけると、敵としては守るのが難しくなる。
こうしたプレーで敵を中盤にひきつけると、DFラインの背後や間にスペースが生まれてくる。そこを活かすのがスピードスター・ムバッペだ。スペースを得た彼は何度も抜け出しに成功した。テクニックとスピードを活かしたPSGの攻撃はバイエルンに脅威を与えることとなった。

■おわりに

バイエルンの守備は普段に比べておとなしいものであった。それでも、何度も(ショート)カウンターでチャンスを作り出す高いクオリティを見せた。逆にこのレベルで戦うには攻撃面での改善の余地が浮き彫りとなった。
PSGはメッシ・ムバッペを抱えながらも確実にプレッシング戦術に組み込む、遂行したガルティエの手腕と中盤の奮闘が光った。中央をベースとした細かなパスワークによる組み立ては最終的にムバッペのスピードをも活かすことができるものであり、結果が逆であってもおかしくないと感じさせるものであった。
リーグ内で見ると両チームともに圧倒的な戦力を誇る、CLにおいてのみみられる「拮抗した戦力」を持つチームとの対戦は、見応えと新たな戦術的一面を見せるものであった。

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