
【鳥の眼で観る欧州CL】シュミット・ベンフィカ4-2-2-2ワンポイント戦術分析
こんばんは!
RUN.EDGE株式会社 FL-UXマーケティングチームです。
あっという間に1月も最終日になってしまいましたが、2023年初の投稿です。
本年も弊社公式note、そしてスポーツ映像共有・プレー映像分析アプリFL-UX(フラックス)をよろしくお願いいたします!
さて、早速ではありますが、昨年ご好評をいただいたとんとんさんの「鳥の眼で観る欧州CL」シリーズを今年も行うことになりました!
今年も注目の試合、そしてチームの分析をお送りしていきますので、ぜひ試合とともにお楽しみください。
連載第1回目の今日は、2月16日にクルブ・ブルッヘとの対戦を控えるポルトガル・プリメイラリーガ所属のベンフィカの戦術分析です。
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■チームのスタイル
ベンフィカは監督ロジャー・シュミットの代名詞である4-2-2-2プレッシングを採用している。プレス開始位置を敵陣ペナルティエリア手前に設定し、前線からパスコースを限定するようにプレッシングをかけていく。
前線には技巧派が多く、ボールを奪うと幅を作ることをさほど意識せずに1点突破気味に攻撃を推し進めていく。SBが攻撃参加することでその破壊力が大きくなる。
𝗠𝗮𝘁𝗰𝗵𝗱𝗮𝘆 𝟱 𝗮𝗻𝗮𝗹𝘆𝘀𝗶𝘀 🧐
— UEFA Champions League (@ChampionsLeague) October 28, 2022
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■守備戦術

ベンフィカの守備施術は4-2-2-2でのプレッシングがメインとなる。2トップがアンカーを見つつCBにプレッシングをかけ、SBにボールが渡ったところでSHが強くプレッシングに出る。そしてCBへのバックパスと中央のCHへのパスを2トップが切る形ではめこんでいく。状況に応じてSBも前進をかけ、DFラインが大きくスライドをして穴が開かないよう埋めていく。

3バックでのビルドアップを採用するチームに対してもシステムは変更せずに4-2-2-2のままプレスをかける。ただし、3バックvs 2トップという数的不利となるため、無理なアプローチはかけない。プレスをかけるのは敵の「3バックの優位性が消えている時」だ。具体的な条件は、
①敵HVが早いタイミングでWBにパスを出した時
②CHが敵CHを捕まえることができる時
である。敵のなかば強引な縦パスを中央でからめとる、もしくはサイドに誘導して奪取するといういずれかの方法でボールを回収したいベンフィカにとって①の時はプレスをかけやすい。2トップの一角がHVにアプローチすれば、敵WBにSHが寄せることで数的不利の状態が解消される。数的優位の中央でなく外を使うという、相手の配球の選択ミスによる自滅と捉えることもできる。さらに②の条件を加えることで中央の逃げ道を塞いでいく。
3バックの数的優位を活かして2トップをはじめとした守備陣形を乱された場合は厳しい状況に陥るが、そうでないタイミングを見計らってプレスをかけていく。
守備陣形を乱される可能性がある=プレスが連動しそうにない状態の場合、2トップは敵CHを、SHはハーフスペースを埋めるように配置について陣形を立て直し、セットした状態でパスカットと同時にプレッシングのタイミングをうかがっていく。各選手がプレスとセットの判断に長けているのがベンフィカの強みであり、各選手のインテリジェンスとシュミットの指導力のたまものである。
後半に間延びする傾向のあるベンフィカであるが、上記のように2トップとSHがエリアに戻ると同時に各選手が中央をケアすることで、プレス頻度と開始位置を下げて穴を空けないように修正がなされる。ハード(システム)をは変えずにソフト(プレス開始位置をはじめとした戦い方)を変えて戦うのがベンフィカの特徴だ。
敵SBにボールが渡った段階で敵CHが切れていなければそこからプレスを回避されてしまう。そんな守備戦術においてキーとなるのは23歳ポルトガル人CHのフロレンティーノだ。運動量が豊富で守備範囲の広い彼は、的確な予測を駆使しDFライン手前のスペースのプロテクトと敵CHケアのための前進の両方をこなすことで、チームの守備戦術が破綻しないよう多大な貢献を見せている。
オタメンディとアントニオ・シルバの2CBはプレスのかかり具合とボールホルダーの挙動からパスの出し先を予測するのが上手く、DFライン背後へのボールに対して事前に動いてケアすることができる。
弱みとしては、
①3バックに対して受け身となった挙句にCHを抑えきれずにプレスが空転するリスクを抱える点
②スライドが多いDFラインを突く、逆SB周辺へのロングボール
となるだろう。②は得意のプレスにはめることもできないため、ベンフィカの強みを出しにくいという点においても有効な「ベンフィカ対策」となる。
■攻撃戦術

特徴的な前線の配置から見ていく。ベンフィカはワイドに選手を置かない。SHは基本的にハーフスペースに位置し、ボールを呼び込む際に状況に応じて広がって受ける。互いに近い距離感を維持して敵CBに対して手前と裏のスペースを同時に狙ってかく乱する連携での中央突破、もしくは敵が中央を固めた際に空いたサイドを使って攻撃を展開していく。
中央3レーンに最大4人が侵入する攻撃は、5バックの攻略において効果的なものとなっている。ジョアン・マリオ、ラファ・シルバ、ネレスといったプレイヤーは皆技巧派で小さなスペースでのプレーを苦にしないアジリティに長けたプレイヤーだ。アウルスネスもスタミナ豊富で連携を取りつつバランスも取ることができる。
トップに入る185cmゴンサロ・ラモスも裏への抜け出しを選択肢に持ち、攻撃のパターンを増やしている。
彼らが中央で仕事をする中、ワイドではSBが躍動する。右SBのバーはキックの精度が高く、低い位置での配球に加えDFライン背後に一撃必殺のパスを送り込むこともできる。左SBのグリマルドはポジショニングが非常に良い。特に敵味方の配置に応じてインナーラップとオーバーラップを使い分ける能力は頭抜けている。中央が固められた際にサイドでシンプルなワンツーパス等で崩すこともでる、敵陣攻略のキーマンの一人となる。ネガティブ・トランジションにおいては絞った位置で敵の速攻の芽を摘むポジション取りを見せる。
では、彼らにボールを送り届けるビルドアップはどうなっているか?
要となるのは2CHだ。4-2-2-2というポジションチェンジの生まれにくいシステムであるが、彼らの移動をトリガーにチームの攻撃に流動性が生まれていく。

例えばPSGのように、中央のプロテクトが薄い相手に対しては、2CHは中央に留まり、近い距離を維持して主導権を握る。この時に空いた逆サイドのスペースにSHが降りることでさらなる流動性をもたらしていく。
逆にユベントスのように中に厚みを持たせる場合、キックの精度が高くキープもできるエンツォ・フェルナンデスが左CBとSBの間に降りるプレーを見せる。
このCHの動きをトリガーに、SHが降りてSBがポジションを上げるといった具合に形を変え、敵の守備陣のギャップに付け込んでいく。
前線はアジリティに長けたプレイヤーが多く、後方は4バックにも3バックにも変えることのできる柔軟なチームであるといえる。ただしロングボールという選択肢がないため、局面の打開策が制限される傾向があることは否めない。
ハマった時は手が付けられない、ダークホースの筆頭だ。ただし、ハメるためにシステム変更は用いない。システムを変えずに戦い方を変えるシュミットのサッカーでどこまで勝ち進んでいけるか注目だ。
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とんとんさん、ありがとうございました!
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