【セミナーレポート】実践型プレー分析セミナー「現役プロアカデミーコーチと一緒に欧州トップクラブを解析!ゲーム分析の実践」〜前編〜

【セミナーレポート】実践型プレー分析セミナー「現役プロアカデミーコーチと一緒に欧州トップクラブを解析!ゲーム分析の実践」〜前編〜

こんにちは。

わたしたちのnoteでは、弊社が定期開催しているオンラインセミナーのレポートをいくつか配信しておりましたが、今回は、7月26日・8月9日に実施して大変ご好評いただいた実践型プレー分析セミナーのレポートをとんとんさんに執筆いただきました。

当セミナーでは、EURO 2020準決勝 スペインvsイタリア戦を題材とし、ジェフユナイテッド千葉・市原のアカデミーで現役で指導者を務める飯野大造さんを講師に迎え、プレーモデルの概念に基づいた実践的なプレー分析を行いました。

欧州トップクラブの試合を分析すると聞くと、レベルが高いのではないかと思われるかもしれませんが、各局面の状況を映像を使いながら丁寧に分析いただいたので、初心者にも大変わかりやすく、また高校や大学などのチームで分析者や指導者を務めている方にとっては実践で生かせる学びの多いセミナーとなりました。

詳しくは、下記でとんとんさんが詳しくまとめてくださっているので、ぜひチェックしてみてください!

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 2021.7.26、ジェフユナイテッド市原・千葉のアカデミーで指導者を務める飯野大造氏による、EURO2020準決勝スペインvsイタリアをベースとした実践型プレー分析セミナーが行われた。

★分析とプレーモデル★

 一言で分析と言っても、その手法は様々だ。例えばデータを集積して傾向をつかむ手法、マッチレビューのように試合中に起きる現象から変化を読み解く手法等だ。
 飯野氏によるゲーム分析において重要なのは、試合中に起きる現象からプレーモデルを読み解くことにある。

 そもそもプレーモデルとは何か。プレーモデルとは、ゲームにおけるプレーのコンセプトや原則を示すガイドラインのようなものである。プレーモデルを定めることにより選手達に共通理解が生まれ、プレーに優先順位がつけやすくなる。結果として判断に困ることが減り、迷いが無くなる。
 このプレーモデルも、細分化が必要となる。例えば、「守備時は積極的にプレッシングを仕掛ける」という指標を掲げたとする。この「守備時」にも様々なシチュエーションや局面が存在する。ボールを奪われた直後なのか、自陣まで運ばれた際はどうするのか。105×68mのピッチで90分間、攻守様々な局面やシチュエーションでプレーするため、それに合わせた細分化が必要となるのだ。

 では、プレーモデルをどのような単位、枠組みで細分化していくのか。
 これはチーム、監督によって考え方が多種多様であり、それぞれの特色が出る部分だ。細かすぎればチーム全体へ浸透させるのが難しく、抽象化が過ぎても具体性に欠けて伝わらない。


 飯野氏の考えるプレーモデルの細分化は非常にクリアにまとまっている。4局面、3ゾーン、13(+攻守のセットプレー)のシチュエーションで細分化した上で成り立っているのだ。
■4局面
・攻撃(組織的攻撃)
・守備(組織的守備)
・守備→攻撃
・攻撃→守備
■3ゾーン
・敵陣
・中盤
・自陣
■13のシチュエーション
【組織的攻撃】
・ビルドアップ
・前進
・ロングボールでの攻撃
・フィニッシュ
【組織的守備】
・組織的攻撃4項目を阻害する守備
【守備→攻撃】
・組織化の開始
・カウンター
【攻撃→守備】
・プレッシャー
・リトリート
・プレッシャー&リトリート
 各局面、ゾーン、シチュエーションごとにプレーモデルが策定される。これは選手にとって共通理解を持ち、迷いなくプレーするための拠り所となるものである。そして選手以外からすると、プレーモデルを鑑みての評価基準になるものでもある。例えば、ボールを奪った際にカウンターを狙うべき局面において相手の背後を狙って走ることができなければ、それは改善の余地のあるプレーと言える。

 このように評価基準にもなるプレーモデルの考え方は、プレーだけでなく分析の際にも非常に重要となる。この考え方が明確であれば、分析の質が安定し、ブレが小さくなる。分析のフレームワークが明確となるため、どの局面で、どのゾーンで、どのシチュエーションで、どのような意図を持ってプレーしているのかをひとつひとつ丁寧に整理しながら分析することが可能となるのだ。

★EURO2020準決勝 スペインvsイタリア★

 上述のプレーモデルの考え方を踏まえ、EURO2020準決勝スペインvsイタリアの前半戦分析が行われた。
この試合ではスペインがボールを保持して組織的攻撃を展開し、イタリアは敵陣における組織的守備の局面を多く過ごすこととなった。その一部を抜粋する。
【自陣】から【中盤】にかけての【ビルドアップ】・【前進】を4-3-3で行うスペインに対して、イタリアは同じく4-3-3のシステムで【阻害】しようと試みる。
ここでイタリアの敵陣での【ビルドアップ阻害】の特徴2点を抑えておく必要がある。
・前方へのパスコースを切ることでバックパスを強い、バックパスに合わせてラインを押し上げて中盤3枚が敵の中盤を捕まえる。
・インシーニェが左のハーフスペースを抑え、右CBにプレスをかけられる位置を保つ。

 イタリアはラインをあげるタイミングが全員ピタリと揃っている。前線でパスコースを切り、中盤の3枚でボールを絡めとる守備組織に優れたチームである。敵のビルドアップ陣形に合わせて守備位置を修正できるインテリジェンスに長けた選手が多いのが特徴だ。ラインを上げる際は多くの選手がゾーンではなくマンツーマンのような形ではめ込みに行く中、左WGのインシーニェは1人で2人を見ることができるような位置を取ることが多かった。
このイタリアのビルドアップ阻害手法を踏まえて、スペインには2つのビルドアップのポイントが存在した。ひとつは右サイドで浮くSBアスピリクエタの存在。そしてもうひとつが0トップとして中盤に降りてプレーするダニ・オルモだ。

ポイント


 中盤でマンツーマンの形ではめ込むイタリアに対して、ダニ・オルモが中盤に降りることで4vs3の数的優位を作り出して【前進】を図るのがスペインの狙いだ。基本的にボヌッチは他の試合でもアンカーのジョルジーニョの脇まではプレッシャーに出ていくことが多い。しかしダニ・オルモはターン、ワンタッチパスの技術が高く、加えて非常に低い位置(ブスケツの脇)まで降りるシーンも少なくない。ボヌッチが前進の判断に迷うのは当然だ。ついていかなければ中盤で数的優位を作られてしまい、ついていけば自身の守る最終ラインのゾーンががら空きとなる。そして、ボヌッチがついていかない場合に数的不利を抱え込むのは主にヴェラッティであった。コケとダニ・オルモのどちらを見るかという判断に迫られ、空いた選手から攻撃を展開されてしまう。技術的に優れた選手の多いという特徴を活かしたスペインの攻め筋である。
 インシーニェが敵CBに近い位置をとることで浮くアスピリクエタには基本的に左SBのエメルソンが前進して対応する形となる。アスピリクエタはイタリア守備陣のマークの付き方に迷いを与える存在となった。エメルソン、ヴェラッティ、インシーニェの誰がつくか。イタリアのリアクションに応じてフリーになった選手を使って攻撃を展開するのがスペインの【前進】のポイントとなった。
 ここで左SBエメルソンとCBボヌッチが前進してアスピリクエタとダニ・オルモを捕まえに行く場合、イタリアの最終ラインには2人しか残らなくなる。スペインは2WGがサイド高い位置で張っている状態だ。この時にスペインは【ロングボールでの攻撃】を試みるシーンがいくつか見られた。空中戦に強いイタリア守備陣に対してただ単にロングボールを蹴りこめば弾かれてしまう可能性が高い。しかし、最終ラインに2人しかいない広大なスペースが出来上がれば、サイドで張っているWGのオヤルサバルとフェラン・トーレスがスピード勝負に持ち込み、1本のパスでゴールに迫ることも可能となる。つまりスペインは、「敵最終ラインが2枚になったらロングボールを送り込む」という約束事が設けられていたと推測できる。

★おわりに★

 以上のようにビルドアップ、ロングボールでの攻撃の共通理解に優れていたスペインであったが、結果的にロングボールでの攻撃は実を結ばなかった。そして、ビルドアップに人数をかけて前進を図るも、【フィニッシュ】のシチュエーションで効果的なアクションを起こすことができず、前半戦は得点をあげることができなかった。

 以上はセミナーの一部となるが、これだけでもスペインのどの部分が機能し、どの部分が上手くいかなかったのかが明確になっている。プレーモデルの考え方がそれを可能にしているのだ。また、プレー分析ツールで該当シーンに局面・ゾーン・シチュエーション等のタグ付けを行うことで自身の分析の整理を行い、加えて解説のアノテーションを書き入れて画面を共有しプレゼンを行うことで受講者の理解を大きく促進させていた。

 分析の方法は人それぞれであるということは冒頭で述べた。しかし、プレーモデルの観点から自身の分析のフレームワークを明確にし、それに適したツールを用いて整理・プレゼンを行うという方法は、間違いなく分析におけるモデルケースのひとつと言えるだろう。
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いかがでしたでしょうか。

後半の記事はこちらからご覧ください。

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